マンションダンジョン初登場!
あの後———
僕がなんとなく気持ちの切り替えをして、和太鼓を見に行くとそこはもう住民達や騎士達が詰めかけていたんだよね。
でも、うちのAI達が頑張ったのか、ステージは馬鹿デカい櫓を組んでいて高さもあったから、どこからでも見えるようになっていたんだ。
そして、時間になって始まってからはすごかったんだよー!!!
ドオォン!という太鼓の音と共にライトアップされたダルク様が登場して、さらに太鼓の音と共にノビアさん、キュナさん、パトラさん達女性騎士団が次々と登場して来たんだ。
一人現れるごとに黄色い悲鳴と男達からの声援が凄くてねぇ……思わず耳を塞いじゃったよ。
そして始まった演奏はソロパートから始まり、徐々に人数を増して行く重奏に観客も引き込まれていったんだ!
最後のパートの一矢乱れぬ演舞や太鼓の技術に圧倒されてたなぁ!ほんっと太鼓の音って心に迫ってくるよね!
演奏が全て終わった後の会場は、太鼓の迫力故に静寂に包まれていたけど、すぐにそれが観客の感嘆の叫びに変わったんだよ!
ノビア様達が笑顔で騎士の礼で応えた姿はかっこよかったなぁ。
その後は、商店街AIスタッフ演奏による参加型の踊りが始まってね。みんなこの時間を思いっきり楽しんだみたい。
他にもスタンプラリーやなぜか男女お見合い企画も飛び入りして盛り上がった盛り上がった!
おかげで盛況のうちに慰労会は終わり、次の日からの辺境伯領復興に気合いが入ったみたい。
うん。あんな事があった後なのに、この世界の人達は逞しいね!
………………でもさ。いくらなんでも、これは想定外だったよねぇ……
「ぎゃはははははははは!!!ダ、ダノン……!お前、その格好って、ブハッ!!!」
地面で笑い転げるボルグド殿下の前には、着ぐるみを着た父様。着ぐるみの口の中から見えるダノン父様は、遠い目をして現実逃避中って感じだね。
「……まさか早くもここでドラゴンとは……」
いやいや、ダノン父様。それ、ゴ◯ラだから。というか、共通しているのは最強種ってところぐらいだし。
「もう!一階層から七階層までは魔物も仲間なんだからね!」
そして、ゴ◯ラ着ぐるみ姿のダノン父様の隣でぷりぷり怒っているのは、ビスクドールの様に華麗な姿のマンションダンジョン専属AIなんだ。
本人曰く性別は雄。しかも、このダンジョンを管理するユグドラシルの樹の子供らしくかなり整った顔なんだけど。
……クラシカルメイド服姿なんだよねぇ。
余りにも似合い過ぎて僕、思わず確認ちゃったもん。「本当に雄?」って。
「あー……うん。なんかごめんね、ヤミン君」
「ぶあっはははは!!!は、腹いてぇ……!!!」
マンションAIって個性強いなぁ……なんて思いつつヤミン君に謝るも、地面を転げ回って笑うボルグド殿下の気持ちも分かる。
ゴ◯ラの着ぐるみがダノン父様のイメージにピッタリなんだ。
あ、この着ぐるみもヤミン君がダノン父様に罰として着せているんだよ。攻撃力が10分の1になる付与付きなんだって。
罰の理由?それがねぇ……
慰労会の日にダンジョンに突撃したダノン父様ってば、詳しい説明を聞かずに突撃して行ったらしいんだ。
いや、それは本来のダンジョンであったら普通かもしれないけど、ヤミン君にとっては仲間だからねぇ。ダンジョン内だからリポップするとはいえ、ルール無視は許せないんだって。
あ!そういえば、今がいつで何処にいるか説明してなかったね。
ごめんごめん。余りの光景に説明が遅くなっちゃった。えっとね、今は慰労会の次の日なんだよ。
で、今居る場所はマンションダンジョン一階層の草原ゾーン。草原ゾーンとは言っても木もあるし、花も咲いてて長閑な雰囲気なんだけどね。
それで、今ここに居るのはいつものメンバーである僕とゲンデとフェイに、ダノン父様とボルグド殿下とマンションAIのジム。
それに加えて、ミルリック王子に久しぶりに登場のサンタリア王太子殿下と数名の騎士達と新たなマンションAIスタッフのヤミン君なんだ。
更に、なんでサンタリア王太子殿下までいるのかって思うよね。それはね———
「まさかダノンのこの様な姿が見れるとは。ミルリックに頼んで連れて来て貰った甲斐があったよ」
「サンタリア兄上もよく言うわぁ。私をダシにした様なものじゃない」
「ふふっ。これでも王太子だからね。ダンジョンに行くにはしっかりとした護衛じゃないと許可がでないからねぇ」
「もう!だからっていきなり視察に行きたいからって呼ばないで頂戴!折角有意義な時間を過ごしていたのに!」
「ああ、それについては謝ろう。ただ時間が取れたのがこの日だったのでね」
「全く………!この兄は融通が効かないし、弟は頑固だし!間に入る私をもっと労わってくれてもいいのよ?」
プリプリと怒るミルリック王子。その手にはダノン父様に着せる変えの着ぐるみがあるんだもん。呼ばれるまで充分に楽しんでいたと思うけどなぁ。
あ、因みにミルリック王子の部下さん達も隠れて居るらしいよ。ミルリック王子も王族だから一人じゃ動け無いし。
それにね。今回の王太子殿下の訪問理由は、表向きには新たなダンジョンの視察なんだけどね。
だったら、王太子がわざわざ来る必要ってないと思うでしょ?
あ、どうやらヤミン君がダノン父様にまだ説教中だし、そのまま聞いてみよっか。
「もう一回説明するからね!僕のダンジョンは1階層から7階層までは戦わなくて良いんだ!もし暴れたいなら8階層からにして!そこからだったら戦闘用にちゃーんと魔物作っているんだから!」
「いや、だが………キングキラービーが大群で居たら危ないだろう?」
「だーかーらー!最初に言ったでしょう!まだ戦うなって!!!僕のビーちゃん達を良くみてよ!こんなに可愛いのに……もう!怖がっているじゃん!」
……いやいやいや。ヤミン君には悪いけど、此処は僕もダノン父様に味方するかなぁ。
だって、キングキラービーって体長一メートル越えのオオスズメバチみたいなものだよ?それがダンジョン入ってすぐの一階層で群れで居たらねぇ……
うん。撲滅させたダノン父様の反応が本来は褒め称えられるだろうけど、いかんせん此処はマンション産ダンジョンだからね。
「ビーちゃん達には、ハチミツとローヤルゼリーの供給を頼んでいたのに……!あれ、ウチのダンジョンでも作るの時間かかるんだからね!」
「む……それは失礼した」
殊勝な態度でダノン父様がヤミン君に謝っているけど、ジムも止められない速さだったって言うんだからダノン父様らしいよね。
これで分かったかな?このマンションダンジョン産ローヤルゼリーとハチミツがまずは王太子殿下がわざわざ赴いた理由の一つ。
最上級の甘さと品質に加えて、マンションダンジョン産は疲労全回復も付く物だからウェルダント王家が買取を優先させて欲しいらしいんだ。
僕としても、ウェルダント国での流通破壊はさせたく無いからこの案は是非!ってお願いしているんだ。
って……あれ大丈夫かな。
脳内説明している僕の目の前で、ボルグド殿下が笑い過ぎて痙攣している様に見えるけど……よっぽど笑いのツボに入ったんだろうなぁ。
そんな殿下に一匹のキングキラービーが水持って来てるし。ん?僕にもくれるの?おお!優しいねぇ、君達。
ちらっと横を見ると、サンタリア王太子殿下とミルリック王子にも届けてくれてる。……ダノン父様には無さそうだけど。
「おや。私にもくれるのかい?ありがとう」
「サンタリア兄さんのはちょっと貸しなさい。………うん、大丈夫そうね」
サンタリア王太子殿下の水を一口毒味したミルリック王子。そんなミルリック王子を王太子殿下が呆れて見てる。
「ミルリック。お前も一応王族だと言う事を忘れてないかい?」
「良いのよ。私の場合確認済みなんだから。あら、美味しいじゃない!」
一応ダンジョンとはいえ、マンション内だから危険は無いけど形式は守るんだね。王族って大変だ。
それにしても、此処で飛び回っているのは働きバチなんだね。ゲンデや騎士さん達や姿を隠している筈のミルリック王子の部下さんにまで渡しているもん。
あー……ミルリック王子の部下さん達、苦笑いして受け取ってるよ。えっと、なんかウチの子達がごめんなさい?
「っっはあ!!!美味え!これハチミツとレモン入ってね?」
どうやら飲み干してようやく笑いが止まったボルグド殿下。ハチミツレモン味だったのが気に入ったのか、胡座を組んでおかわり頼んでいるよ。
こうして居ると、ボルグド殿下も大概王族に見えないね。
「ボルグド、いい加減起きなさい。王族としての打ち合わせも兼ねているんだ」
「はいよ。了解っと」
サンタリア王太子殿下に注意されてようやく立ち上がり、ポンポンと身体に付いた草を払い落とすボルグド殿下。流石に表情も真面目になったね。
実は、今日の本題はこっち。マンションダンジョン内は、身内でも限られたメンバーだけに伝えるのに打ってつけなんだよね。
なにせフェイの目とヤミン君の目があって情報漏洩の心配は万に一つも無いし、何よりヤミン君の力でダンジョン内で外の目的の座標の現在の様子が分かるんだ!
見た感じ、異世界版のグー◯ルマップってとこかな。
だから僕らの前には、ヤミン君が出してくれたウェルダント国の詳細な地図があるんだよ。
「さて、アラタ達も良いかな?此処からは極秘事項だ。例の案件を議会がようやく可決してね。アラタ達には我が国の防衛ラインのティグロンとベッセリフに向かって貰いたいんだ」
真剣な表情で僕を見るサンタリア王太子殿下。その表情はちょっと申し訳なさそうにも見えるね。
「へえ………ティグロンとベッセリフとはねぇ。アイツら良く頷いたもんだ」
「ボルグド殿下?」
意味深な殿下の言葉に思わず話に割って入っちゃった僕。ボルグド殿下は「アラタは分かんねぇのも当然だ」って僕の頭にポフッと右手を置いて教えてくれたんだ。
「ティグロンとベッセリフの領主はちょっと変わっていてなぁ……アイツら自分で見て納得しないと王族からの指示でも頷かない奴らなんだよ……」
「あらぁ?私の同期を変わった者扱いしないで頂戴。……少なくとも国への忠誠はあるわよ」
「まあ、ミルリックの幼馴染だけあるよね」
「ちょっと!サンタリア兄上?」
「それはともかく、出来るだけ早くお願い出来るかい?……我が国での被害はもう出したくないからね」
サンタリア王太子殿下は「アラタに頼ってばかりですまないが……」とちょっと申し訳なさそうに苦笑いしている。
……気にしなくても良いのになぁ。此処はもう僕が住む国でもあるし、適材適所って大事だからね!
「僕が協力出来る事なら頑張りますよ!フェイ、今輸送機は動かせる?」
「はい、マスター。輸送機は勿論、バンカラも既に待機中です。まずはティグロンへ用意は整っております」
「さっすが、フェイ!サンタリア王太子殿下、今すぐにでも出発は可能です!」
「そうか。では頼まれてくれるかい?」
「はい!」
サンタリア王太子殿下の言葉に勢いよく頷く僕に、ニヤっと笑うボルグド殿下。
分かってますって。殿下にも協力要請しますから。
さあ、やるぞ!
アラタ行きまーす!!!
「その、すまないが……そろそろ脱いでも良いだろうか?」
「今日一日は駄目!」
……えっと、ダノン父様はヤミン君の許可が無いと今日は難しそうだねぇ。
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