TIPE:2
(今回の傷は思ったより酷い。しまったな・・・明日から学校なのに。)
ディエトにも、ずいぶん心配をかけたと思っていると、部屋の扉をたたく音が聞こえた。すでに、午前1時を過ぎており、他人の部屋を訪れるには遅すぎる時間だ。
「誰だ?こんな時間に。」
「・・・俺だ、ディエトだ。怪我の具合はどうかと思って。入ってもいいか?」
訪ねてきた相手が、自分の相棒だと分かると、扉を開けた。
「心配性だな、お前も。大丈夫だといっただろう。それより、明日の準備はいいのか?朝になって慌てても知らないぞ、私は。」
「分かってる。準備は終わったから、様子を見に来たんだ。大丈夫そうだな、安心した。じゃあ、また明日な。」
そういうと、ディエトは部屋を後にした。まったく、何をしに来たんだか。まあ、よく分からないのはいつもの事だ。
「私もそろそろ寝るか。」
翌日、いつもの時間に目が覚める。もう習慣になってしまっているらしい。
「まだ、5時か・・・。仕方ない、散歩でもするか。」
簡単な服に着替え、部屋を出る。
5時といっても、なかなか明るい。血冥十字団本部は、団長の執務室を中心に左右にその他の団員の部屋があり、そこに併設して病棟が建てられている。血冥十字団に所属する団員一人ひとりには、個室が与えられ、必ずそこで暮らす事になっている。建物自体は、花が咲き誇る大きな花壇をコの字に囲っており、その花壇は、アークの一番のお気に入りだった。
「やはり、ここに来ると落ち着くな。」
花壇に腰かけくつろいでいると、ディエトがゆっくりと歩み寄ってきた。
「やっぱりここか。部屋に居なかったから、ここだと思った。・・・今日から学校だな。」
「ああ。早く学校になじめるといいな。でも、間違っても血冥十字団のことは言うなよ?私は、それが一番心配だ。」
「分かってるよ、十分気をつける。うぉ・・・もうこんな時間だ、朝飯行こう。」
血冥十字団での食事は、食堂か自炊だ。私たちは、朝食と昼食は食堂で済ませるようにしている。
「なあアーク、今日はここ何時に出ればいい?」
ディエトが朝食のサンドイッチを食べながら尋ねる。
「7時30分くらいに出ればいいんじゃないか?そんなにかからないだろう。入学式は9時からだから、入寮の手続きを済ませると、ちょうどいい時間になるはずだ。それと、ここを出たらアークと呼ぶなよ。紫龍 祐飛だ。」
「分かってる。俺の事も、紫勇 裕也だからな。」
血冥十字団内では、本名とは別に血銘が与えられる。任務で外に出た時、名前が分からないようにだ。
「でも、学校は初めてだから、緊張するな。というか、楽しみ?俺、うまくやっていけるかなぁ。」
「まあな。でも、どうなるかは自分次第だ。頑張るしかない。・・・そろそろ時間だ、行こう。」
こうして二人は食堂を後にした。
「祐飛!悪い待たせた!」
「裕也。大丈夫だ、行こう。」
二人は学校に向かい歩きだした。