新たなマンションの日常
『よお!ジェット!夜勤帰りか?』
『サーディンか……!驚かすなよ』
『いやぁ、珍しくお前が浮かれているように見えてな』
『あー……分かるか?最近家族と移動が可能になったろ?今日ようやく申請が通って「グッドライフシティ藤泉」のアーケード商店街に家族で行ってくるんだ』
『ああ!あそこか!良かったぞー!このマンションのスーパーマーケットとまた違って、なんか通いたくなるんだよなぁ』
『ああ、既に行った奴らから散々自慢されたからな。俺達庶民は馴染みやすい雰囲気だってな。あ、悪い。行く前に一眠りしたいからもう行くわ。後、よろしくな』
『おお!楽しんで来い!』
……そっかぁ。ジェットさんはまだ行ってなかったのか。もうみんな行きまくっていると思ってたよ。
ベースルームのリビングでソファーに座ってカフェラテを飲みながら防犯カメラの映像を見ていた僕。あ、勿論フェイとゲンデもいるよ。
分譲マンション設置からニ週間過ぎて、今の時刻は午前の10時15分くらいかな。
ちょっとゆっくり寝過ぎたんだけど、これは仕方ないんだ。
だって、マスター権限を使った反動なのか10時間以上寝る事が多くなってね。
フェイによると僕の魔力の回復期間なんだって。と、いっても通常のスキルの使用に関しては問題ないんだ。
マンションも設備も増えたのにおかしいだろ?って思うでしょう?理由はね、下を見て。
・[マスター特約保険]消費MP10,000
対象: マンションスキル保持者のみ
効果: MP1000分の消費がMP10の消費で済む。保険効果1日のみ。
そう、新しく[保険]が追加されてたんだよ。これはマスター権限で増やしたマンションや施設の維持に欠かせないから必ず毎日掛けるようにってフェイに言われているんだ。
おかげで、僕の『マンション』更に快適になったんだよ!
[ポータルスポット]の維持も出来るようになって、今までベースルームの関係上行き来出来なかったスキル内の開放したマンションに行けるようになったんだ!
そう!いちいち住民を避難させてマンションを呼び出す手間が無くなったんだよ!
だから[エントランスキー]所持者は『ニューマンション』も『リュクスマンション・藤』も『グッドライフシティ藤泉』にも『分譲マンション』にも行ける事になったんだ。
でも、一応ね。自警団家族が一緒の場合には申請はしてもらうようにしたんだよ。
ほら、周りの人達にも周知してもらった方がいいでしょ?誰がどこにいるのか分かって、主にマンション在住住民の安心材料になるかなぁって思ったんだ。
自警団員や騎士達は申請しなくても移動可能だけどね。僕やフェイに通知が届くから。
「アラタ、これでスキル外に設置した分譲マンションの様子も見れるのか?」
どうやらジーッと僕の隣で様子を見ていたゲンデが疑問に思ったみたい。
「それに関しては巡回中のマンションAIの目線で見れるようになっています。マスター、巡回AIチャンネル31にして頂けますか?」
「うん。えーっと31ね」
ポチポチと操作をして映し出されたのは———
『ジョナサン、調子はどうだい?』
カランコロンと下駄の音と共に宿屋主人のジョナサンさんに近づくこの視線の持ち主は……バンカラかな?
しかもジョナサンさんが映って居るって事は、バンカラが今いるのは、辺境伯領都ゼネストの街中にある分譲マンションだね。
因みに、ジョナサンさんが居るこのマンションってね。59話の最後で言っていた低層マンション型分譲マンションの事なんだよ。
セレナ母様に相談されてたんだ。予定外に辺境伯領に来た貴族達も気軽に泊まれるマンションを作れないかってね。
先に出していた『グッドライフシティ藤泉』型分譲マンションも確かに部屋数はあるけど……あそこはこの領地の基盤だからねぇ。
領主と領民の安全を考えると、気軽に色んな人達を泊める事は難しいみたいなんだって。
だからこそ領都で宿屋を営んでいたジョナサンさんに声がかかったわけだけど……よっぽど嬉しかったんだろうね。
毎日家族総出で開店準備に勤しんでいるって報告が届いているんだ。
今だって新築で綺麗だからそんなに掃除をしなくても良いのに、床磨きを一生懸命にやって気付かないし。
あ。バンカラが声をかけながら背中を軽く叩いたら、ようやく気が付いたみたいだね。
『ああ、バンカラさん。最高ですよ!まさか俺に高級宿屋を任せてくれるなんて!』
『おいおい、ジョナサン。俺ぁ、しがないマンションスタッフだ。俺に感謝したってどうしようもねえだろ?』
『いや、確かこの間来ていた喫茶店の店主から、あんた達を通してアラタ様に情報が届くって聞いたからなぁ』
『喫茶店の……あいつ、暇なんだな。まあ、俺も言えた立場じゃねえが。まあ、いい。で、きっちり馬房は整備したか?足りないもんはねえか?』
『アンタ……とことんメス馬にしか興味示さねえのか』
『お?俺の好みにケチつけるってか?良いだろう……かかって来いや!』
『行くかよ……全く。ストロワさんに怒られちまう』
……ジョナサンさん、なんかバンカラがごめん。
って言うか、ストロワがこの宿を監修しているんだね。バーテンダーなのによく色々仕事こなしているよなぁ。
なんて思っていたら、隣から何やら冷気が……!
「———後で再教育が必要ですね」
「フェイ……ほどほどにね」
フェイの静かな怒りを感じて、さりげなくバンカラの擁護にチャンネルを変える僕。
すると、次はアーケード商店街の映像とザワザワした声が聞こえて来たんだよ。
えっと、これも巡回AIチャンネルだから、辺境伯領に設置した分譲マンションの方だね。でもこの目線の持ち主は……?
『はぁーい、持ってきたわよぉ』
あー、この間延びした声はルスラーンかな。今日は諜報員じゃなくて巡回の方に回ってたんだね。
どうやら、カーゴマスターの力を使って食料や必要なものの運搬しているんだろうなぁ。って、アレ?
『お!ルスラーンちゃん、ありがとな!』
『良いのよぉ。でもぉ、なんで八百屋AIの親父がこっちにいるのぉ?』
『そんなん、本店からの助っ人に決まってんだろうが!本店は息子に任せてっからな!』
『聞いて下さいよ、ルスラーンさん。八百屋の親父さん、おかみさんと喧嘩したらしいんですよ』
『ちょ!折角手伝いに来てんのにバラすんじゃねえよ!』
『あ〜、分かったかもぉ。また住民さん達にサービスし過ぎたんでしょぉ』
『ほーら、親父さんバレてるって。……俺ら辺境伯領民に同情してくれんのは有り難いけど、商売はきっちりしなよ』
『くぅ〜!この状況でも付け込まねえなんざ、此処の住民は良いねえ!ちょっと待ってな!』
『あ、また走ってった……えっと、ルスラーンさん。とりあえず今日の分の食料受け取ります』
『ごめんなさいねえ。うちの奴らが迷惑かけてぇ』
『いえ、親父さんを始めマンションスタッフの皆さん達にはいつも明るさも貰ってますから』
『ふふふ……イース棟の会長さんも頑張っているものねぇ』
『勿論ですよ!辺境伯領の復興基盤を作ってくれたダノン様とアラタ様に、早く新生辺境伯領をお見せしないといけませんからね!』
『その意気よぉ。ウチのスタッフも増えたからどんどん使ってやってぇ』
『助かります!』
———そんな会話をしながら笑顔のイース棟の会長さんにルスラーンが荷物を渡していると、アーケード商店街にいる領民の皆さんが次々と集まり出して来たんだ。
うん。AIと地元領民達の関係も良好みたいなのは良い事だけど……ルスラーン、かなりの量を出してるなぁ。
「しっかし……凄えなぁ」
僕の横でその映像を見て驚くゲンデ。
「だね。お肉の量も半端ないけど、蟹や海老や貝までいっぱいあるよ。あ、焼きたてのパンも美味しそう!子供達も匂いに釣られていっぱい集まって来たね」
「ふふっ、こんなものではありませんよ。今回は専門店街の出店もありますからね」
「うわぁ!楽しくなりそう!始まる時間は夕方だっけ?」
「その予定です」
「アラタは……止めても無駄だな。どうせ現地に行くんだろ?」
「当然!」
心配性なゲンデとフェイには悪いけど、やっぱり会場の雰囲気を楽しみたいんだよね!
あ、ごめんごめん。読者のみんなには何の事かわからないよね。
ヘーゼル国からゼリース国に飛龍の増援があったのを覚えているかな?そして、ダノン父様にミルリック王子が持ちかけた平原での迎撃戦の事も。
それが一昨日終わってね。———結果は?って思うでしょう?
勿論、ダノン父様を始めとした辺境伯軍が勝利を収めたんだ!ダノン父様、流石!の一言だったんだよ!
ん?戦いの内容も知りたい?
それは映像が残っているから大丈夫!今日の僕主催の慰労会で編集したのをお披露目する予定なんだ。
これで分かったかな?———そう!今日は迎撃戦の勝利の慰労会を夕方から開催するんだ!
場所は、『グッドライフシティ藤泉』型分譲マンションのアーケード商店街!
……ゼリース国との戦争はまだ終わってないし、辺境伯領も復興途中だけど、やっぱり明るい話題はみんなで喜びを分かちあった方がいいからね!
という事で、次回は慰労会の様子をお届けするよ!ボルグド殿下やミルリック王子も時間取れたみたいだし、楽しみだなぁ。
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