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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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92◆エルナリア邸からの避難に関するあれこれ5

 レックス達がエルナリア邸にやってきた翌日、既に基本的な準備は整っていた。

もっとも、レックス達用の装備や、侵入経路となる部屋にはまだまだ魔法具を配置し、今着ている物の予備も作る必要がある。

まだまだ忙しく作成する必要があるという事だ。


 ただ、私やリーナはそういった流れで行動するのだが、今日からは他の人員も居るので各自でやるべき事をやって行く事になる。


 まずはレックス達なのだが、休み以外の二部隊は魔法具の使い方や挙動とタイミングを覚えて貰い、いざ侵入者が来た際に備えて慣れて貰う。

その間にリリアーナ達のメイド部隊は、ある程度外から見える位置で屋敷内の仕事をしている様に見せかけ、たまにレックス達も外に出て仕事をしているふりをする。


 今日の段階では、内部で待機する部隊も装備をつけずに居る為、二部隊全員がその役割を担当していた。

理由は簡単で、私が昨日作った制服という名の布製魔法防具の方が普段つけている装備より強固だった為だ。


 レックス達の普段の任務は魔物との戦闘だけではなく、その魔物自体の探索から始まる事が多い。

被害報告はあっても居る場所が判らない事の方が多い以上、それは当然ともいえた。

そうなると、金属製の装備はどう考えても重量的にも隠密性の観点から見てもアウトだ。


 そんな訳で、レックス達は王国軍装備の中でも軽量なタイプに分類される、革を部分的に金属で補強した物を使用していた。

その防御力は、金属部分に上手く当たれば若干だが私の付与した服より上、それ以外に当たれば圧倒的に私の服の方が強いという結果だった。


 守備範囲も関節すら全て守られているメイド服や執事服の方が広く、


「これ、防具無い方が強いんじゃね?」


という、レックスの発言により誰も着替えなくなってしまったのだ。


 流石に布製だと不利な点もあるのでは? という疑問もあったので確認して行ったのだが……恐ろしい事にほぼ全ての点でメイド服や執事服が勝っていた。


 今回付与してある製品の特性として、内側からは抵抗なく動かせるが外部からは土属性の力で強固に固定する力が働くようになっている。

即ち、斬撃だろうが刺突だろうが、付与魔法による防御力を超えない限りは服全体に力が分散して行く為、点から面への衝撃に変わってしまう。


 点での攻撃ならば肉を穿つ事が出来る攻撃なのに、服全体に拡散された衝撃では致命傷と呼べるものではなくなってしまうらしく、多数の攻撃を受けると身体の芯に重たい物が蓄積されていく感じ……と表現していたが基本的には無傷だった。


 それにしても、レベル30越えの隊員同士の攻撃すら貫通する事は無かったのだが……試す為に全力で突きを入れるのはどうかと思うんだが!

突き破った場合でも魔法で回復出来るとはいえ、流石にやり過ぎな気がします!!

特に、ミルファ!!!


 ……まぁ、当然だがやられたのはレックスだ。

テストで理解したとは思うが、拡散されるとはいえ連続で喰らえば結構な衝撃はあるので絶対に過信はしない様にと十分言い含めてはおいた。




 ☆ ☆ ☆




 協力者にかんしてはそんな感じであったが、直接的な当事者であるルークには早速一人で籠って貰っている。

出来ればヴァルツァー五爵関係とは別のタイミングで第三王女に襲撃して貰った方が良いからだ。


 近くにゲルボドとミラを配置してあるので、ルークの《迷宮の虜》も含めて戦力的にはそれなりに揃っている。

正直な所、どうせなら面倒なのですぐにでも来て貰いたいものだ。


 因みに、ヴァルツァー五爵の襲撃は二~三日後からが怪しいと予想していた。

理由は、ヴァルツァー五爵領とエルナリア六爵領の距離にある。


 悪党が緊急時の避難場所に選ぶのはどこか? という疑問に対して皆で意見を出し合った結果、自分が安全だと思える場所という意見が圧倒的に多かったのだが……では、それはどこかという話になった。


 予想されたのは、自身の領内で人が出入りしない隠れ家。

もう一つは、人混みに紛れられる様な街中の隠れ家といった所だ。


 完全に領地を捨てて遠国へという事も考えられるが、そうなればしばらく待ってみても来ないという結果が出るだけなのでそれはそれでいい。

時間が確保出来れば、それに見合った対応も出来るのだから。


 そんな訳で、いつ来ても不思議では無い第三王女をおびき出す目的でルークを隔離している訳だが、当然装備もそれなりにいい物を用意してあったので渡してある。

実は前に第三王女に襲われたのを聞いてから、対王女様に素材を探して少しづつ準備はしていたのだ。


 メインとなるのは、土属性が強い革と火属性が強い鱗の複合素材装備だ。

この複合素材の装備というのは、あまり一般的ではないらしい。

理由は、手間がかかる上に製作の難易度や強度に問題があるとの事。


 通常は装備を作った後に魔法を付与する。

何故なら、魔法が付与された素材は加工が厳しくなってしまうからだ。

加工法によっては貫通特化の付与を行った専用の道具すら必要になる為、金に糸目をつけない特注品以外にはやられない方法だと言うのも納得は出来る。


 因みに素材同士をくっつける作業はやり方が二種類あり、先に穴をあけておいて紐で固定する方法と、付与魔法で貫通力を上げた道具で後から穴をあけて張り付ける方法だ。


 前者は加工が容易ではあるのだが、所詮は紐で押さえているだけなので、紐の損傷によってパーツの脱落が起きる場合がある。

後者も紐等で縫いつけている点は同じなのだが、こちらは強引に穴をあけて捻じ込んでいる為、穴があいている部分を素材が締め付けている状況になっている。

即ち、全ての穴が個別に紐を締めつけている為、多少紐が切れても破損や脱落は起きないという訳だ。

前者も複数の輪にすれば多少切れても良いのではと言う意見もあるようだが、穴を大きくする必要性がある為にあまり好ましくは無いとの事。


 そして重要なのは紐についてなのだが、紐にも大抵は土属性の付与がなされ、強度が上げられては居るので簡単には切れない様になっている。

しかし、土属性だと魔法に耐性がなく、逆に魔法への耐性を上げるならば水属性を付与しなくてはならない為、結局はどちらかを選ぶしかないという状況に陥るのだ。


 上手く運用すれば通常より多くの効果が得られる半面、高い金額を支払っているのに破損の恐れが非常に高いのでは好まれないのは当然と言えた。

一応先生に聞いてみた所、当然だが前衛には魔法も近接ダメージも受ける可能性が高い為に好まれず、必然的に後衛が複数の布素材を使った対魔法用防具にという事になり、そちらには多少の需要があるとの事。

とはいえ、近接ダメージを受ければ容易に破損してしまう為、余程の金持ちがどうしても魔法を警戒したいという状況でも無ければ使う事はほぼ無い様だ。


 さて、そんな事前情報を聞いた上で私が作った品がどんな物かと言うと、素材は潤沢にあるので普通のやり方でも良かったのだが……別のやり方を思いついたので、敢えてそちらのやり方で実験的にやってみたのだ。


 そのやり方とは、接着面を融合してしまえないか? というものだった。

当然過去にはそういった試みもあったらしいが、全て失敗か不完全という感じだったらしい。

しかし、私には普通ではない手法が幾つもある。


 思いついてしまった以上やらない訳にはいかないよね?

そんな訳で、どんな方法かは乞うご期待! と言う事で。


 …………まぁ、ぶっちゃけるとそこまで勿体ぶる方法では無いんだけどね!!!

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