第5章 長老との対話
第5章 長老との対話
シルヴァナは村の長老の家へと案内された。
部屋は広く、高い木製の梁と彫刻の施された柱が並んでいる。
壁には古い巻物や魔法の紋章が掛けられ、ステンドグラス越しに差し込む柔らかな光が、空間に温かな雰囲気を与えていた。
長老は彼女の向かいに座り、静かに顔を観察している。
その視線は鋭いが、敵意はない。むしろ慎重さと興味が混ざっていた。
「あなたは何者だ。そしてどの村から来た?」
長老は穏やかに、しかしはっきりと尋ねた。
「ここに来るのは……六千年ぶりになる」
シルヴァナはわずかに言葉を詰まらせた。
「私はどの村にも属していません」
彼女は落ち着いた声で答える。
「一人で旅をしています」
長老はわずかに眉をひそめたが、話を続けた。
「では、年齢は?」
その問いに、シルヴァナは一瞬考え込む。
答えるのが難しい問題だった。
今の姿では、彼女はおよそ二百五十歳に見える。
エルフはおよそ二百五十年で成人とされる種族。
つまり外見だけで見れば、彼女は完全に“成人したエルフ”だった。
だが実際の中身は違う。
アンドレイとしての人生は二十四年。
そしてこの世界に来てからは、まだ五週間ほどしか経っていない。
彼女は軽く微笑み、違和感を隠すように言った。
「……百五十歳です」
長老の眉がわずかに上がる。
明らかに驚いているが、彼女の外見を見て納得もしている様子だった。
「なるほど……」
長老は静かに呟いた。
そして少し身を乗り出す。
「では、あなたはどこから来たのか?」
シルヴァナはその視線を真正面から受け止めた。
心の奥に小さな緊張が走る。
ここでの言葉は軽くない。
一つの答えが、その後の扱いを決める可能性があった。
彼女は慎重に言葉を選ぶ。
「私は……一人で旅をしています」
「知識と経験を求めて」
静かな声だった。
長老はしばらく黙っていた。
そして、何かを記録するかのように、ゆっくりと頷く。
まるで一つ一つの言葉の重さを測っているようだった。




