大光(おおみつ)橋の下に死体があかったとさ
真夏の眩しい陽射しの中、安酒に酔いしれていた幸太郎。
だが、窓から差し込む光の隅で畳の影が不気味に揺らめいたとき、日常は一瞬で歪み始める。
鼻をつく生臭い水の匂い、失われた右腕、そして川面に浮かぶ謎の白い腕――。
逃れられない怪異の連鎖が、静かに幸太郎を侵食していく。
川面に浮かんだ白い腕。大光橋の下を覆う暗闇に息を潜め、警官の怒号と野次馬の雑踏を見下ろしていた。
事態はここから、最悪の方向へと加速していく。
幸太郎は、昼間から酒を飲んでいた。南側の窓を開け放って、強い陽射しを浴びながら。
川面に揺れるその腕は、水面に打たれた杭のようにぴくりとも動かない。指先が指し示す先――その暗闇の中で、誰かが幸太郎の気配に気づいたように、小さく息をのんだ。
幸太郎の視線が、開け放たれた窓から差し込む眩しい光の隅、畳の上に落ちる不自然な「黒い影」に止まる。影は真夏の陽射しを無視するように、ゆらりと蠢いた。
喉を焼く安酒の味に、生臭い水の匂いが混ざり始める。
畳の影がぬらりと立ち上がり、水滴を滴らせながら人の姿を成していく。
「探したよ、幸太郎」
掠れた声とともに、生臭い水滴が畳に落ちた。幸太郎は慌てて酒瓶を握り直そうとしたが、右腕に力が入らない。視線を落とすと、自分の右肩から先が丸ごと消えていた。
――川面に揺れる、あの白い腕。
橋の下の怒号が遠のいていく。幸太郎は冷や汗を流しながら、ようやく理解した。暗闇の中で息をのんだのは影ではなく、自分自身だったのだと。
「さあ、腕を返しにおいで」
影が手を伸ばす。真夏の眩しい陽射しは、一瞬で冷たい水底の色へと塗り潰された。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
真夏の青空と、ジワジワと忍び寄る禍々しい怪異。その対比を描きたくて筆を執りました。
幸太郎の失われた右腕と、川面に浮かぶ白い腕……一体何が起きているのか、この先の展開も楽しんでいただければ幸いです。
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