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リセット  作者: 若葉月
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現実

この世に起こり得るものに絶対などなく、偶然などなく、確実性など微塵もない。あるのは曖昧模糊としてとらえどころのない、必然ばかり。他人が経験したことがなく、あらゆる現代社会において起こり得ないとされたものが目の前にあったとしても、それを否定する材料は、どこにも存在しない。

毎日同じ日々の繰り返し。朝起きて飯食って学校行って帰宅し、飯食って風呂はいって寝る。単純な繰り返し作業。たったこれだけのことしかしていないのに、生きることは本当に面倒くさい。金銭問題、人間関係、他にも色々。なんでこんな面倒くさいことしながら必死に生きなくちゃいけないのか、ぼくにはまったく理解できない。

ごく普通の家庭に生まれて、三人兄弟の真ん中になって、容姿も学力も運動能力も平均的。突出した才能もなく、自堕落的に毎日を死んだように生きていく。ぼくは、こんなぼくに生まれたことを一番に後悔している。

周りを見れば生きることに疑問を持ちながら生きてる奴なんていないし、ましてや毎日死ぬことだけを考えているなんて、ぼく以外に見当たらない。みんな、それなりに生きている。きっと、なにも考えずに生きているんだろうな。無駄な考えなんて一切なくて、生きていくのに必要な知識とか意欲だけがあって…本当に、羨ましい。ぼくもそんな風に生きたかった。どこで、なにを間違えたのだろうか。

気付けばぼくは、こんなになっていた。生きていく毎日に嫌気がさして、勉強机の端を彫刻刀でめちゃくちゃに切り刻んだ。手首は目立つ上に言い訳も難しいから代わりに指を切った。死にたがりの癖に、体裁を気にして自分じゃ死ぬ勇気もなくて、妄想に逃げ込んだ。

交通事故、飛び降り自殺、通り魔殺人、病死。いろんなことを妄想して、様々な方法で自分を殺す。そうして、死んだあとには自分の望む通りの姿で転生するんだ。

まあそれも、最近はつまらなくなって本格的に死ぬことを望みだしたけど。本当に、なんでこんな面倒くさい人間なんだろう。もっと単純に生きたかった。

ぼくの親はごく普通の親だと思う。父親は警察官だけど、家族を大切にしていて休日には家にいる。家事も手伝うし、ぼくらと遊んでくれることもある。母親は専業主婦だったけど、最近はパートにでかけてお金を稼いでる。優しくて、悩み相談にも真剣に乗ってくれる。兄さんは二つ上だけど、高校を卒業してすぐに公務員になった。父さんと同じ警察官。けど、兄さんは事務の方にいったみたい。いわく、体力に自信がないからだそうだ。確かにスポーツマンという風ではない。弟は三つ下の中学一年生。生意気盛りだけど、一緒に遊びにいったり趣味の話をしたり、兄弟仲も悪くない。友達に話せば家族仲がすごくいいといわれる。ぼくにとっては普通の家族だけど、案外恵まれているのかもしれない。


「秋、ぼうっとしてていいの?遅刻しない?」


朝7時30分。いつものように起きて自分達で朝食を準備したあとに、携帯を弄りながら食べていたときのことだ。いつも母さんは心配して言ってくる。間に合うようにしているのだから、ほっといてくれればいいのに。けどそれは、やっぱりぼくのワガママで。心配してくれているのだから、そんな風に邪険にはできない。


「ん、大丈夫」


携帯の画面から目を離さずにそう答えるので精一杯だ。ぼくは、寝起きが悪い。

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