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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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91◆亜人達による村周辺の迷宮探索2

 レックス達の装備を一通り作って寝たのが一時間半前。 

いつもは一時間程度の睡眠で済むのだが、流石に作りっぱなしだった為に疲労がそれなりにあったらしくて少し長い睡眠だったようだ。

一緒に寝ているリーナも丁度目を覚ました様なので、早速亜人部隊の迷宮探索を再開するとしよう。




 ☆ ☆ ☆




 亜人部隊とドールが第四層へ到着したので、すぐに探索を開始する。

この階層はまだ何も探索していないので何が出てくるか不明なのだが、正直に言えば若干嫌な予感はしていた。


 三層に今まで見たことも無かったブロンズ&カッパー、更にはスチール製のゴーレムが居た。

そこで考えられるのは、更に見たことも無い金属製ゴーレム。

次点で貴金属系ゴーレム。

三番目でアイアン&スチール製が大量出現。

大穴でゴーレム系じゃない魔物……と言った所か。

まぁ、恐ろしく適当な予想なのでそこまで真面目には考えてはいないのだが。


 ここで出た場合に問題なのは、やはり見たことも無い金属系ゴーレムであろうか。

まぁ、諦めてどこかに保管しておけばいいのだろうが、使い道が判らない物が大量にある事自体が何となく気分的に宜しくない。

かといって、使い道が出来た時の為に放置する事も出来ないという、このジレンマ。

困ったものである。


 そして、悪い方の予想が現実になった。

リチウムゴーレム。

ナトリウムゴーレム。

カリウムゴーレム。

ベリリウムゴーレム。

マグネシウムゴーレム。

カルシウムゴーレム。

ストロンチウムゴーレム。

バリウムゴーレム。

チタンゴーレム。

クロムゴーレム。

コバルトゴーレム。

ニッケルゴーレム。

ジルコニウムゴーレム。

…………いや、正直意味がわからないから!!!


 この階層のゴーレムは本当に酷いものだった……。

名前が素材名を表しているのだろうが、どいつもこいつも結局は同じ様に硬い。

魔法物質で強化されているせいなのだろうが、ならばここまで種類を揃える意味は! と、言いたくなる。


 因みに、カリウムとかカルシウムが金属分類なのかも私には判断できない!!

本当に意味不明です……。


 しかし、ここで気が付いた事が一つ。

こんなラインナップを揃えた所で、意味がわかる人間がこの世界に居るのだろうか? ……と。

そもそもどうやって出現させる事が出来ているのかと……。


 そこで一つ……これは、あくまで可能性の話だ。

しかし、私の中で芽生えた疑惑が大きくなる事は止められない。

……ここの迷宮の主は……異世界人なのでは? と……。


 そう考えると、とある仮説が生まれてくる。

この国の人間は多くが西洋系と言えばいいのか……色素の薄い人種だ。

しかし、私の生まれた村は思いっきり日本人に近い人種であり、私などは生まれ変わる前と全く同じ顔をしている。


 この村は何故生まれたのか……?

祖先が日本人だとすれば、十分に納得が出来るのでは……?


 この村の周辺にある迷宮は、村を包囲する形で存在している。

そのお陰で魔物から被害を受ける事が無い事を考えると、守っている様にもとれる……。


 そう。

私の考えた仮説とは、日本人……又はそれに近い人種の異世界人が自分の子孫の為に作り上げた安全地帯が私の故郷であり、迷宮はその異世界人の素材庫として機能していたのではないか?

そして、その異世界人は私よりも金属に詳しい人物であった可能性が高いのではないか?


 しかも、入れない石碑迷宮の中で今も存在している可能性があるのではないだろうか?

迷宮が存在している年数から考えて、不死の存在となっているか、封印などによる時間経過の停止が考えられる。


 あくまで可能性の一つでしかないのは理解している。

しかし……これは、真面目に迷宮攻略に取り組む必要があるようだ……。

もし主の件が的外れであったとしても、この異常な魔物の発生方法や使用方法が残されているかもしれない。

そう考えると、俄然やる気が出てきました!

よし、頑張ってみよう!!



 ☆ ☆ ☆




 魔法生物であるゴーレムにもMPが有り、オガ吉の《闇の魔手》が効く事は正直有り難い。

そのMPを使ってマツリとゴブ助にガンガン魔法を使わせて、熟練度上げに励ませていた。

オガ吉やミノ太にも開幕のブースト系は必ず使わせる事で熟練を積ませ、余裕がある場合は攻撃魔法も使わせている。

熟練度だけ上がっても、普段から使い慣れていないと本番でいきなり上手くは使いこなせない。

余裕がある今のうちに、是非とも使用感覚やタイミングに慣れて貰おうと言う訳だ。


 例えば、現在の戦いの場合、


『……私が前に出る。バリウムゴーレム三体を足止めするから、右のニッケルゴーレムをオガ吉が抑えて。ミノ太はゴーレムの前に《アースシールド》をばら撒いてから攻撃開始』


と言う、リーナの指示に従って戦闘が開始された。


 リーナの話し方はいつも通り淡々としているものの、最近はそれなりに感情の起伏が言葉にも見え隠れする様になってきていた。

どうしても話し出す時に若干の間を要するようなのだが、このままいけばそれも次第に改善される気はしている。

今は取り敢えず様子見のままで問題は無いだろう。


 さて、戦闘はリーナの指示通りに始まっている。

リーナは真っ白い姿で重鈍な動きを見せるバリウムゴーレムを前に、停止と加速を繰り返す事で軽々と翻弄してみせていた。

その動きに全く付いて行けないゴーレム達は、酷い時にはお互いを殴りあう事すらある。

リーナ自身がそれを誘発する場所でストップしているので、間違いなく狙っているのだろう。


 それにしても……何故にバリウムなのかと……。

私が飲んだ事はないが、前世の父さんからは毎年の様に健康診断で飲まされるバリウムについて聞かされてはいた。

バリウム自体よりも胃を膨らませる発泡剤が厳しいと言っていたが、自分では飲みたくないと思えるほどに良いイメージは全く無い。


 現在も、魔素で強化されたリーナの拳が一体のバリウムゴーレムの腕を吹き飛ばしているのだが、石膏とか白いチョークの塊にも見えるこの物体を保持するかどうかで悩んでいる最中だ。


 そして私は……考えるのをやめた!

使い道判んないんだもの!!

やっぱり、どこかにまとめて放置の方向でいい事にしよう!!!


 


 ☆ ☆ ☆




 おそらく、そろそろ四層も終盤に差し掛かっている。

上の三層分もそうであったが、この迷宮は正四角形の中に通路や部屋を構築している。

隠し部屋等を誤魔化す為という可能性がゼロでは無いとは思うのだが、今の所はそのルールにのっとって作られていた。

そして、もう少しで四層も正四角形のMAPが完成する事から、パターン通りならばボスが居るはずと言う事になる。


 正直、今更どんなゴーレムが来ようと驚く気は無い訳だが……この迷宮は私の予想を超えてくる可能性が高いので油断は禁物だろう。


 ……そんな訳で、ボスに到着した私は予想外の光景に驚きを隠せなかった!

まぁ、俗に言う、フラグを立てたら来るのは当たり前というやつだとも言える。


 ボスの名前はクイックシルバーゴーレム。

見た目としては、部屋の扉を開けると床が銀色の液体に浸かっていたのだ。


 《識別》結果としては、


ゴーレム族:クイックシルバーゴーレム:女 LV42

特殊情報:《液状化》


との事。


 この見た目は……おそらく水銀じゃないだろうか?

水銀がクイックシルバーだったかどうかは知らないのだが、ここは水銀だと考えて行動した方が良いだろう。


 全員にゆっくりと後ろに下がりながら準備をして貰いつつ過去の記憶を検索した結果、水銀については幾つか情報が得られていた。


 まずは固める為には何度程度が必要なのか?

テレビで得た情報からは、約マイナス39度となっていた。

うん、無理だな。


 次に毒性。

気化させると、肺が即不味そうな感じっぽい。

となると、火炎系や熱系はヤバそうかな。


 結論。

大量の《アースシールド》で防波堤を作りつつ、MPを削りきる方向で。


この方法は闇に耐性が無い相手にはとても有効なのだが、ルークにも昔言ったように効かない相手が出た時に対応出来なくなるのは不味いのだ。

ここぞという時だけの奥の手と言う事で。




 ☆ ☆ ☆




 現在、絶賛苦戦中です!

正直な感想……これは酷い!!

まぁ、苦戦とはいっても負ける要素は無いのだが……。

倒す事が、異常と言える程に面倒な状況になっていた。


 今回の敵であるクイックシルバーゴーレムなのだが、最初の対応は間違っていなかったと思う。

私とリーナが《スティールMP》でMPを吸い上げ、そのMPを使ってミノ太が《アースシールド》で幾重にも防壁を構築してこちらへの進行を阻止していた。


 問題は、クイックシルバーゴーレムの挙動が変わった時に起こった。

液体化していたクイックシルバーゴーレムが集まり、普通のゴーレムに見える姿へと変貌したのだ。


 今更対応を変えるのも面倒なので、そのまま押し切ろうとしたのだが……出来なかった。

私とリーナの使った《スティールMP》が突然反射されたのだ。


 その為、《ショートカット》を入れ替えて四連射で撃ちまくっていたので、その分を逆に連発で喰らってしまった。

ちょっと危なかったのが、魔法でMPを消費するのは私やリーナ本人なのに対して、ダメージを喰らうのはその場に存在しているドールの方なのだ。

その為、リーナが使ったぶんと合わせて《スティールMP》六発が一瞬で着弾し、ドールのMPがごっそりと持っていかれてしまった。


 意識の無い相手にも《侵蝕共有》が可能ではあるが、睡眠や気絶している相手を動かすのは相当なマイナス補正が入るらしく、まともな格闘戦は不可能とリーナが言っていた。

即ち、ここでドールに昏倒される事は撤退を意味する。

まぁ、今回は出直す事になるだけで、それほどリスクは無いとは思うんだけどね。


 さて、問題のお相手なのだが……再度《識別》した結果、


ゴーレム族:クイックシルバーゴーレム:女 LV42

特殊情報:《液状化》《魔法反射》


との事。


 グハッ!

これは酷い!!!

どうやら《液状化》状態では《魔法反射》が効かない為、先程は特殊情報から消えていたようだ。

もっとも、そこら辺の表記に関する仕様も統一されているのか正直怪しい……。

この、誰が表記しているか判らない情報を鵜呑みにするのは若干危険ではあるのだ。

とはいえ、担当者が居るならしっかり仕事しろ! とは言いたい。


 そんな訳で、現在は私とミノ太が《アースシールド》で周囲を囲んで移動を防ぎ、リーナが手に集めた魔素をクイックシルバーゴーレムに投げる事でダメージを与えている。

私がドールの肉体を動かせない為、こういう分担になったのは言うまでも無いだろう。


 そして、何故こんな面倒な事をしているのかと言えば、こいつの素材はどう考えても水銀なのだ。

即ち、水銀中毒が怖いの一言に尽きる。


 皮膚からの侵蝕があるのか私には判らないのだが、これだけの大きさの敵を攻撃した場合、どう考えても水銀まみれになることが目にみえている。

もし影響があっても解毒の魔法が効くとは思うのだが、出来るだけリスクは下げたいと言うのが本音だった訳だ。


 さて、リーナから放たれる魔素の塊が当たるとゴーレムを構築している液体金属はその衝撃で吹き飛ぶのだが、直撃を受けた部分は再度本体に合流する事が出来ていない。

余波で吹き飛んでいった部分は再集合しているのに……だ。

おそらく魔素の流し過ぎによる肉体崩壊と似たような状態になっていて、制御出来なくなっているのだろう。


 黙々と投げ続けるリーナに攻撃を任せ、私はゴーレムの様子を観察していた。

そこで気が付いたのは、動かなくなっった水銀らしき物が崩壊しない事だった。

因みに、調べ方は《識別》によるものだ。

ゴーレムの一部では無く、水銀という素材扱いになっている。


 魔法物質依存タイプの魔物は、魔法物質の供給が無くなる事で組織が崩壊する。

これに対して、亜人やゴーレムの様にエネルギーとして使う事は出来るが依存はしていないタイプも存在する。

基本で考えればゴーレムなので消滅しなくても不思議ではない。


 しかし、問題はこのゴーレムの場合……どう考えても普通のゴーレムと同じ仕様には見えない。

液状化や分散後の個別活動&再結合ができる時点でおかしいのだ。


 分離した身体の一部を再集合させている時点で、通常の制御システムでは有り得ない。

そこで予想していたのが、魔法物質を消費させながら全身の繋がりを把握・位置確認し、分離した部分が独自で動けるからこその再合流ではないかと考えていたのだ。


 この場合は全体でエネルギーを消費するだろうから、魔法物質依存タイプに近い事をして居なくては納得が出来ない。

しかしこいつの場合は、何らかの方法でその常識的な構造をしていない様だ。


 ……となると、こいつは何かに使えないだろうか?

そんな考えが浮かんでくる。


 まずは構造を調べて、もし解明が出来るようならば私のゴーレム作成に大いに役に立ちそうな気がする。

用途に合わせて形状が変化出来るならば、狭い隙間などにも入る事が可能であるだろうし。


 そして、もう一つの期待として、こいつもダークストーカーと同じように魔法物質さえ補給してやれば永久機関としての魔石作成に使えるのではないだろうか? という事だった。


 流体なので原魔石を中に入れてもダメージを受けないであろうし、今後の情報収集や研究を重ねる事により、特殊情報に表記される物を使用可能になるかもしれない。

私が元の世界に移動する為にそれらの技術が必要になる可能性もあるし、そこは本気で取り組む予定ではいる。

……であれば、《魔法反射》は確保しておいて損は無いだろう。


 ……うん。

ちょっと頑張って捕獲の方向で動いてみようか。




 ☆ ☆ ☆




 結果を言うと、クイックシルバーゴーレムの《迷宮の虜》化に成功した!

方法としては、リーナの移動迷宮を相手の背後に呼び、相手を後退させられる可能性がある攻撃を撃ちまくったのだ。

主に使ったのは風と水系魔法で押し、下がった分だけ《アースシールド》で隙間を埋めていく。

後半は面倒になって土系も使って物理的にガンガン押し込んだ上で、死なない様に回復魔法まで使用したのは気にしないでおこう。

因みに《魔法反射》は都合の良い効果を反射しないらしく、問題なく普通に回復していた。


 そんな訳で、手間はかかったがリーナの迷宮に押し込めてしまえばこっちのものだ。

即、《迷宮の虜》を使用して確保出来た。


 そして、そこで気が付いた事が一つ!

ボスを倒して居ない!!

……五層への直通エレベーターが使えないって事です!!!


 まぁ、いいや。

取り敢えずは移動用にリーナの移動迷宮をここに置いておき、明日ボスが湧いて居れば倒し、湧かないようなら素直に階段を降りて五層へ向かおう。


 因みに、置いておく移動迷宮の扉は入口側を壁にくっつけるように移動させた。

マスタールームの使用権限がある場合は裏側からでもマスタールームへ出入り出来る為、これで私達には問題が無い状態で他者の侵入は防ぐ事が出来る。

入られても、おそらく問題は無いんだけどね。


 さて、時間的にも丁度良いし、そろそろ切り上げるとしようかな。

では、今日の探索は終了!

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