第7章 許可と図書館
第7章 許可と図書館
シルヴァナは長老の部屋へと案内された。隣には男が立っていた。アリスの父親だ。その視線は厳しかったが、敵意はなかった。
「話し合いの結果だ」と長老が言った。「お前はこの村に滞在してもよい。ただし監視下に置く。規則を破ればすぐに分かる」
「寝床は用意しよう」とアリスの父が続ける。「ここは安全だが、完全な自由ではない」
シルヴァナは静かにうなずいた。
「分かりました。規則は守ります」
その言葉のあと、二人のエルフの案内役が彼女の前に出て、歩くように促した。シルヴァナは村の曲がりくねった道を進みながら、宿泊用の部屋へと導かれた。
用意された部屋は小さいが、落ち着いた空間だった。木の壁には彫刻と生きた植物が絡み合い、ステンドグラス越しの柔らかな光が室内に広がっている。窓の外には森の広場が見え、風が葉を揺らしていた。そこには微かな魔力の気配も漂っている。
「ここで休める」と案内役の一人が言った。
部屋を見渡しながら、カヤは小さく眉を上げた。
「図書館のような場所はありますか?」
エルフたちは顔を見合わせ、ひとりが慎重に答えた。
「図書館はあるが、信頼された者だけが入れる」
カヤは穏やかに笑った。
「歴史や地理の本だけでも構いません。この世界を知りたいのです」
その言葉に、警戒は少しだけ緩んだ。
「そういった資料なら開放されている。ついて来い」
彼女は小さな書庫へと案内された。そこには整然と並んだ本と巻物があり、窓からの光と魔法の灯りが静かに空間を照らしていた。棚には「歴史」「地理」「動植物」「魔物」と分類が刻まれている。
カヤはゆっくりと棚を歩き、地図の巻物を手に取った。広げると、山脈、川、森、そして国境線が古い羊皮紙の上に描かれていた。
時間は静かに過ぎ、やがて図書館は夜の色に沈んでいった。魔法の灯りだけが本棚を照らし、静寂が満ちている。
そのとき、背後から穏やかな声がした。
「そろそろ休む時間です」
カヤが振り返ると、若いエルフたちが数人立っていた。彼らは好奇心を隠さずに彼女を見ている。見た目は若いが、エルフの基準では七十年以上の年齢で、まだ子供に近い存在だった。
そこへ案内役のエルフが戻ってきて、空気が少し変わる。
「やめなさい」
落ち着いた声だったが、有無を言わせない強さがあった。
若いエルフたちは名残惜しそうに視線を残しながら、ゆっくりと本棚の間へ消えていった。
案内役はカヤをもう一度確認すると、小さくうなずいた。
「部屋に戻る時間だ」
カヤは静かに息を吐いた。今日は情報が多すぎる。抵抗する気力もなかった。
彼女は素直に立ち上がり、部屋へと戻った。
そしてベッドに横たわると、すぐに意識は沈んでいった。




