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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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109◆ルークとからの相談と、それに関する王子との相談1

 王国関係からの依頼として魔法具の製作を引き受けた訳だが、至急で頼まれたのは蜘蛛糸で作る拘束用ネットだった。

作り方さえ教えれば師匠だけでなくそれなりの人数が作れるレシピなのだが、素材自体が無い上にMP量的に厳しいので通常業務に支障が出ない様に私が製品を直接納品する形での依頼となったらしい。


 蜘蛛網は良く使用するので迷宮に湧くたびに亜人部隊で確保して貰っている為、今回の依頼に使用する分は余裕であるはずだ。

サクサクと終わらせてしまう方向で行きますかね。




 ☆ ☆ ☆




 サッカーボール位の大きさの蜘蛛網で作った捕獲用魔法具が、夕食の時間まで作りまくったおかげで大量に完成していた。

隠れ家関係で調べていた人員や追加で派遣する人員の移動を何度か頼まれて行った以外は、よくそこまでエンドレスで作業できるな……と、レックスが呆れる位に作業を繰り返している。

まぁ、いつもの事だ!


 夕食はシェリーから是非一緒にとお願いされてしまっていたので、リーナ、ゲルボド、ミラと一緒にエルナリア邸(仮)に向かったのだが、その途中にルークから《通話》が来た。


『姉さん、いくつか相談があるんだけど、今大丈夫?』


『移動中だから特に話位なら問題無いけど、どんな話?』


と、話を聞く事になったのだが、向こうも若干面倒な事になっているようだ。


 王女が老魔術師じじいの持っていた魔法具で人間を捨てて魔人という状態になったらしいのだが、老魔術師じじいがその能力を奪って魔人化した。

そのお蔭で王女は暴走した状態から人間に戻る事が出来たのだが、同時に六歳からの記憶と《炎の欠片》という能力の源を失ったとの事。


 まぁ、そこら辺は暴走して命があっただけでも儲け物だと思って諦めて欲しい所なのだが、問題は一度魔人化した影響が多少ながら残ってしまったらしい。

魔人というのがどんな存在なのかは正確には判っていないのだが、取り敢えず問題となっているのは魔法物質を取り込んで直接変換出来る事にあるようだ。

簡単に言えば亜人タイプの魔物の様に、魔法物質を吸収して肉体強化や属性付与等が出来たりするとの事。


 そこで問題となっている点に関してなのだが、王女は魔法物質を吸収して変換する能力を持っているっぽいのだが、魔人であれば周囲から集められるのに対して、未完成な能力である為か食事によって直接摂取する必要があるとの事。

即ち、魔法物質を含んだ食物……魔物の肉等から得る必要がある。


 一緒に行動している老魔術師じじいの話では、現在は未熟なので直接摂取する必要があるが、魔法物質を使用する感覚を馴染ませれば、魔人程ではないが亜人程度には魔法物質を周囲から吸収する事も含めて使いこなせるようになるはずとの事。


 現在の選択肢として、魔物の肉を与えれば今までとは違うとはいえ能力が得られ、与えなければそのまま平穏に生きて行けるという訳だ。

これに関しては私達が勝手に決めていい事では無い為、王家の判断を仰ぎたいとの事。

まぁ、妥当な判断だろう。


 次に、ルークが現在居る領がどうやら相当酷い状況との事。

税が生きていけるギリギリで、チョットでも収穫が悪ければ一家全員が生き残るのは不可能な位に重く、それに付けこんだ人買い同然の行いも蔓延しているらしい。

一応はこの国に奴隷制度が無い為に奉公扱いらしいのだが、契約内容がどう考えても奴隷としかいえないものの様だ。


 私達が育ったエルナリア領は領主が人格者であった為に平穏に暮らす事が出来たが、ヴァルツァー五爵の事を考えれば、奴ほど酷くは無いが領民をないがしろにする奴らが居る事は想定の範囲内ではある。

王国側がこれを許容しているのかどうかでこちらの対応が変わってくるため、まずは要確認といった所か。

王女の件も含めて、明日にでも王子に聞くとしよう。


 方針は決めたので、


『OK。王女の件と、軽くそこの領主の件も聞いてみるわ』


と、ルークにはヴァルツァー五爵の件がほぼ終わった事を簡単に伝えてから返事をしておいた。

ついでに、


『王女が結構な量の魔法具を持ち出したせいで、五爵の情報を得るのにちょっと苦労したとだけ言っておくわ』


とも伝えておく。

これで持ち出した品も、無事に残っていれば返還されるだろう。




 ☆ ☆ ☆




 夜になり、亜人部隊による迷宮探索に充てていた時間になったのだが、移動に使っていたリーナの迷宮は現在移動させてしまっているので実家から歩いていくしかない……うん、面倒だな! 今日は辞めておこう!!

ドール達が順次迷宮を作れるようになったら経路を拡大していけるし、そこまで急いで攻略する必要も無いしね。


 ……因みに、何かに間に合わなくなるフラグではない!

うん、きっとそう!!


 そんな訳で、亜人部隊に素材集めを手伝って貰いながら依頼された品や、今後の為に作っておいた方が良い物を作りまくる事にした。

ヴァルツァー五爵から情報を抜くのにどのくらいかかるかは不明なので、速いに越した事は無いはずだからね。


 ただ、いつもならリーナにも手伝って貰いながら作成するのだが、今日は別の仕事をして貰っていた。

その仕事とは、ドール二号や三号に《共有浸食》した状態で、《迷宮創造》と《迷宮の主》に関係する行動を取まくる事だった。


 一号が自分の意思で動き始めた際に、一番使用頻度が高かった戦闘系の熟練度はそれなりに高くなっていた。

それに対し、多少は使っていた程度だった迷宮系スキルの熟練度は何とか習得していましたといった感じだった事もあり、今回は自分の意思で動く前に多用したスキルがそれに応じた熟練度になるかどうかのテストという訳である。

二体同時にやるのは同じ条件下でのテストも兼ねている為、今後も同じ割合でスキルを使用するように一応は気を付けて行く方向で。


 こうして、夜が明けて亜人部隊が睡眠を取るまでの間、延々と作成を続けていった……。




 ☆ ☆ ☆




 翌日、早速王城へ行き、王子への面会を申し入れるとすぐに地下の幽閉施設へ案内された。

どうやらヴァルツァー五爵関係でそちらに居たらしい。


 ヴァルツァー五爵からの情報収集はまずまずといった所で、残りの四天王とやらもほぼ割り出された状況との事。

勿論本人が軽々しく答える訳は無い為、どんな手段で引き出しているのかは敢えて聞きたくは無い。

参考例として、老魔術師じじいは廃人になってもおかしくない扱いを受けていたという実績があるからだ。

なってもおかしくないという言い方は、ルークと会った老魔術師じじいが彼を連れ出した王女に対して不意打ちで魔人の力を奪っている事から、何らかの方法で廃人に見える状況になっていたと考えられるからだ。


 早速王子に王女の現状を伝えると、


「新たな能力が得られ、以前とは違うとはいえ力が得られるのならば是非お願いしたい。記憶が失われている以上今までと同じ生活は不可能なので、新たな立場を構築する為にもその方がとても有難いのだ」


だそうだ。


 今後の流れとしては現在所属している魔導騎士団からは抜ける事になり、王都から離れた場所で療養している事にするらしい。

今回やった失態の為に数年は時間を置かなくてはならない為、その間に是非とも外部から何を言われても捻じ伏せられる実力がある方が都合が良いとの事。

今後の事は実際に魔法物質を使いこなせるようになるのかとかが影響してくる事になるが、出来れば私達に預けて強くしてやって欲しいとも言われた。


 どこの馬の骨云々と自分の事を言ってみようかと思ったが、残念ながらレイクから勇者の能力云々や今回魔法具で超強化されたヴァルツァー五爵を単独で撃破とかを知られてしまっている以上、私が適任だと思われても仕方が無いか……。

私だけではなく、ルークやゲルボドの事もレックス達と出会った件で知っているしね。


 まぁ、その件はルークが戻り、実際に王女を見てから決めましょうと答えておいた。

王子もそれで納得したらしく、その件に関しては終了したのだった。

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