対飛竜戦公開
……うん。あのダノン父様が大人しくしている訳がないよねぇ。
「まあ、良く保った方じゃない?」
「ったく……ミルリック兄上がダノンをけしかけたんだろうに」
ダノン父様の簡潔且つ最短の挨拶に冷静に状況を分析するミルリック王子とボルグド殿下。
ん?ダノン父様がどんな挨拶をしたかって?
その前に、ミルリック王子がダノン父様になんて言ったかも伝えておいた方が良いよね。
『[ヴェクナーの核]をジムに渡したわよ』
上映会会場に上機嫌で到着したミルリック王子が、早くトレーニングフィールドに行きたくてソワソワしているダノン父様に言った言葉がこれ。
続いて上映会会場に到着したボルグド殿下が、あちゃーと頭を抱えていた理由はね……
『おお!遂にダンジョンが出来たのか!!!』
『はい。トレーニングフィールドの7種類のフィールドがそのままダンジョンの階層に変化しています。そして勿論、ダンジョンに入る時は保険を掛ける事が必須ですよ』
『そうか!それにしても、流石はアラタのスキルだな!ダンジョンまで創り出せるとは!』
『当然ですね。マスターのスキルは無限の可能性を秘めていますから』
イヤイヤ、フェイ。そこで自慢気にならなくても良いから……
あ!そうだ。[ヴェクナーの核]って何の事かわかったかな?
[ヴェクナーの核]についてはダノン父様が言っていた言葉で気づいたと思うけど……ダンジョンコアの事なんだ!
なんでそんなのものがマンションにあるの?って思うよね。
それは、今回のダノン父様の功績に対するウェルダント国からの褒賞なんだ。
因みに、なんでそんな名称なのかって言う理由はね。初代のウェルダント国王にその当時のヴェクナー領主から寄贈されたダンジョンコアだったからなんだって。
理由といえば……王家の宝物庫でずっと眠っていたのを今回褒賞にしたのは、ダノン父様が褒賞は要らない、とずっと断り続けていたからなんだよねぇ。
ダノン父様曰く……
『我が領地の為に動いたまでの事。それに、国に属する貴族として当然の行為だ』
だって。うん、ダノン父様らしいなぁ。
でもだからと言って「そうか」と引くに引けないウェルダント王家。忠誠心に報いる為に粘って父様に交渉した結果———
『ならば勝利の立役者であるアラタの役に立つものを』
なんて、僕にこの案件を持って来たんだよ……イヤイヤ、僕だって特に何も要らないんですけど?
まあ、そうもいかない訳で……実のところ、パライバトル王様と僕とフェイを交えて話しあった時の僕の一言がきっかけなんだよねぇ。
『ダノン父様には新たな鍛錬場所が嬉しいんじゃないかなぁ?』
ただ単にその時思いついた事を呟いたら、フェイがパライバトル王様から聞いていた褒賞候補から[ヴェクナーの核]を提案してくれたんだよ。
『それがあればマンション専用ダンジョンが作成可能です』
ってね。これにはダノン父様も前のめりで賛成してねぇ。相談した時には踊り出していたよ。
テンションの上がったダノン父様の踊りが、まさかブレイクダンスのウィンドミルだったのには驚いたけどね。
ジムってば何をダノン父様に教えているんだか……
あ、ごめん。話を戻すね。
それとは別に、王家は褒賞金もセレナ母様を通して渡したみたいだね。だから、今の辺境伯領は慰労会が出来る程かなり財政が潤っているんだ。
ん?詳しくダンジョンについて知りたいって?それについてはまた別の機会に詳細を紹介するね。
だって、そろそろダノン父様の我慢が限界だったんだ。「まだ始めちゃいかんのか?」ってソワソワしていたからね。
だから、その姿に苦笑しつつ「全員揃ったものね」とミルリック王子が許可を出し、進行役のマンション騎士団撮影班のサトゥさんがスクリーンの前に出て来たら……
『あ!ダノン様!ちょっとお待ち———!』
素早い動きでサトゥさんからマイクを奪ったダノン父様。
『あー我らがアラタの素晴らしさを堪能して欲しい!以上!』
そう言い切り、マイクをサトゥさんに返すとスタスタと会場から出て行ってしまったんだ……!
だから、なんで僕に注目させるかなぁ?功労者はダノン父様と辺境伯領騎士団だってば!
———と、まぁそんな感じで僕が頭の中で言い訳をしている中、冒頭に至るわけで……
「え〜……我らが英雄ダノン様よりお言葉を頂きましたので始めましょう!では、『辺境伯軍対飛竜戦』公開致します!」
うん、よかった。サトゥさん、なんとか上手く切り替えて進行してくれた。
僕がホッとしていると待ち侘びていたらしい観客達から歓声が上がりスクリーンに映像が映し出されたんだ。
うわぁ、タイトルまでちゃんと挿入されているんだ!
しかも敵のゼリース国軍や飛竜やダノン父様のアップや辺境伯軍の様子を上手くカットしたのを繋ぎ合わせて曲までつけてるし……撮影班の腕が上がっているなぁ。
あ、日が昇った方向から何かが近づいて来たっ……!
『ドローン第一機担当サトゥです!遂に飛竜と共にゼリース国軍が進軍してきました!』
重厚な飛行音と共にリポートし始めるサトゥさん。どうやら輸送機に乗って撮影をしているんだね。
『現在報告されているゼリース国軍の数は飛竜二十三騎に地上軍約一万!対する我がウェルダント国はダノン様率いる辺境伯軍約三百!圧倒的不利な状況ですが、我が国には憂いはありません!見て下さいあの姿を!』
段々と近づく飛竜やゼリース国軍の様子から切り替わった画面には、輸送機ではなく飛竜に跨がったダノン父様の姿が映し出されていたんだ!
え?飛竜なんてウェルダント国にいなかったよね?って?
うんうん、そう思うよね。
『我が国が誇る辺境伯領領主であり我が国最強の戦士ダノン様が乗っているのは、なんとマンションスタッフが飛竜に変化した姿なんですよ!そして更にダノン様の背中に注目して下さい!』
サトゥさんのリポートと共にズームアップされて映し出されたダノン父様の背中にあったのは…——
「アラタちゃん……まぁたダノンにおかしな武器を渡したわねぇ」
「えっと……アレ一応剣にもなるんですよ?」
「……アラタ。どう見てもアレ団扇に見えるんだが……?」
苦笑するミルリック王子と武器まで聞いてなかったボルグド殿下。僕といえば、苦笑いするしかないんだよねぇ。
『おおっとぉ!急上昇を始めたダノン様!迎撃準備に入りましたあああ!』
おっと。ミルリック王子や殿下とボソボソ話していたらどうやら攻撃準備に入ったダノン父様。グングン空を上昇していき姿が小さく豆のようになったんだ。
そして切り替わった画面では、徐々に迫って来ていた筈の第一陣飛竜部隊の姿が一瞬で消えたよ?!
次いで、ドオオオオオオン!!!と鳴り響く音の方向に画面が切り替わると、地面にめり込み痙攣している飛竜部隊の姿が。
『っっしゃああああ!見たか!魔導重力扇の威力を!!!』
ありゃ。サトゥさんってば興奮してリポート忘れて叫んでる……
それにしても、うん!やっぱりマンションセキュリティシステムの自警団専用武器は凄いよね!
え?ダノン父様にだけ渡したのかって?
そりゃ勿論、ダノン父様だけじゃないよ?
………ただね。マンションセキュリティシステムから出る武器ってツッコミたくなるんだよねぇ……




