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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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107◆さらばヴァルツァー五爵! 二度と会わない事を祈ろう!

 ヴァルツァー五爵も段々と本性が表に出て来たのか、


「クソッ! 何なのだ貴様は!!」


と、言いながらの目潰し。


「貴様などに負ける訳にはいかないのだ!」


と、言いながらの金的……いや! ちょっと待って!! それ、私には無いから!!!


 ……まぁ、ここまで追い詰められてしまった事が原因なのだろうが、完全に取り乱している感じだ。

私は特に相手の言葉に反応せずに黙々と戦っているのに、とにかく五月蠅い独り言が止まらないのもその証拠だろう。


 流石にここまで来て逃げられるのは御免こうむるので、これ以上追い詰める前に退路を断つ事にした。

後方に張った《アースウォール》に加えて残り三面にも追加して囲いを作り、逃走用のルートを出来るだけ少なくしておく。

これで跳躍力を上げるような魔法具や、飛行を可能にする魔法具でもなければ逃げられないだろう。

もっとも、今までに使われた魔法具の価値やレア度を考えると、無いとは言えないので確実ではないか……。


 まぁ、《アーシウォール》を更に積み重ねる事で高さを出したりもできるのだが、意外と融通が利かないのであまり使用したくは無い。

その融通の利かない点とは、発動場所を一枚目の上の面と完全に重なるようにしなくてはならないという事であり、ズレてしまうと発動後に即消滅してしまうのだ。


 元々《アースシールド》も接地している必要がある魔法であったが、少しでも地面や先に発動している《アースシールド》に接触してさえいればその上に発動出来た事を考えると、規模は大きくなった為なのか細かな融通は利かなくなってしまっていた。

もっとも、《アースウォール》自体が念のためなので問題は無いけどね。


 さて、そろそろ本気で終結へと向かわせて貰うのだが、この筋肉男の厄介な所は何でもありな所だ。

隠し玉は山ほどあるし、汚い事も平気でする。

まぁ、これからする事を考えたら私も人の事は言えないかな?


 そんな事を考えている最中も延々と攻撃は続いているのだが、そのパターンは最早単調になってきており、自棄やけになってる様にも見えるが……こいつの場合油断はできない。

単調な攻撃に慣れた頃に、変化球での逆転を狙っている可能性があるからだ。


 ここはヴァリアム流の動きに忠実な筋肉男の欠点を狙わせて貰う方向で、起死回生の何か仕掛けてくる前に片づけてしまう方向で動いていこう。


 現在の攻撃パターンは直線的なダッシュをしながら左右に上半身を振るようにして、こちらの的を絞らせない動きでの左右の二択、そこから上中下の三択で惑わせての初撃。

これは本来ガードさせるのが目的なのだが、私はほぼ回避できてしまう。

最初の頃は基本通りに一旦離れようとして私に反撃されていた為、現在は回避された後にも上下に振り分けながら追撃し、距離が多少離れた場合にバックステップで仕切りなおす……ぶっちゃけるとボクシングの試合にしか見えない戦いが繰り返されていた。


 パッと見では重鈍なイメージしか持てない筋肉男なのだが、その腕の振りは軽量級のボクサーに匹敵する……気がする。

イヤ~、正直ボクシングなんてほとんど見た事が無いもので……絶対と言えるほどの自信は無い!

前世の記憶映像を探せばチラッと位ならば存在して居ると思うけど、わざわざ危険を冒してまで今確認する気は勿論無かった。


 おそらくだが、既にSPやMPが尽きて《技》が使えなくなっているらしく、途中から使用しなくなっている。

この尊大で傲慢なくせに中々油断はしてこない面倒な男の事だから、最後の起死回生・一発逆転の為に温存している物はあるのだろうけど。


 私からの魔法攻撃が無い為に迷彩はほぼ使ってきていないのだが、そろそろ使えてもおかしくは無いので逃げるタイミングを狙っている可能性もある。

逃げを妨害しつつ、確実に無力化する方法……といえばあれだ!

そんな訳で、私は決着をつける方法を決め、タイミングを計り始めるのだった。


 狙いは一連の動作が終わり、仕切りなおしてのダッシュ時だ。

この動きは俊敏ではあるが、魔法を吸収できる上に一発程度ならば物理用魔法障壁のお蔭で喰らっても問題ないと考えているらしく、実に素直に直進してくる。

腕で頭部はガードしながら突っ込んでくるため、その一撃で致命傷を与えるのは困難。

一撃で仕留めないとカウンターでこちらが大ダメージを受ける為、回避優先になる事が多い。


 しかし!

今回狙ったタイミングはここなのだ!!

相手が単調さを強調する動きをして、今後の為の布石にしようとしてるのがあからさまではある。

だが、それを生かす前にこちらで有効活用させて頂く。


 二度程タイミングを計る為に様子を見つつ流し、三度目の機会で遂に行った行動とは……ゴーレムの鉄で作った網による捕縛だった。

……え? いつも通りだと言う意見は却下だ!

常套手段こそ、安定した実績を残すのも事実なのだから!!


 勿論、相手の手札が全て出揃ってない以上は油断する事無く追撃もした。

まずは網を十二枚使用している。


 この金属の網は個人にかかる重量は一枚程度だと動きを阻害できる程度だが、流石に十二枚も乗ると異常に重くなる。

しかも、簡易版《アースシールド》付きで破壊するのも困難なので、流石にこの枚数では即脱出は不可能だ。

いや~、どうせなんだかんだと使うんだから、スタック出来る分は作っておこうと貯め込んであってよかったね!


 そして、当然この程度では終わらない。

網に《アースシールド》がかかっているとはいえ、網は網。

隙間はあるので、故郷での工事現場から出た泥を保管してある木箱を《アイテム》から出し、ヴァルツァー五爵の位置へぶちまけた。

次に、同じ様に《アイテム》から出した石材……四メートル四方で厚さ十五センチの物をその上に乗せる。

最初は四つん這いの様な体勢で耐えていた筋肉男も、流石にこれには耐えられなかったらしくて遂に撃沈した。

こうして、私達は遂にヴァルツァー五爵の撃破に成功したのだ!




 ☆ ☆ ☆




 現在、私達は屋敷への通路を先程と逆方向で進行していた。

ヴァルツァー五爵の悪足掻きもようやく終わったらしく、十二枚の網を《アイテム》に収納し、同行者と一緒に手足を鎖で拘束してから石材も《アイテム》へ戻し、グッタリと倒れたままの筋肉男の装備を私以外で解除して貰った。

当然私はいつでも攻撃できる態勢のまま準備していたのだが、流石に何も行動を起こさず、


「私を倒したからと言って……いい気になるなよ! 小娘!! 所詮はこの国における裏社会で四天王の一角に過ぎん私を倒した所で、残る奴らが黙っては居ないのだからな!!! 絶望を味わうが良い!!!!」


と、既に諦めが入った捨て台詞を吐いてくれていた。


 まぁ、ケリが付いた事を示しているはずなので、むしろ言ってくれてありがとうと言っておく。

しかも、何気に四天王が居るという情報も得られた。

後で王城にて情報を絞り出される事が決定だな、これは。


 その後にあった残党狩りは割愛。

隠れ家に戻った所で密集していたので蹂躙し、少しだけ外に出た奴らがレックスや一郎達にボコボコにされていた。


 リーナに連絡すると向こうもほぼ同時に終わったらしく、捕獲した奴らを王都へ移送した後にこちらへリーナだけ移動すると言っていた。

私の移動迷宮を動かすと移動経路が面倒になるためなのだが、リーナの代わりにドール二号を置いて来るとの事なので、向こうで隠れ家の調査をするメンバーの回収も後で可能となる為に問題は無い。


 こちらもある程度調査してから仮眠する予定なので、あまり急がなくても良いとは伝えて《通話》を切り、目の前で《アースシールド》の魔法具によって隔離してあるヴァルツァー五爵とその部下を眺めた。

既に何かする気力も無い事が、全員の態度から見て取れた。


 これでようやく終わったかな……。

後はルークが無事帰ってくれば、私的には完了だ。

というか、無事じゃないと困るんだけどね! 本当に!!

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