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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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105◆エルナリア邸襲撃に関するその後の後始末8

 ふぅ……。

半裸のキモいマッチョと戦う事になった為に、ちょっと取り乱してしまった。


 もっとも、この漢は露出狂という訳では無く、何らかの意味があって脱いでいるようだ。

テカテカした感じでは無いのだが、水分を含んだ何かが上半身全体に塗られ、時々ほんの少しだけ魔法物質を吸収している。

半裸にはおそらく魔法物質を供給する為か、塗布してある物がこすれて落ちない様にとか……何らかの意味があるのだろう。


 だからと言って、私には何の慰めにもならないのだが!


 まぁ、面倒な相手である事は理解できたので、先に必要な手はうっておくとしよう。

一つ目にやる事は、合図を送るまではやや後方で待機する事にしておいた同行者を隔離する事だ。

どう考えても、こいつはヤバ過ぎる。

先程の迷彩状態で他のメンバーに攻撃が行っていたら……まず、間違いなく即死コースだった。


 見えてはいなかったが、こいつがやってきたのは足の破壊から頭部への打撃へ続く連続攻撃だった事は理解できた。

ジャンプと《アースシールド》による変則三角蹴りをかます事で難を逃れたが、《危険感知》と《聴覚強化》があって何とかという所なので、私以外が狙われると回避不能な確率が高すぎる。


 そこで、緊急対応を示す手信号で合図を行い、即《アースウォール》で隔離した。

これで一安心かな。


 さて、私に回避されたヴァルツァー五爵だが、


「これは素晴らしい……まさか、あの攻撃が回避されるとはな!」


と、見下した表情のまま笑顔で語りかけてきた。

……まだまだ奥の手は沢山ありそうかな。


 私としてはあまり格闘戦をやりたくない相手なのだが、魔法が効くかどうか次第で覚悟しなくてはならないだろう。

だが、先にある程度試す事はしたい。

主に私の心の平穏の為に!!!!


 そこで二つ目に行った事は、自分の目の前とその左右に《アースシールド》を張り、先程入れ替えた《ショートカット》から風属性魔法である《ウィンドプリズン》の魔法を使う。

この魔法は熟練度45で覚える、私が現在使える魔法の中でも最高クラスの一つだ。


 魔法を発動させると格子状に目に見えない空気の檻ができ、その檻自体が振動する。

振動している部分は僅かだが景色が歪んで見える為、目を凝らせば目視も可能ではあるのだが、戦闘中ではそこまでの余裕がある場合の方が少ないだろう。


 振動している空気の檻は風の刃となっている為、無理に抜けようとすると大ダメージを受け、風属性に弱い相手や相当な格下相手の場合は切断してしまえる程の威力を持っている。

まぁ今回の場合は、これだけ実力が近い相手なので効果があったとしても切断は無理だろうけどね。


 《ショートカット》から展開された魔法により一瞬にして風の檻が出来上がり、ヴァルツァー五爵を取り囲むのが使用者である私には見えた。

使用した本人に見えないというのはどう考えても危険なため、術者には見える仕様なのであろう。

それを確認した直後、次の手を打つために私は一歩下がった。


 その瞬間、強烈に《危険感知》が鳴り響く。

方向は前方。

間違いなく檻に入ったヴァルツァー五爵からだ。


 しかし、一瞬で反応の位置が動き、今度は左前方から《危険感知》反応が襲ってくる。

私はまず後方へステップし、次は一気にそのままの方向へ跳ねた。

その先には私が張った《アースウォール》があるので、それを足場に今度は前方へジャンプすると同時に《アースシールド》を使用する。


 足場に出来るように位置を調整して張った《アースシールド》の上に一瞬だけ着地し、そこから全力でバックジャンプする事で目的地である《アースウォール》の上に降り立った。

ここに来た理由は、攻撃から逃れる事に加えて情報収集の為だ。


 《アースウォール》の向こうから顔を覗かせて同行者がこちらを見ていたので、その近くに降り立った私は、檻の中から抜け出した後で《危険感知》が働いた場所に居るヴァルツァー五爵を確認しながら、


「あの筋肉野郎の姿はずっと見えてた? それとも消えた?」


と、小声で聞いてみた。


 それに対し、


「見えていました、最初から消えた事は無いです。エルさんの正面から、向かって左側に前転するように移動した所で何かの構えをとったように見えましたね」


との事。


 ふ~む。

あれは個人に対しての迷彩能力という事か。

それに加えて今回判明したのは、どうやら魔法物質系は無効化する能力がありそうだという事。


 無効化だと考えた理由は、私が使用した《ウィンドプリズン》の無残な姿にある。

使用者である私には風の檻が視覚的に見える。

そこにはギャグマンガあたりでありそうな、人型にくり抜かれた穴が見えているのだ。


 綺麗に削られた人型には、魔法物質があった痕跡が見当たらない。

そこから考えられるのは、魔法物質の消失しか無い訳だ。


 現在は姿を見せているヴァルツァー五爵ではあるが、これまで試した結果として、瞬間発動できるであろう迷彩に加え、魔法物質で構成された物では障害物とはならない様だ。

土系の魔法は効果時間内は物質化する物が多いので有効そうなのだが、泥弾が効いていなかった事を考えると物理にも何らかの対策が存在していそうかな。


 それじゃ、それらを踏まえて第二ラウンドと行きましょうかね。




 ☆ ☆ ☆




 現在、第二ラウンドが始まってから三分程が経過している。

今の段階での戦い方は、単純に肉体同士での格闘戦となってしまっていた。


 《フルブースト》により強化された私の身体は、十分互角の戦いを演じている。

もっとも、正直な所、これに関してはただただ相手を褒めるしかない。

何故なら、魔素の供給量が去年エルナリア領に居た頃から比べると圧倒的に増えている私は、《フルブースト》時にはその量に応じた能力値上昇効果を得ているのだ。


 前衛系の能力値ではどうしても仲間達に劣る私だが、この魔法で逆転してしまうほど効果的であり、疲労によって動きが落ちる事も無い。

まさに、チートずるい性能と言えるレベルになっている。


 冒険者になる前は、ルークの《ウィンドウ》と違って全く意味がないと思われていた《魔素の泉》だったが、《ウィンドウ》と組み合わさった現在ではあり得ないほど凶悪になっていた。


 その私の《フルブースト》状態と互角な以上、相手は間違いなくレベルでは測れないほどの実力を持っている訳だが、更に酷い事実が判明している。

この筋肉男、魔法物質系無効化だけじゃなく、簡易的な《アースシールド》のような効果がある物理防御効果まで持っているのだ。

泥弾が当たらなかった以上、予想はしていたのだが……これだけの魔法具を揃えるのにいくらかかったのかと問い詰めたくなった。

因みに、スキルの使用は確認出来ていない事が、魔法具であるという根拠だ。


 迷彩能力に関しても、大体の事が判明していた。

予想通り、上半身裸なのがこれに関係しているらしく、時々魔法物質を吸収しているのが感じられる。

どうやら一定量の魔法物質を溜めて発動するらしいのだが、魔法を無効化した場合はその分も吸収しているらしく、こちらが魔法を使えば使うほどこの能力を使われるので、攻撃魔法は辞めざるを得ない状況となってしまったのだ。


 結果として、とても嫌なのだが……殴り合いに応じるしかなくなってしまった訳である。

その攻撃は見た目通りのパワーだけではなく、恐ろしい程の速度とキレがあり、《格闘術(ヴァリアム流)》というスキルを使用してのテクニカルさも持っていた。


 正直、こんな厄介な相手だとは思っていなかったよ!

それでもやるしか選択肢は無いけどね!!

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