分譲マンション設置!
僕が宣言した後、範囲指定をした土地が光り出していよいよ分譲マンションがスキル外に出現!?
って、期待して思ってたんだけど……
「ねえ、フェイ?もしかして今から建てているの?」
僕の目の前では敷地一帯が大きな灰色の布で覆われた状態が広がっているんだ。 しかも、その布にはこんな紙が張り出されていてね。
『AI作業員が不眠不休で作業中!』
『関係者以外立ち入り禁止!』
『(おそらく)ウェルダント国最大の住居を建設中!完成まで残り半日』
って、何故か工事現場ヘルメットを被ったメイドさんの絵付きで張り出しているんだよねぇ……しかも音も結構すごくてね?
ドドドドドドドドドド!!!ガガガガガガ!!!ガラガラガラガラ……ドドンッドドン!!チュイーン、チュイーン!!ジジジジジジジジッ!「こらぁ!テメエ!どこ見てやがる!」ドーン!!!
えっと……無事なんだよね?中の作業スタッフ……って思わず心配しちゃったよ。フェイ曰く「大丈夫ですよ、AIですから」って言ってたけどね。
何にしても正に騒音。耳を手で塞ぎながら「この中どうなっているんだろ?」って思ってたらピタッと音が鳴り止んだんだよ。
「皆さんに実際建設中である事を音で実感して頂きましたが、そろそろ良いでしょう。このグレーシートには遮音効果もありますから、こちらで完成を待っていても良いのですが……どうでしょうか?一度[グッドライフシティ藤泉]に戻るのは?」
どうやらフェイが気を使って提案してくれたんだけどね。
うん。だったら最初から音を消しとけよって思っても、フェイだからねぇ……多分、僕の力を更に全員に強調したかったんだろうなぁ。
フェイさん、諜報員からの報告で今日は更にお怒りだし。
なんて事を考えながら、今いる全員の魔力登録を済ませて向かうは独立型共用棟の1Fアーケード商店街。
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「おいしいねー!」
ゆったりとしたジャズが流れる空間でクリームソーダを美味しそうに食べるレナちゃんは本当に可愛い。
「へえ、フルーツが綺麗だね」
エイダンは甘い物もいけるんだね。フルーツたっぷり生クリームたっぷりのプリンアラモードを食べて嬉しそう。
「やっと落ち着きました……!」
驚きの連続でお疲れ気味のヴルストさんが飲んでいるのは、ウィンナーコーヒーだね。
「ふむ……チーズをかけるとより美味いな」
マイペースなダノン父様は大盛りナポリタンを上品且つ豪快に食べているけど、これ既に二皿目なんだよねぇ。
あ、ごめんごめん。みんなは僕らが居るここが何処かわからないよね?
ここはアーケード商店街の中にある純喫茶店「浪漫」の店内なんだよ。
昭和レトロな雰囲気の店内のカウンター席に座って、それぞれが注文した物を食べているんだけど、ただ休憩してた訳じゃなくてね。
お?そろそろ来たかな?
カランカラン……!と喫茶店のドアを開けて中に入ってきたのは、みんなもご存知のあの方々。
「ちょっと〜!また面白い事になってるじゃない!」
「アラタお前なぁ……俺がちょっと居ない隙に何やってんだよ」
「あら?エイダンもレナも美味しそうなものを食べているわねぇ」
入ってきたのはご機嫌のミルリック王子に、ちょっと拗ねているボルグド殿下とマイペースなセレナ母様。
どうやら僕が新しいマンション出した事を知った三人が、会議や取り調べもそこそこに[エントランスキー]を使って戻って来ちゃったんだよねぇ。
とはいえ、有能なこの方々はしっかり情報も持ち帰っているし、指示も既に出しているみたいだけど。
でも後一人足りないかな?っと思っていたらカランカラン……!と鳴ったドア付近でハアハア息を切らして入って来たのは、ちょっと小太りの茶髪の男性。
「す、すみません……!遅くなりました……!」
「あら、今私達も着いたところよ?忙しい時に呼び出してごめんなさいね、ソシス」
「いえ……!セレナ様に呼び出されたならば、どんなところでも駆けつけますが……!」
セレナ母様が声をかけている息も絶え絶えになっている小太りの茶髪男性ってね、実は辺境伯領の商業ギルド長ソシスさんなんだ。
「参ったぜ。コイツ中々動かねえんだもんよ。でもちゃーんとここまで連れてきたから、俺はもう良いだろ?フェイさんよ」
そのソシスさんの後ろからヒョコッと顔を出したのはバンカラ。フェイがセレナ母様から頼まれて、バンカラをソシスさんの迎えに出していたんだって。
「その男がどうも疑わしくて……」
ポケットから出したハンカチで額の汗を拭くソシスさんは、どっから見ても気が弱くて人の良さそうな男性って感じなんだよ。
でも商売に対しては人が変わったようになるみたいなんだ(フェイ情報)。人は見かけによらないって事だね。
というか、ソシスさんを迎えに行ったのが人化したバンカラだもんねぇ。そりゃ、学ランに下駄履いた大男が来たら疑うなっていうのは無理な話だよね。
なんてソシスさんに同情していたら、フェイが遠慮がちにしているソシスさんをヴルストさんの隣の席に誘導してくれてね。
「ソシス様、失礼しました。その男にきっちりと礼儀を教えておきますので」
チラッとバンカラに目線をやりつつフェイがソシスさんにお詫びしている姿に、何か勘付いたのか「そんじゃ後は宜しく頼むわ、マスター」とそそくさとその場を後にしたバンカラ。
しかも「待っててね、かわい子ちゃーん!」なんて言いながら去って行ったもんだからねぇ。
声が聞こえたのかフェイの眉がピクピク動いていたのが見えたから……うん、バンカラ。骨は拾ってあげるよ。
なんて、僕が心の中で手を合わせていたら、目敏いミルリック王子がレナちゃんの足元で丸まって居る小型犬AIを見つけたみたいだね。
「あらあ!レナちゃんってば可愛い子連れているじゃない!」
「えへへ。いいでしょー?」
アイスクリームを口につけながら自慢するレナちゃんも可愛いけど、実際小型犬AIは懐っこいからね。
しかも奥からワラワラ出て来た小型犬AI達に囲まれて、可愛いもの好きのミルリック王子は大興奮!
「まあああああ!なーんて素敵な場所なの!!!」
小型犬AI達にペロペロ舐められて、ミルリック王子ってばやっぱり動物の可愛さにメロメロになってたよ。
「ミルリック兄上のそういう顔見てると、とてもじゃないがさっきまで仕事していたとは思えねえよなぁ」
その様子を見て呆れた表情でダノン父様の隣に座り、「いいもん食ってるな」なんてちゃっかり同じ物を注文するのはボルグド殿下。
言わずと知れたミルリック王子の仕事って……うわぁ、余り深く聞いちゃいけないよね……!
捕まった奴らはご愁傷様です。まあ、自業自得だけどさ。
「あら、ケーキセットがあるわ。私はそれと紅茶でお願い」
殿下の後ろでマイペースに注文して、レナちゃんと一緒にテーブル席に移動したのはセレナ母様。もう僕のスキルには慣れたものだからね。
ミルリック王子も僕のスキルに慣れて来たのか、セレナ母様達の向かいの席に小型犬AIを抱いたまま座って同じ物を注文していたよ。
そしてやっと全員が揃って席に着いたら、バンバンとダノン父様の背中を叩きながら報告をするボルグド殿下。
「ダノン喜べ!がっぽり支援金親父からせしめて来たぞ!……と言ってもセレナがほぼ親父を説得していたけどさ」
殿下にバンバン叩かれても平気そうに食べ続けるダノン父様の代わりに返事をしたのはセレナ母様。
「領地の事ですもの。今度こそしっかり復興しますわよ?ね、貴方?」
なんとなく有無を言わせない笑顔のセレナ母様。一度反抗した領民達に思う事はあれど、切り替えも早いのは流石だよね。
「ああ、そうだな。今アラタに頼んで住居は建設中だが、料金に関してはセレナが来てから相談という事になっているから頼めるか?」
モグモグとナポリタンを食べながらあらましを伝えるダノン父様の言葉に、スッと立ち上がって何処から出したのかファイルを持って笑顔でセレナ母様の席に近づくフェイ。
丁度良くストロワが喫茶店に入って来て、レナちゃんを小型犬AI達と共に席を移動させるという連携を見せてたよ。
「ええ、任せて頂戴。あ、それとソシスを呼んだのは、今領内の商店がどんな状況かも全員に把握して欲しかったからなんですわ。私がフェイさんと話し合っている間、それを報告して貰っても良いかしら?」
セレナ母様はやる気に満ちたフェイにきっちり対応するつもりなんだろうね。ソシスさんに、細かな事は任せるみたい。
……なんかセレナ母様とフェイの二人に静かな火花が散っていたのは僕の気のせいじゃないだろうなぁ。
あの二人の間に入るのはやめておこうと思っていたら、ソシスさんもフッと雰囲気を変えて来たんだ。
「畏まりました、セレナ様。現在すぐ営業出来る商店はありませんが、それでも我が領内の商人や職人達のヤル気が削がれた訳ではありません。
商品と制作場所さえあれば動き出したいという声が領民達から上がっており、それをセレナ様にお伝えしたところ、アラタ様が施設設備の追加を受けてくれたそうで領民達の士気が上がって来ています」
商人の表情に切り替わったソシスさんが言っていたように、分譲マンションの独立型共用施設の追加設備料金も辺境伯家が出してくれるらしくてね。
分譲マンション完成後に各商店がすぐに稼働出来るようにしているんだよ。
王都からの支援物資の手配もまもなく終わるらしいし、近隣の領地からも援助が来るみたいだしね。
だからそれが届くまで主に食料の援助が僕の仕事。
凄いんだよ。ソシスさんってば、既に商人さん達も連れて来ていてね。今アーケード商店街で色々仕入れさせているみたいなんだ。
「また、女性達には内職の募集をかけておりますし、手が余った男性達には街の復興作業の依頼を冒険者ギルドからも出して貰う予定です。頼めるな、ヴルスト?」
「当然だ。どうやら今建設中の住居は、動力が魔石らしいからな。うちの冒険者達も稼ぎ時だと既に動いている者は動いているぞ」
「ふむ、それは好都合。動き出すのは早ければ早い程良い。そしてダノン様。領民達には必要最低限の物資としばらく炊き出しの援助があると聞いておりますが、期間の方はいかほどに?」
「一月程だな」
「畏まりました。領民への周知はお任せください。では次にアラタ様。今回かなりの援助をしてくださるようで領民を代表して感謝をお伝え致します」
「いえ、大事な人達の領地の事ですから当然です」
「おお!なんと、過分のご配慮痛み入ります!商店や領民が喜びましょう」
ニコニコ人の良さそうな表情で感謝を伝えて来るソシスさんだけど、やっぱりやり手なんだよ。僕から値引きの言質取っていくんだもんね。
でもまあ、こっちは元々そのつもりだったし。ただでさえお金が入ってくるからなぁ。還元出来るところでしていかないとね。
「僕の方からも新たに支援要員をお貸しする予定でいます。早めに領民の生活を日常に戻したいですから」
「おお!なんと過分のご配慮をありがとうございます。商業ギルドも一丸となって取り組んで行く次第です。……ただ、ダノン様。開戦が宣言された事で一部の住民の不安が増しております。この点はどのように動く予定でしょうか?」
あ、その情報もう領民にも伝わっていたんだね。
ソシスさんからの質問の回答には、ボルグド殿下とミルリック王子が情報を持っていたから、次回きっちり伝えるね!
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