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マンションスキルがあるので廃籍されても構いません  作者: 風と空
第一部

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ちょっと休日とスキルの変化

 盛り上がりに盛り上がった昨日。


「ちょ、この料理めちゃくちゃ上手い!」


「すっげー便利!冷たいものをあったかく出来るんだな」


「うー……このクッション柔らか過ぎる……!」


「あーさっぱりしたー!」


「このベッド一階と一緒か?」


 実際に利用するなり、殿下や騎士の皆さんはとにかく部屋にあるものに感動するわ感動するわで賑やかだったんだ。


 そして、やっぱりTV画面に釘つけだったみたい。


「うーわ〜、酒ってこんな種類あんのかよ……」


「ともかくエールだ、エール!」


「待て、一種類ずつ買って試飲会をしないか!」


「「「良いねえ」」」


 騎士とはいえもはや態度も素になり、みんながリラックスした雰囲気になっていたんだ。


 ……だからだろうね。



「おはよう、フェイ」


「おはようございます、マスター」


 僕がベースルームでいつも通りに起きて、フェイの朝ご飯を食べていても、ゲンデが来なかったんだよね。


 あ、ゲンデはフェイが来てからは、専属護衛志願に変わったんだ。なんたって僕にはメイドのようなフェイがいるからね。


それに、ゲンデ、僕と違って自分の事は自分で出来るから。


「ゲンデ来ないねぇ。いつもなら鍛錬した後顔出しにくるのに」


「どうせ飲み潰れているのでしょう。マスターが気にするほどではありません。さあ、気にせず食事を続けて下さい」


「うん、わかった」


 確かに、と思った僕がサンドイッチとポトフ、サラダを食べ終わると、コーヒーを淹れてくれるフェイ。


 因みに、フェイは食べなくても良いんだって。それでこんなに美味しいものが作れるのってすごいよねぇ。


 僕がコーヒーを飲んでほう……と一息つくと、フェイから報告があったんだ。


「昨日の売り上げと魔力により、マンション設備が追加されています。ご確認をして頂けますか?」


「あ、やっぱり入居者増えたりすると設備増えるんだね」


 どれどれと言ってステータスを見てみると増えていたのは……


 現在使用可能

[居住区]

 ・ベースルーム(2LDK/トイレ/バスルーム付き)

[設備/追加居住マンション]

 ・オートロック 取得済み

 ・宅配ボックス 取得済み

 『大型スーパーマーケット 取得済み

  ドラッグストア     取得済み

  家具・寝具       取得済み

  電化製品        取得済み

  コンビニ        取得済み 

  アパレルショップ    MP 40,000←NEW!

  コインランドリー    MP30,000←NEW!』

 ・低層マンション[2階建て 1F ワンルームタイプ/2F 2LDK 全戸数20戸] 取得済み

 ・マンションコンシェルジュ 取得済み

 ・分譲マンション MP700,000

 ・マンションカスタム MP800,000

 ・ゲストルームフロア MP 200,000←NEW!

 ・テナント(空)    MP 150,000←NEW!



「あ、服屋入ってる!コインランドリーも!ゲストルームフロアも良いね!でもテナント(空)?」


「はい、テナントに関しては、どんなお店を始めるにしても対応できる空間の事です。テナントだけ出現させる事も出来ます。アラタ様がお店を始めるのも良いですし、住民の皆さんが初めても構いません。但し契約料は発生します」


「へえ、そっか。じゃ、ゲストルームフロアって具体的には?」


「マンション住民の家族や友人が遊びにくる時に利用出来るフロアですから、スイートクラスが2部屋、ファミリータイプが2部屋、シングルタイプが3部屋ご用意しております。更にシアタールーム、パーティールーム、フィットネスルーム、プールも各追加MP100,000で設置可能ですね」


「うーん。殿下の庇護下に入ったし、王族が泊まりに来る確率は高いよね。これが優先かなぁ?」


「おそらく。それにマスターのこの能力は今後、遠征や領地巡回や大規模討伐時、更には他国訪問時に有効利用される事が予測されます。マスターはどこまで協力できるかをあらかじめ決めておく事を推奨します。例えば戦時下における協力もなさいますか?」


「う“っ……やっぱりそうだよねぇ」


「マスターさえいれば食料の安定供給、輸送の経費削減、宿舎の心配は不要となります。王族は各町にお金を循環させる必要もあるので、マスターが主に活躍するのは戦争時が一番でしょう」


「でもさ……フェイが勧めたくらいだから、ヴェルダント国って戦闘的な考えは持ってないんでしょう?」


「はい。ですが万が一という事も考えておくべきです」


「うん、わかった……殿下と話し合うよ。それよりもゲストルームフロアやっちゃおうか!」


「畏まりました」


 フェイが了承した途端にズゥ……ンと振動が起こり、しばらくすると、バタバタバタバタ…!と走って来る音が聞こえてきた。


「アラタ!無事か⁉︎」


 バタンッと玄関を開けて入ってきたゲンデ。


「……ゲンデの方が大丈夫?」


 ゲンデはどうやら二階の殿下の部屋で騎士さん達と雑魚寝をしてたみたいだけど、顔が青白い。


「マスター、大丈夫ですよ。二日酔いです。ゲンデ、そのなりでよく動けました。その点だけは褒めましょう。後は護衛として減点です」


「そういうなよ、フェイ。……これでも結構断って飲んでたんだ……ウグッ」


「サッサとトイレに行って吐いて来て下さい。マスターが新しいフロアを設置しましたので、確認に行きますよ」


「りょ、了解……!」


 バタンとトイレに入ったゲンデ。吐いたら幾分か気分がよくなったのかリビングのソファーにドサッと座る。


「う”〜、怠い」


「ゲンデはここで休んでる?僕達だけで行って来るよ?」


「いや、行く」


「無理しなくとも私がいるので必要ありませんよ?」


「フェイってば。ゲンデで揶揄わないの。それにマンション内は保険かかっているから大丈夫だっていってんじゃん」


「私からマスターのお世話を取り上げないで下さいませ」


「同じく」


 ……結局、二人共僕には甘いんだよなぁ。今だって気持ち悪そうなのに、ゲンデは僕のそばにいるし、フェイは当然のようにいつもいてくれるし。


(寂しさや不安がないのは、この二人がいるからだよなぁ)


 改めて二人に感謝しつつ向かった先は、一階と二階の間に出来たゲストルームフロア。


 中二階とはいえ、天井は高いし、通路も広い。スイートルームがあるからなのか、壁や床は凝った作りになっており、部屋もまた明るい雰囲気で気持ちいい。


 ただ、家具はまだ入ってない為、まさにモデルルームだ。


 スイートルームは、王族の事を考えていたせいか、ホテルのインペリアルスイートルームにそっくりだった。


 なんとエントランスルームの右隣がパーティールーム。左隣に広いリビング。リビングの奥に主寝室と客室。お風呂は大型。トイレはエントランスルーム、主寝室、客室、脱衣場に各一つずつという贅沢仕様。


「すっごい広い……!これなら王族も問題ないんじゃない?」


「家具の配置はお任せ下さい。ええ、これから潤沢に入ってきそうですから」


「フェイ、怖いって……」


 騎士団や殿下から巻き上げる気満々の笑顔のフェイに、ゲンデがちょっと引きながらツッコミを入れる。


 うん、まあフェイに任せてたらいい部屋出来るだろうし、と僕は気楽なもの。


 「あ、オーナーのベースルームも、今を持ってこの間取りと一緒になりましたので、ご自由にコーディネートをお楽しみ下さい」


「え?そうなの⁉︎……でもフェイに任せるよ」


「畏まりました」


 何やらゲストルームよりも気合いが入ったらしいフェイ。ほどほどでいいんだけどさ……


 あとは、ファミリールームは二階と同じ2LDKだった。やっぱりこのくらいの方が馴染んでいるんだけどなぁ。


 なんて思って通路に出たら、ポーンとエレベーターの音がして、キョロキョロしながら殿下と騎士さん数名とグエルさんが降りてきた。


「ア、アラタ!これは一体どうなっているんだ……⁉︎」


「ボルグド殿下おはようございます。えっと、これからの事考えてゲストルームフロア作ったんですけど……」


僕が日本人特有の笑って誤魔化そうとすると、また頭を抱える殿下。


「こんな簡単に作れちまうのかよ……」


 騎士さん達はあんぐりと口を開け、グエルさんも驚きつつもフェイに詳細を聞きに行っている中、正気に戻った殿下は僕の肩を掴んで言い聞かせる。


「しばらく、お前は王家預かりとさせてもらうぞ。じゃなきゃ、他の貴族に使い潰されちまう。俺の庇護下で牽制出来るのもこの分だと僅かな期間だな。……どうだ?アラタ、うちの国専属にならないか?勿論、お前の意思もきちんと汲もう。対価も払うし、お前に無理はさせないと誓おう」


真剣な表情で僕に尋ねる殿下。


「下心はないみたいですよ?」とフェイが口を挟むと「んなものねえよ」と殿下が言い返している。


 んー……僕は大家みたいな事して安心して暮らしたいだけだからなぁ。殿下も命令や上から目線もしない良い方だし、上客つかんだと思えば良いわけだし。


 そう思ってチラッとフェイとゲンデをみると、フェイはにっこり笑いゲンデは頷いている。


 よし。予定通り殿下達を骨抜きにしよう。


 「殿下、そこまで考えて下さりありがとうございます。僕の意思も尊重してくださるなら、よろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げる僕の様子に喜んだのは、殿下の後ろに控えていた騎士さん達。


「っし!遠征が楽しみになってきたな」

「いや、普段使いもお願いしたいくらいだぜ」

「あ、特に買い物な」


 なんて言いながら殿下に頼みますよーと願いでる様子に、僕はこの人達なら大丈夫だな、と安心する。


 殿下も殿下で「これ知ったら確かに離れ辛いわな」と何か考えていた。そんな殿下の様子に、これはお金や魔力を頂けるチャンス、と考えているフェイ。


 笑顔の笑みが深くなった気がしたのは、気にしないでおこう。


 こうなったら、シアタールームも作っちゃえ!と勢いで行動した僕。また殿下を驚かしたらしい。


 でも暇だったから悔いは無い。


 早速覗いてみると、シアタールームというには大きな50人収容のゆったり座席付きの部屋。早速フェイにお願いして放映してもらったのは、パニック映画の定番。恐竜が暴れる映画。


 殿下達ももう原理を考えるのを放棄したのか、全員が集合して素直に座って見てたけど反応が面白かった。


「くそっ!後ろだ後ろ!」

「きたっ!逃げろっ!」

「そこだ!行けっ!!」

 

 ワーワーギャーギャー言いながら本気で見るみんなの様子の方が僕は面白くて、ずっと笑っていたんだ。


うん、毎日こんな感じなら楽しいね。

アクセスありがとうございます!

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