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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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98◆エルナリア邸襲撃に関するその後の後始末1

 ルークは王国の東側へ飛ばされ、すぐには合流できない状態にある。

迎えに行く事でそれなりに早く戻れるだろうが、まず早急に片づける必要があるのはやはりヴァルツァー五爵関係だろう。


 そんな訳で、消耗品である使用した罠系の魔法具を使用可能な物に変え、何かあったら即連絡するようにリーナに伝えてから王城へ向かった。

因みに、ドール一号を密かにエルナリア邸に連れてきて、師匠の工房内で待機させている。


 私の《浸食共有》では、ドールの肉体的な行動を支配する事が出来ない。

《浸食共有》の大本おおもとであるリーナならば可能なので、おそらくマスター権限とか共有度の強さといった何らかの理由があるのだろう。

リーナ本人も理由は判らないらしいので、そういうものだと納得しておく。


 この、私では肉体を操れないドール達なのだが、一号は迷宮探索を通じて自己判断で行動し、私やリーナの指示をある程度こなせるようになってきていた。

特に回避行動ならば十分任せられる程に成長しているので、《共有浸食》で同調しながらある程度指示を出し、私が魔法を使いまくれば十分に戦力になるという訳だ。


 これで私がエルナリア邸から離れても戦力の低下はそこまで起こらないので、保険の意味合いが強いとはいえ安心して王城へ行けるという訳だ。




  ☆ ☆ ☆




 王城へ到着した私は、すぐにレックス達と合流した。

ここに居る六小隊は、レックスとロイドの部隊だ。


 半数にあたる、レベルの低い雑魚達からは大した情報を得られない事が既に判明し、現在はレベル30台の奴らからの情報収集に集中しているとの事。


 正直な所、どんな手段が使用されているのか知りたくもないので結果だけ聞く方向で……。

因みに、例の第三王女が色々持ち出したせいで手間は相当増えているらしい。


 魔法具でサックリ真偽判定が出来るはずなのに、物がなくてそれが出来ないとかね。

面倒な事をしてくれたものだが、今さらどうこう言っても仕方がないのである物で何とか頑張って貰いたい。


 現在判明している範囲では、エルナリア邸への第二陣は無いとの事。

その分五十名もの大人数で一気に来たはずなのに、結果がこのザマというガッカリ状態らしい。


 問題のヴァルツァー五爵の居場所はまだ詳しくは判っていないらしいのだが、五爵領の中に居る事だけは判明した様だ。

詳しい場所を現在調べているらしいが、流石に素直に吐く奴はいないらしく、もう少し時間はかかりそうとの事。


 もっとも、その情報だけでも相当な価値はある。

五爵領まで移動する必要があるのならば、私かリーナが先に移動を開始する事が出来るからだ。


 追加で情報を得る必要があるため、現状で私が移動する事が得策では無いのは明らかだ。

ここは、リーナに向かって貰おう。

ただ、そうなるとルークの方に回す予定が少し遅くなるか……。


 そこで妥協案として、やはりドール一号を派遣する事にした。

ただし、護衛兼お目付け役を付けることにする。

選んだのは、エグフォルドタイガーの一匹である四郎だ。


 四郎は風系統の特殊能力を使えるためか、五匹の中でも一番敏捷性に長けている。

エグフォルドタイガー達の筋力は、ドール程度の重さならどの個体でも問題なく乗せたまま移動可能なので、この選択になったという訳だ。


 人並みの知性を持った四郎ならば揉め事を起こさずに移動でき、もし何かあってもドール一号に私が《浸食共有》で同調すれば解決する事は容易であろう。

そんな訳で、一応私が時々覗く程度で後はドールと四郎にお任せの方向で王都から送り出した。




 ☆ ☆ ☆




 その後は細々とした用事や後片付けで時間が過ぎたのだが、この日は残念ながらヴァルツァー五爵の正確な居場所は特定出来なかったらしい。

一応、ここが怪しいという場所は数か所候補が出ているようなのだが、本人は信じている為に虚偽判定が信用できない嘘の情報も交じっているために難航しているようだ。


 こういった場合にも対処可能な手段があるとの事だが、現在一つ問題が発生しており、若干手間取っているとの事。

簡単に言えば、王女が持ち去った魔法具の中に現在必要な品が含まれてしまっているのだそうだ。


 若干精度は落ちるらしいが、同様のスキルを持つ担当者が懸命に頑張っているとの事なのでそちらに期待しておこう。

因みに、あまり見たくない現場となっている可能性が高いと思われるが、色々役に立つかもしれないスキル確保の為に見せて貰えないか聞いてみた。

結果は、残念ながら関係部署の人間以外には見せられないとの事だった。


 そんな訳で、時間が出来たのでドール一号の様子を確認しておく。

《浸食共有》で同調すると、現在は移動を止めて洞窟のような場所にいた。


 ゴーレムの一種であるドール一号は睡眠が必要無い上、余程の低温にならない限りは毛布すら必要無いため、おそらくこのまま明日の朝まで居るはずなのに何の準備もせずに座って居た。


 四郎は日が暮れるまで走り続けて居たために現在休息中らしいのだが、元々強靭な上に私から魔素の供給を行っているので疲労はほとんどないようだ。


 ドール一号は私が《浸食共有》状態になったのを確認したらしく、《ショートカット》から《アースシールド》を使う練習を始めた。

カオススライムの一部を使っているお蔭なのか、ドールも声を発する機能が備わってはいるらしい。

しかし、現状はまともな言葉にはなっていない。

そのために現在のドール一号は魔法が使用できないのだが、私やリーナの《ショートカット》からなら辛うじて使えるらしい。

もっとも、それすらも直接私かリーナが《浸食共有》による同調をして居る場合の様に効率よく《ショートカット》にアクセス出来て、ようやく発動確率五割位なのでまだまだ先は長いと言えるだろう。


 因みにアクセス云々は、亜人達からも距離が離れていると発動が困難な時があったという証言を全員がしているので間違いなくあるようだ。

元々がなんとなく認識できてなんとなく使えている感じらしいので、それが薄ぼんやりとして発動出来なくなるらしい。

最近はそんな事もなくなったらしいので、慣れかスキルの熟練度辺りで改善される物なのだろう。


 解明してもあまり意味は無さそうなので放置の方向で。

頑張って慣れろ! 以上。


 という訳で、折角ドール一号が練習を始めたのだから少しこのまま同調しておくかと考え、暇潰しに自分のステータスやスキル熟練度の確認をしていたのだが、そこでドールのスキルがどうなっているのかがふと気になった。


 残念ながら、《浸食共有》をしていても《ウィンドウ》の機能では確認できない事を再確認したので、実際に使用できるスキルを使って貰う。

ただし、ドール一号に同調して使ったのは戦闘関係のスキルがほとんどだった為、前に黙々と練習していたものがほぼ全てだった。


 ただし!

一つだけとんでもない発見があった!!

なんと……《迷宮創造》スキルを保有していたのだ!!!


 流石に乾いた笑いしか出ない程の驚きだったのだが、これは勿論おそろしく有効な事だろう。

現在私とルーク、そしてリーナが迷宮を保有している訳だが、これ以降に迷宮の数が増えるのかどうかは熟練度を上げてみるまで判らない状況だった。

何故なら、《簒奪の聖眼》を利用した私達以外に《迷宮創造》スキルを習得する事は、数十年単位でかかる可能性すらあるからだ。

しかし、自我が薄いが故にドール達は、《浸食共有》での同調を行った時にスキルの影響を強烈に受けてしまうのだろう。

もしかしたら、自我の構築の際に焼き付いた感じになっているのかもしれないが、結果が重要なのでそこら辺の理由はどうでもいいだろう。


 この事実は、私達の移動手段の強化に役立ってくれる事になるはずだ。

今の所、リーナの《浸食共有》がどの程度の数まで許容できるのか定かではないのだが、


「……二号を《浸食共有》に組み込んでも、全然負担が増えた感じがしなかった。ママの時の百分の一位?」


と言っていた。


 私が特殊で、一際許容量を圧迫しているのかといえばそうではなく、亜人達でも私の半分位は負担が増えた感じがしたらしい。

要は、ドールが異常に軽いという事だと思う。

因みに、一号が自我を持ち始めているが負担に変化は無かったらしいので、成長完了時にガツンッと一気に上がるのかどうかを見極めてから方針を決める必要があるだろう。


 もし負担が増えずにドールの大量稼働が出来るようなら、更なる利便性の向上と戦力強化が容易になるだろう。

これは楽しみが増えたね!


 そんな訳で、私のMPを消費しながらドール一号には移動迷宮を作らせた。

完成したらこれまでと同じ様に、ガンガン魔素を流して育てよう。

……うん!

これからが楽しみですね!!

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