表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第一章
10/138

10◆師匠のスキルと《ショートカット》の問題点

 今日は朝から師匠のスキル獲得にいそしんでいる。

仕事で使っている魔法は六種、火・水・風・土・光・変換魔法だ。

これに加えて錬金術。

今日の作業では使わないのだが、付与魔法も是非とも欲しい。

昨日の%が継続だったのでまずはチャレンジした。

魔法二種と錬金術が成功。

この調子で今日は獲得に向けて頑張っていく方向だ。




 ☆ ☆ ☆




 ギリギリとなったが、今日だけで何とか目的のスキルは揃った。

後は付与魔法なのだが、明日少しだけ見る機会はあるようだ。

もっとも、あって一回程度のチャンスなのであまり期待はしていない。

冬には確実に獲得出来るので慌てない事にする。


 この後の時間は色々試す事に決めていた。

ルークから得た《ウィンドウ》の情報を実際に確かめたり、今日得た魔法を使ってみたりする予定だ。

まずは《ウィンドウ》を触ってみた結果としては、事前に聞いていた通りに《ショートカット》は有効な物だった。

無詠唱で魔法を発動できるので、メリットは計り知れない物がある。

問題としては、これは勇者の《無詠唱魔法》の影響を明らかに受けた物だろう。

勇者専用スキルだと図書館で見た気がするから注意が必要だ。

……もっとも、《魂の回廊》を手に入れた戦闘で、仲間の冒険者に知られてしまったらしいし、いつまでも隠し通せないかもしれないが……。

まぁ、その時はその時で何とかするしかないと、覚悟はしている。


 次に調べたのは通称《裏ウィンドウ》と呼んでいる、スマートフォンの画面が元になっているだけあって、表の《ウィンドウ》を横に弾いてやると現れるページだ。

ここには《プレイヤーステータス》や《コンフィグ》と言った、戦闘と関係無い項目が並んでいる。

《プレイヤーステータス》には、名前や性別、年齢、称号と言った項目。

そして、


HP:生命力やレベルなどから換算される、総合的な身体耐久力

MP:精神力やレベルなどから換算される、魔法や一部のスキルの素

SP:複数の能力値とレベルなどから換算される、技や一部スキルの素


筋力値、生命値、精神値、知性値、敏捷値、器用値、神聖値


各種属性耐性


と言う表記やステータスが並ぶ。

レベルから換算されるって表記が幾つかあるのに何故かレベルの欄は無い。

《ゲーム》の時は自分にも敵にもレベルはあったのでその名残なのかな?

ちなみに、ここには驚愕の数字が記載されていた。


精神値:3000以上

MP :1500弱


……う~む。

精神以外のステータスは軒並み二桁前半だ。

HPは100も無い。

いくら最近魔法を学んでいるからと言って、これは普通じゃないな。

師匠からもMPが尋常じゃないと指摘を受けてはいたが、これ程とは……。

まぁ、精神に関しては予想はついているのだが。

おぼろげではあるが、女神がこの世界に召喚する為の条件が強い精神だと言っていた筈だ。

それを考慮すると、この結果でも納得はいく。

MPに関しては精神値から換算されるようだから、そういう事なのだろう。


 ルークは触っていないようだが、《コンフィグ》の中に《終了》の文字があった。

《終了》したらどうなるのか?

本来ならスマホの画面に戻るだろう。

だがこの異世界でそのままなのか?

それとも単に表示だけが残っているのか?

気になったので……はい、押しました。

丸っきり私が持ってたスマホの画面です。

まず、《通話》がある。

取り敢えず使えるか見てみると、ルークの名前があった! OK!

これで連絡がとりあえそうだ。

他には《表計算ソフト》、《日記帳》等。

《紅の剣》以外のゲームでは、《魔獣の牙城》と《ネクタリッサー》の二つのアイコンがあった。

正直な所、三つともずっと前に消したはずなんだけどな……。

私の記憶から再構成されているとしたら別に不思議でも無いか……。

そう納得して一応触ってみた。

グハッ!

何これ……《魔獣の牙城》アイコンに触れたら何故かMPを半分位持って行かれた。

もう一回触って昏倒とかは勘弁して欲しいので取り敢えず放置する。

最後に一応、触れたくないアイコンを押してみる……。

《日記帳》……………………よし! 特に黒歴史的な事は書いてない!!

おそらくだけど、ルークも見れるはずだ……。

姉の威厳を失う様な事を書いてなくて良かった!!!

さて、MPは半分程持っていかれているがまだまだ十分にある。

魔法に関しても色々試しておこう。


 結果から言うと……これは駄目だ。

《ショートカット》と言う便利なコマンド欄がある。

これは八個あり、事前に入れておいた魔法やスキルを自動発動できる。

通常詠唱が必要で、制御に失敗すると発動しないはずの魔法を100%発動できるのは魅力だ。

これは役に立つのだが、私的に肝心な所が駄目だった。

《ショートカット》に入れる事が出来る魔法は名称が決められた固有の物だけらしい。

自然魔法は元々《ファイアアロー》《エアシールド》等と言った固定の魔法を覚えていく。

それに対して変換魔法が不味い。

二つの属性を単純に掛け合わせる魔法は色々と使えるみたいなのだが、師匠が錬金術で使っているような微調整が全く出来ない。

《ショートカット》ボタンを押したら即効果発動なので戦闘的には使えるのだが、効果の調整部分がまるで出来ないので、折角の変換魔法がただの二属性融合にしかなって居ないのだ。

すなわち、今後私が試す予定だった多段階調整を行うタイプの変換魔法では全く役に立たない。


 ルークから聞いている聖眼獲得値の特性についても、今回の件に止めを刺す事になって居る。

このシステム、勇者育成の為のせいなのか、戦闘関連スキルは熟練度の上昇と共に技や身のこなし方等が自動習得できる。

しかし、生活スキルや直接戦闘に関与しないスキルは熟練度自体は上がって行くのだが、内容が伴っていかない為にチグハグな事になってしまうようだ。

錬金術も残念ながら後者なのだ。

私の求めている変換魔法の習得には、このシステムに頼るだけじゃ無理らしい。

……予定通りに春まで真面目に学ぶ方向で決定かな。


 そこからは色々な魔法を《ショートカット》から使いまくってみた。

通常なら熟練度が2も足りないと制御が難しいようだが、《ショートカット》では全く失敗が無い。

それどころか、普通は魔法の安定化と威力アップの為に必要な発動具すらいらない便利さは秀逸と言える。

自然魔法や単純変換魔法ではこちらは必須なので、私の今後の課題は各コマンドを『押す』速度アップかな。

昔からルークにやらせていた課題が、今自分に返って来ている状況だ。

まぁ、視線を動かさずに全体を見る練習は私もある程度はしている。

後は『押す』事を反復練習と言った感じになると思う。


 ……そこまで考えてふと思いついた事がある。

名前のある変換魔法しか《ショートカット》で使えないなら、自分で名前を付けてしまえ! 的な発想である。

三属性を使った変換魔法をまずは使った。

そのイメージを頭に描き、この魔法を《自動洗濯》と意識的に『名付けた』。

《ショートカット》から魔法欄を覗いたら一番下にありました。

OK。これで方向性は見えた!

ちなみに《自動洗濯》は、水魔法の水流操作と、同じく水魔法での油脂集積、そして土魔法による粉塵集積の効果を合わせた魔法だ。

完全に自動洗濯器からの発想。

更に言えば洗剤のCMで見た、汚れを落とすイメージそのものである。

集積効果だけだと上手く綺麗に集まらなかったので、水流を使う事で解決した私のオリジナル魔法の一つだ。

魔法はイメージに左右される所が大きいらしく、私の熟練度では厳しい筈のこの魔法は上手く機能している。




 ☆ ☆ ☆




 次の日にルークと話し合ったのだが、ルークは暫くの間、この間お世話になったパーティーに加わる事になったようだ。

唯一魔法物質が見える魔法使いさんが、無詠唱の事を知った上で誘ってくれたらしいので有りがたく話に乗ったとの事。

黙っていて貰える上、上手く話を合わせて誤魔化してくれるなら好都合だ。

それならば丁度良いので、私も春までこのまま予定通りに錬金術を学ぶ事を伝える事にする。

最初に口にした台詞は、


「やっぱすぐは無理ゴメン。地道に頑張るわ」


まずはおどけて、そう言っておいた。


「変換魔法自体は使えるんだけど、どうも全部の魔法は使えないみたいなのよ。その上、威力調節なんかも出来ない自由度が低い感じなのよね」


「変換魔法には有効じゃないって事?」


「《ウィンドウ》の処理自体の問題だと思うんだけど、自然魔法や技を使う時に《ショートカット》が確率を無視して決められた結果を自動成功させる様に、故意に別要素を割り込ませない限り変換魔法も決められた威力や範囲を自動決定するらしいのよ。これは変換魔法の自在性を殺してしまう結果になるって事ね。まぁ、打開策は見出しているから問題は無くなるはず。ただ、その為には錬金術だけは地道に知識を得ないと駄目なのよ」


ルークは納得してくれたので、


「まぁ、どっちにしても冬の間はそれ程慌てて動くこともないし、しっかりと錬金術の勉強しとくわ」


という事で、いままで通りを継続と言う結論となった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ