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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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97◆エルナリア邸からの避難に関するあれこれ8

 ほぼ予定通りではあったのだが、侵入者達は思ったよりも楽に全員捕獲できたようだ。

室内からの合図を出す余裕は無かったらしく、エルナリア邸の周囲に潜んでいた連絡役らしき奴らも全員無事に捕獲出来た。


 全員捕獲したという確認には王家秘蔵の魔法具が使われ、嘘を見抜ける魔法具である為、複数の捕虜から人数確認する事で逃げた奴は居ない事が判明した。


 そんな訳で、侵入者と連絡役の合計五十四人はさっさと王城へと移送する。

理由は簡単で、早急にヴァルツァー五爵関係の情報を吐かせる為だ。


 私を含めて、ここに居るメンバーは尋問や拷問等といった行為に慣れてはいない。

早急に正しい情報を得るためには、専門家にお願いするのが一番であるというのが結論であったからだ。

ぶっちゃけると私自身がやりたい仕事では無いので、正直とてもありがたくはあった。


 その移送についてなのだが、一番楽なのは移動迷宮を王城で呼び出す事だった。

しかし、現状で移動迷宮を移動させるのはその分行けない場所が出来るので好ましくない上、王城で大っぴらに迷宮を呼ぶのは勘弁願いたい。

そこで、移送用の馬車を王城から出して貰い、王都にある仮のエルナリア邸から移送して貰う事にした。


 それらの仕事はレックス達に任せ、私はルークの居るホールへ向かう。

理由は、ルークへの《通話》が不可能な事に気が付いたからだ。

《圏外》という、見た事がない表示だった。

しかも、ルークの持つ魔送石へ流していた微量の魔素の流出も止まっていた。

流出量は決めた量を無意識にコントロールしているのだが、ルークへ送る量は現在微量すぎて止まってもすぐに気が付かなかったのだ。




 ☆ ☆ ☆




 ホールへ着く前に、事態に変化があった。

ルークから《通話》があったのだ。


『姉さん、襲撃された件は大丈夫?』


と、ルークは聞いてきたのだが、むしろ大丈夫なのか問いただしたいのはこちらの方だと言いたい。 


『ルーク、ヴェルツァー五爵の部隊は全て排除したわ。それから何回か《通話》で連絡していたのだけれど、何故か繋がらなかったのよ。現在ホールに向かっていたのだけれど、そちらは大丈夫?』


と、聞き返す。


『取り敢えずは落ち着いているんだけど……ちょっと面倒な状況になっていてね。あまり長く話は出来ないので必要な事だけ手短に聞く感じになると思う』


『……OK。もう一度確認するけど、危険に晒されている状況では無いわけね?』


『うん。そこまで緊迫はしてないと思う』


『で、まずは何が聞きたいの?』


『取り敢えず聞きたいのは、姉さんが転生者だってバラす事に問題があるかどうかかな』


……ん?

予想外の話の流れだな。

まぁ、ルークがわざわざそんな事を言い出すなら、余程の理由があるのだろう。


『あんまり大々的に公表するんじゃ無ければ問題は無いけれど……どういう状況なの?』


と聞くと、


『王女様が完全に暴走して魔人って状態になってしまったんだけど、お嬢様を攫った例の老魔術師が現在身柄を確保していて、人として戻した上でこちらに渡せるというんだ。ただ、その為に条件を出されている中に姉さんの情報を要求されている所……かな』


だそうだ。


 しかし、何故わざわざ私の情報なんだろう?

ハッキリ言って、私は老魔術師じじいとの面識はほぼ無い。

それなのにわたしの情報を欲しがる理由は、ルークとセットで知りたいだけなのか……異世界人である事が関係している可能性もあるかな?


 前者ならどちらにしても《魔素の泉》と異世界人という事以外はルークと大差無い情報だし、後者ならば今後の情報源として使える可能性がある。

どちらにしても、バラして困るほどの情報はさほど無いだろう。

ルークが既に、戦闘で勇者にしか無い能力は見せてる事だろうしね。


『そういう状況なら言ってもいいわ。その代り、それを知りたいという理由を出来る限り引き出しておいて』


『わかった。それじゃ、また必要があり次第連絡する』


そう言って、一旦《通話》は終了した。


 当然《通話》中も移動していたのだが、到着したホールの中には誰も居なかった。

床には戦闘を行った形跡が見られたが、移動迷宮すらなかったのだ。


 う~む……。

となると、ルーク達はどこに行ったんだ?

そう考えていると再びルークから《通話》がきた。


『姉さん、少し頼みたい事があるんだけど、今大丈夫?』


『特に何もしてないから、すぐに動けるわよ』


と、ルークの問いにそう答えたのだが、


『僕は現在、例の老魔術師の迷宮の中にいるんだけど、色々あって全然別の場所に連れて来られてしまったらしいんだ。それで、ホールにある僕の移動迷宮に入って貰って、姉さんごとこちらへ迷宮を呼んで帰るルートを確保しようと思うんだけど、お願いできる?』


との事。


 ルークの迷宮?

何度見ても、ここには無いのだが……。


 だが、そう思った次の瞬間には理由を思いついたので、


『ん~、ルークの迷宮はこっちには無いわよ?』


と答えておく。


 理由は簡単。

ルークの使用している移動迷宮は自動追尾型……そう、自動で追尾する訳だ。


 少し前までは自動追尾の名が恥ずかしい程度しか動かなかったのだが、現在は私の魔素を魔送石から送り込んでいるため、魔法物質が十分にあるので結構な頻度で追尾しているのだ。

即ち、既に自動追尾でルークの居る場所の上空へと場所を移しているという事だ。


 その事実をルークに伝えると愕然としていたが、流石にすぐに立ち直って場所の確認をしてみると言って《通話》を終了した。


 さて、ここに残っていても意味がないことは分かった。

取り敢えずやれる事をやりながら、ルークからの連絡を待とう。


 まず早急にやるべき事は、先程使った捕獲用魔法具の再設置だろう。

襲撃が先程ので全てという保証はどこにもないのだから、油断する訳にはいかないのだ。


 捕獲した奴らの移送には捕虜の多さから、六小隊三十六人で当たっている。

そこで、事が動いた以上は休息時間ではあるが休みの三小隊にも動いて貰っていた。


 結果、メイド姿の魔導部隊全員と、休憩していた三小隊十八人で再襲撃に備えて待機して貰っており、リーナを含めたゲルボド達にもその任務にあたって貰っている。


 魔法具を使用した部屋数が少ないので、さっさと済ませてしまおうと作業に取り掛かった時に再度ルークからの《通話》が来た。

どうやら、随分と遠くに行っているらしい。


 王都が王国の中央付近にあり、エルナリア領が北のはずれに位置するのに対し、現在位置は王国の東のはじ辺りだそうだ。

どうやら無事に老魔術師じじいとの交渉は成立して戦闘は回避されており、情報を色々貰えているらしい。


 距離としてはエルナリアの街から王都までとそう変わらないらしい位置なので、馬車で二週間といった所であろう。

まぁ、王女は戦闘不能になり、老魔術師じじいは話す機会を求めているらしいので問題は無いっぽい。

普通に移動して貰って問題ないかな。


 そんな訳で、


「OK。取り敢えず、ルークには王都方向へ移動して貰うわ。こっちもヴァルツァー五爵の件を片付けたらそちらに移動する。そうすれば一週間もかからずに合流出来ると思うわ」


と言っておいた。


 こうなると、まずはヴァルツァー五爵を早急に潰してルークの迎えに行かなくてはならない。

もっとも、空いてる時間で迷宮をこまめに移動させながら進むことができるため、ヴァルツァー五爵を潰せなくても時間的にはそんなに変わらないと思うけどね。


 理想としては自己判断で行動出来るようになってきたドール一号を送り込んでみたいのだが、流石にまだ少し早い気がするので自重した。

もう少し人間らしい行動を取れるように、しっかりと教育してからにしようと思う。


 それじゃ、軽くエルナリア邸の用事を済ませて王城へ向かうとしましょうかね。

捕虜達からサックリと情報が得られている事に期待してます!

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