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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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96◆エルナリア邸からの避難に関するあれこれ7

 迷宮五層攻略後、待ち伏せ二日目は順調に制作を行い続けた。

全員分の予備の服も完成し、レックス達の実用装備にも手を出していた。


 レックス達の装備は、王都の兵士が装備している一般的な装備の一つだ。

王都の一部隊である以上は当然なのだが、どうせならその装備を模して作ってしまう方向で考えていた。

《アイテム》が無いレックス達に、王都を出てから装備変換しろとは言いたくないしね。


 そんな訳で色々と考えた結果、ルークに渡した装備の一部変更した物を作成する事にしている。

その装備とは、外見は今までと同じで内側を高性能にする必要がある。

そこで、まずはレックスにお金を渡して純正品に使用している革を調達して貰った。

以前任務以外で装備を破損させた際に、応急処置を行うために仕入れ先を調べて直接買いに行ったことがあったので知った居たらしい。

いきなりの大量注文だったのだが、今は在庫に大分余裕があったらしいので喜ばれたとの事。

そのお蔭で、完全に見た目は同じ素材に見えるだろう。


 次に内側なのだが、ルークの装備に使った土属性が強い革をメインにし、火属性に強い鱗は粉末にしてから粘性の液体に混ぜ、ムラが出ないようにしながら革に塗布した。

《錬金術》の簡易錬金窯内で細かく調整しながらできるので、この作業自体は簡単だった。


 この方法だとルークの物よりも多少性能が落ちてしまうが、その分軽量で加工も容易だ。

一応、鱗自体を見えない部分に縫い込んだバージョンも試作してみたのだが、その場合はルークの装備の様に周囲を覆う事が出来ない為、実は塗布した方が性能が上となる事も判明した。


 結果として、ルークの物より三割程性能が落ちたのだが、


「おいおい……! これを貰えるとか、マジでかっ!!」


と、試作した装備を見ながらレックスが叫んでいたので、十分に及第点は貰えている様だ。


 流石にレックス達は結構な人数がいるのですぐに全てが出来あがる訳も無く、出来あがった分は王都に居る仮のエルナリア邸に詰めているメンバーに支給しておいた。

エルナリア領のメンツには魔法を付与した服を支給してあるが、向こうのメンツは通常装備のままだったからだ。




 ☆ ☆ ☆




 夜の亜人部隊による六層探索は割愛。

六層からもオブシディアンゴーレムが追加で来ていた事で嫌な予感はしていたのだが、予想通りにオブシディアンゴーレムとクリスタルゴーレムで溢れていたのだ。

流石に配分は五割づつ位に変わっていたが。


 ラストのボスはクリスタルゴーレム同士の《合体》が見られたが、巨大なだけで脅威度は低く、亜人部隊が安定した戦いで勝ってしまっていた。


 そんな訳で待ち伏せ三日目、昨日の続きでレックス達の装備を作る。

鱗の素材が流石に切れていた為、先程ゲルボドにも付いて来て貰い、迷宮に居る亜竜から剥ぎ取ってきていた。

勿論完治させてあるので、麻酔代わりの昏倒から目覚めたら元通り動けるはずだ。


 まずはこの鱗を粉末状に加工する訳だが、私一人でも余裕なのでリーナにはルークの様子を見に行って貰った。

一人籠っているルークの気分転換も兼ねて、お菓子を持たせて話し相手としてたまに送り込んでいるのだ。


 最初の頃は警戒していたルークも、リーナに危険が無いと判断したらしく、最近は妹の様に扱ってくれていた。

リーナの方も懐いている様なので、丁度良い話し相手になっている事だろう。


 そのリーナがしばらくしてから戻って来たのだが、その直後に事態は動き出した。

遂に設置してあった《危険感知》の魔法具が鳴りだしたのだ。

さぁ、ようやくお仕事の時間ですね!




 ☆ ☆ ☆




 《危険感知》による警報が鳴り、私とリーナは即動き出した。

戦闘用の部隊が詰めている部屋まではそれほど遠くも無く、まだ敵がここまで侵入するにはどう考えても早いので余り気にせずに走り抜ける。

もし侵入出来たとしても攻撃される前に《危険感知》が働くので、《フルブースト》状態で走り抜けている私を止める事はレベル40以上ある猛者でも相当厳しいはずだ。


 もちろん侵入者がここまで入り込んでいた訳も無く、すぐに詰所に移動できた。

屋敷の見取り図上に置いてある《危険感知》用魔法具の反応は、裏口と二階の窓から反応があったようだ。

《危険感知》用魔法具に反応した数は裏口が四十、二階が十前後らしい。

鳴った回数でカウントしているため、流石に四十の方は大体の数との事だった。


 現在、屋敷の中に執事&メイド役がある程度は分散している状態ではあるが、異常に気が付いて半数は戻って来ていた。

勿論外部には警報が聞こえない為、戻っていないメンバーは侵入に気が付いていないので、私達はすぐに動き出した。


 私は人数の多い裏口へ向かい、リーナには二階を担当して貰う。

その少し後ろから十名前後のメンバーが移動し、戦闘が始まったら参加してもらう方向だ。

残りのメンバーは詰所に残って貰い、追加で《危険感知》用魔法具が反応したら対応して貰う事にした。


 足音を殺しながら遭遇する予定の場所へ素早く移動すると、レベル30越えの実力者が十五人程とレベル10~20程度の二十五人程が音を立てずに移動していた。

リーナの方は十人程度だが、流石に二階から侵入してくるだけあって全員がレベル30越えとの事。

しかも、魔法使いっぽい奴が数人いるらしい。


 ルークの部屋でも警報が鳴っているはずなので、状況を説明する為に《通話》をしておく。


『ルーク、ヴァルツァー五爵の手下だと思われる奴らが来たわ。数はおそらく五十前後、半数がレベル30越えの裏稼業の実力者、残りは数合わせの10~20台の手下ってとこね』


と、人数を伝え、


『念のために、魔法を使いそうな奴が数人いるからゲルボドはそちらに回すわ。もしこの機に王女が来たらしばらく一人で頑張りなさい。最悪、私の魔素《アースシールド》の魔法具を発動させる事も躊躇っちゃ駄目よ!』


と言っておく。


 《アースシールド》の魔法具はかつて老魔術師じじいの迷宮でシェリー達の馬車を守り続けたのと同じ強度の物だ。

勝てない状況でもあれさえ発動させれば死ぬ事はまず無いので、躊躇う事無く使って籠城して貰えばどうにかなるだろう。


 さて、そろそろこちらは攻撃に出たい所ではあるが、戦闘音が漏れるのはゲルボドが配置についてからにしたいので、


『リーナ、そっちのメンバーにゲルボドとミラを迎えに行かせて。魔法戦になる可能性が高いから、ゲルボドはそちらへ参戦させるわ。あと、ゲルボドと合流出来るまではそちらも少しづつ後退して待機しておいて』


と指示を出した。


 こちらも後退しながら少し待つと、リーナからゲルボド到着の報告があった。

さて、戦闘開始といきますか。




 ☆ ☆ ☆




 相手は慎重に進んでおり、進行速度はかなり遅かった。

リーナの方は実力者が多い上に人数も少ない為、そこそこの速度で進んでいた様だが見つかってはいないらしい。


 私はリーナにネット系の罠の使用を指示し、こちらのメンバーにも同時に決めてあった手信号で指示を出した。


 隣接する部屋に四十人中の半数以上が侵入していた為、蜘蛛の網で出来た捕獲用ネットに一気に引っ掛かる。

これを合図に、遂に戦闘は開始されたのだ。


 部屋に入っていなかった賊がこちらを発見して、魔法を唱え出したのが聞こえ、建物内で使う為に持ってきたであろう小さめのクロスボウをこちらへ向けて撃ちだした。


 それと同時に、こちらとは反対側へ向かおうとする奴も居る事から、発見された場合の役割分担などがあったのかもしれない。

もっとも、そんな事を許すはずは無い。


 私は無詠唱で土属性の魔法、《アースウォール》を敵の向こう側へ立てる。

《アースウォール》は巨大な《アースシールド》の様な物だが、私が使うと巨大過ぎて使い勝手が悪いのでほとんど使った事が無かった魔法だ。

建物内に生える土の壁は違和感が凄いのだが、魔法物質が変質した物なので気にしたら負けだろう。


 退路を断たれた賊達は反転し、こちらの部屋に向かって遠隔攻撃を開始する。

先に呪文を唱え始めていた奴からは魔法も来ていた。


 しかし、勿論そんな奴らの相手を素直にする気は無い。

まずは蜘蛛の網製ネットに捕獲されている奴らには、更に金属製ネットで追い打ちをかけさせる。

それと同時に、《アースウォール》の魔法を隣の部屋と繋がる扉付近に使用した。

即ち、隣の部屋は出入り口が全て《アースウォール》で塞がれてしまった訳だ。


 後は悠々と網に囚われた奴らを無力化し、《アースウォール》の効果が切れる前に隣の部屋の拘束用魔法具も発動させて捕獲した。


 その段階でリーナから《通話》があり、


『……ママ、こっちは終わった。こちらへの被害は無し。相手には数人の怪我』


だそうだ。


 なんとも呆気ない結末ではあったが、残念ながらこれで終わりではない。

むしろ、ここからが本番とも言えた。


 なぜなら、こいつ等は所詮雇われたコマでしかないからだ。

さて、こいつ等から芋づる式にヴァルツァー五爵まで片づけてしまわないと今後が厄介になる。

今回できっちりと潰れて貰いましょうかねぇ。

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