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マンションスキルがあるので廃籍されても構いません  作者: 風と空
第一部

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閑話 ある従者の独り言 グエル視点

 私は、ボルグド殿下の従者を務めているグエルと申します。


 今回は私の上司について語らせて頂きますね。


 私の上司で有り仕えるべき方ボルグド殿下は、王家の中でも変わり者です。


 気に入るならば立場がどうであれ自分の側に置きます。孤児や流れの冒険者を、自分の護衛として育てる王族が何処にいるでしょうか?


 そもそも殿下は第三王子という立場もあってか、早くから兄君殿下達を立てる道を選んだのです。王位継承権からは既に外されていますからね。


 そして外交を学び、騎士団長となり、下々の者と酒を交わし、冒険者としても登録されている変わり者です。失礼、これは殿下自身がおっしゃっているお話ですから。


 何を隠そう私自身、孤児から引き上げられたのです。私は殿下にも臆せずに向かっていく大胆さと判断力の速さが目に止まったらしいですね。


 ええ、勿論死ぬほど努力しましたよ?そして殿下に召抱えられた者達は同じように努力をし、今殿下の側にいる訳ですけど。


 殿下の親しみ易さがそうしているんでしょう。どうも殿下に対して気安く接しすぎなのが気になります。……まあ、言っても両者共聞かないのですが。


 失礼、どうもすぐ愚痴が出てしまいます。ええ話を続けましょう。


 殿下のお変わり様は、王家の皆様にとっても当たり前のことなんです。


 どうやら、ご幼少期から新しい物や古代遺物の研究がお好きなご様子だったそうで、変わったものには飛びつく傾向がおありだったそうですよ?


 殿下らしいと言えば殿下らしいですね。


 でもここ最近の出来事で言えば、アラタ様の事でしょうか。


 ……正直言って、初見のアラタ様御一行は疑わしいの一言でした。


 明らかに貴族の子供が、従者とメイドだけで旅をしているんですよ?それも回復魔法を使える貴重な子供です。大抵の貴族であれば、そのような子供をきっちり囲っているでしょうに。


 疑うな、という方が無理でしょう。


 それにもう一つ。ウェルダント国は一見平和大国とはいえ、水面下では他国と国境の利権争いが発生しています。主に、他国から干渉されるのですが……こちらはいい迷惑です。


 そんな中、ゼリース国(アラタ様とお会いした国ですよ)の内部状況が揺れているのをウェルダント国が入手しました。


 実は、アラタ様にお会いした時の殿下はその確認に動かれていた最中だったのです。


 はい?薬草ですか?それも真っ当な理由の一つですよ?現王殿下のお体の為に必要な、よく効く腰痛の薬草だったのですから。


 まあ、薬草は建前ですね。おかげで殿下が部下を庇い毒と傷を受けたわけですけど……アラタ様御一行から助けて頂けたのは幸いでした。


 その時に、また殿下の興味が湧いてしまったのです。そう、アラタ様が珍しいスキル持ちであるが故の興味が。


 まぁ、『マンションスキル』なんて規格外の能力とは思ってなかったわけですけど。


 そしてご存知のように、殿下はアラタ様御一行を馬車へと引き込まれましたが、一癖ありそうなメイドがなんと看破持ちだそうで、殿下を信頼出来るとみなしたそうなのです。


 逆にあちらから提案を快く受け入れた後は、殿下でさえ驚く事が多すぎました。


 なんですか?このあり得ない空間は?


 は?こんな精巧な造りの居住区なんて王家仕えでも初めて見ますが?


 え?これがアラタ様の『マンション』スキル?


 こ、これは……!『勇者録』に記されていたあの日本酒なるもの……!

 

 私はこの時点で殿下の顔をバッとみましたら、どうやら殿下も気づいていた様子。頷いて、目で黙っているようにと言われました。


 ………成る程。私どもは散々殿下から聞かされていたあの事例に当たったという事でしょう。


 ならば詮索は無用。騎士達にも伝えておきましょう。この案件は殿下のみならず、王家預かりになる事を——




         *****




 ———とはいえ、アラタ様の提供する居住空間は快適過ぎます。おかげで騎士達がすっかり骨抜きにされてしまいました。


 「グエルさん!俺、ここにずっと住みてえわ!」


 ある日の宿泊中、一人の騎士が私の下にお酒を持って現れます。


 まあ、この騎士は明日は非番なので良いですが、本来の遠征中ならあり得ない行為です。酒はめっぽう強いので、私は頂きますけどね。


 「スレッド……そういえば、貴方綺麗好きでしたね。この空間は貴方の理想でしょうが、わきまえなさい。殿下ですらその提案はされてませんよ?」


 「わかってますー!だけど、人間知ってしまったらもう駄目っすね。ケインの奴、朝起こすのが更に面倒になりましたし。クライブに至ってはもう野宿に戻るのが苦痛でしょうがないみたいっすよ?俺だけじゃないですからね」


 「仕方がない連中ですね……」


 「ああっ!そんなスカした顔して!グエルさんがめっちゃ気に入っているじゃないっすか!トイレとか風呂とか!俺知ってますよ?一日に何回も風呂を利用しているのを!」


 「使用可能な物を規則正しく使わせて頂いているだけですよ。スレッド達の方が問題でしょう。……幾らお金を使ったんです?」


 「うっ!だって遠征っすよ?コレ。そんなにお金持ってる訳がないじゃないっすか!」


「だからと言って、殿下からお金を借りるのは問題あると思いますが?」


「殿下から金貸してくれるって言ってくれたんですー!それに銀行?って言う便利な金貸しが出来たじゃないっすか」


「ええ、ウェルダント国騎士団が担保ですからね。フェイさんも抜け目ない……!」


「あーフェイちゃん……可愛いのに隙がないっすよ、彼女」


「当然でしょう。彼女人間じゃないんですから」


「うえええ!!!なにそれ、初耳っすよ?」


「アラタ様のスキルでお作りになったそうですからね。御本人が得意げに話していましたよ?」


「げっ!そうだったんすか!?やっべ、シェインの奴本気になってるわ!グエルさん、俺ちょっと行ってきます」


「あ、コラ!フェイさんに迷惑をかけてはいけませんよ!」


「大丈夫っす!その辺は俺らもわきまえてるっすよ!」


「全く……わかっているのだろうか……?」


 『勇者録』によると、騒がれるのを嫌うのが『ニホンジン』だそうですからね。


 さて、我らが確信しているこの情報を、いつアラタ様が開示して下さるでしょうか?


 楽しみですね。

アクセスありがとうございます!

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