血は繋がってなくとも……
「アインスを確保したと聞いた!!!」
「クウィラを保護したって!?」
ドドドドド……ッと、ものすごい勢いで共用会議室.1に乗り込んで来たダノン父様とボルグド殿下。
「……どこのドラゴンが移動してきたかと思ったぜ……」と呟くゲンデに深く同意する僕。
……うん。スキル内だから地震なんて無いはずなのにね。
「ダノン!ボルグド!もう少し静かに移動して頂戴!」
それを注意するのは、誰よりも速く集合場所に到着していたミルリック王子。
『ついさっきまでおもちゃ売り場に居ましたよ』って……フェイさんや。わざわざ念話で伝えなくても良いから。
「ウチの息子がご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
そんな感じで僕とフェイが念話で会話していると、既に会議室で待機していたセラさんが神妙な面持ちで僕らに謝って来たんだけどね。
「セラ。貴方が責任を感じる事はありませんわ。罪は個人が負うもの。貴方を咎める事は誰にもさせません」
即座に否定するのはセレナ母様。会議室の椅子に座って全員が揃うのを待っていたんだよ。セラさんが既にいたのは、母様付き侍女だからね。
因みに、ミルリック王子とセレナ母様が既に会議室にいたのは、二人のスキルが関係しているよ。
ミルリック王子のスキルは[予見]。フェイによると、物事が起こる前にあらかじめ知ること、または見通すことを指すんだって。
これは、単なる推測や予想とは異なり、未来の本質や背景にある流れまで見抜くような、先見性や深い洞察力を伴うスキルらしいよ。
だからそろそろだと理解していたらしく、僕が[エントランスキー]を通して連絡した時にはもう一階に居たんだって。
で、セレナ母様だけどね。
セレナ母様のスキルは[統率]。但し魔力交換をした人達のみにだけ働くもの。
これもまたフェイによると、集団や組織をまとめ、目標達成に向けて導く働きや能力らしいけど……
凄いのは単に指示を出すだけでなく、メンバーの意欲を引き出し、秩序と調和を保ちながら物事を進めるスキルでもあるんだって。
そして[統率]スキル持ちの母様だけ、魔力交換(お互いに身体の一部に触れて魔力を流すこと)をした人とは、意思の疎通が出来るらしいんだ。
実は、僕より先に二人を保護した事を理解していたらしいよ。だから、セレナ母様から僕に連絡があって一緒に共同会議室に来ていたんだ。
これでわかると思うけど……基本『マンション』は僕のスキル内であっても、他の人のスキルまで制限していないんだよ。
我らがフェイさんが常時見張ってはいるけどね。
ついでに言えば、ダノン父様は[上限突破]スキル持ちで、ボルグド殿下は[身体能力増強]スキル持ち。
何が違うの?って思うでしょう?
要約すると……ボルグド殿下は、体力・スタミナ・持久力・瞬発力が鍛えれば倍になって成長していくスキルで、ダノン父様はその上位互換性スキルなんだって。
一応言っておくけど、どれも珍しい発現スキルだよ。こういう貴重なスキル持ちは国が管理しているんだって。
基本的に、国民はスキル持ちが発覚したら申請するという命令を従順に従っているそうだよ。
でも中には当然枠から外れる人も出て来るわけで———その時は、ミルリック王子率いる暗部部隊が活躍するんだって。
僕、初めて知ったよ……ミルリック王子の部隊って暗部部隊だったんだね。それは喜んで尋問する訳だ。
ん?ちょっと脱線したね。丁度、会議室に全員揃ったみたいだから、話を戻すね。
今は全員にフェイが状況を説明しているよ。
「現在、アインスとクウィラはAI諜報員の一人、カーゴマスターのルスラーンが空間内で拘束中。
ですが、その後辺境伯邸にて二人の失踪が発覚。此処で諜報員が解放した辺境伯主力部隊がグリード軍と抗戦中。
そして、辺境伯領内でも二人を捜索という名のもとに、兵士達が街の住民達を襲い、家が破壊され、女性達が兵士に捕まり、住民にも被害が出始めている様子。
諜報員が住民を避難するように誘導していますが、その避難先の商業ギルドや冒険者ギルドも応戦中の為、住民の避難は難航しているようです」
……そっか、ゼリア兄さんも軍を纏めるのには長けていたもんね。そりゃ気がつくか。
でもやっぱりグリード家は騎士家であって領地持ちじゃ無いから、この騒動がどんな影響をもたらすかわかって無い……!
いや、《《あの人》》はわかっていてやっているのか……?
「クッ!領民に被害が出たか……!セレナ、冒険者ギルド長のヴルストと商業ギルドのソシスは……?」
僕が思案する中、最初に反応したのはダノン父様。視線の先のセレナ母様もかなり険しい表情だね。
「ヴルストは街の冒険者達をまとめて両ギルドを拠点として動いているわ。今高ランクのパーティが森で魔物を押さえているから、街で交戦中なのがCランクの冒険者達……グリード軍の数に押されているわね」
「ソシスは?」
「ギルドの食料を解放しているわ。避難している住民や冒険者達の支援に回っているみたいね」
現在の領内の様子も把握しているセレナ母様。
「フェイ、トッド達の現在の居場所は?」
そんな母様の報告を聞きながらフェイに状況確認をして来たボルグド殿下。……殿下の顔も見た事がないくらい真剣な表情だね。
「ボルグド殿下の諜報員は、我がAI諜報員と共に街と辺境伯邸に別れて後方支援に動いています」
フェイの返答に「へぇ、あいつ名乗ったのか」と何やらニヤついていたけど……
「ねえ、アラタちゃん。現地に移動する方法を既に準備しているんでしょう?」
ボルグド殿下の様子を見ていた僕に、確信を込めて質問してきたのはミルリック王子。
……予見スキル持ちは流石だね。
「実はその通りです。辺境伯領にいるAI諜報員達は『マンション』の施設で働くAI達なんです。僕は、それぞれに[エントランスキー]を渡しています。ですから、こちらからの支援はいつでも可能になっています」
「やっぱりねぇ……!なら、すぐにでも乗り込めるって訳じゃない!」
ミルリック王子の言葉を聞いて全員の視線が僕に向いたから、これも言っておこうかな。
「更に[保険]の使用は常時可能、それに自警団専用武器も派遣自警団専用武器も準備は万全です。騎士達用の食事もBF1に出来た専門店街より[カレーの魔術師]が協力、住民用にはスーパーマーケット店内の[ベーカリーふらわぁ]より支援が可能です」
「あら、カレー良いわね!」
「あれ?ミルリック王子もう食べたんですか?」
「うふふ〜、流行は最先端を行かなきゃね!」
「ミルリック兄上……いつ時間作ったんだよ……?」
なんかミルリック王子のマイペースさで僕も殿下もガクッと緊張感が下がったけど、ダノン父様とセレナ母様には願ってもない助けだったみたい。
「ならば!今すぐにでも向かわせて欲しい!」
「そうね。それにこれは我がスティール家の直系が起こした反乱。出来たらスティール家だけで収めたいので、ミルリック王子の部隊の出動要請は取り下げさせて頂きたいですわ」
「あら、そう?」
スティール家だけで今回の案件を収めたいという要望を、ミルリック王子はあっさり受け入れたけど……僕は手を引かない。そんな理由は無いからね!
「ダノン父様、セレナ母様!僕はスティール家を本当の家族のように思っています!それに僕の実の兄が関係しているからこそ、僕にも戦う権利はある!」
立ち上がって二人に宣言した僕。
そんな僕の思いを聞いて、いつもの優しい表情になった二人。
「……そうか!アラタも戦ってくれるか……!———だが、アラタ自身は此処から出ることはしてくれるな。お前はエイダンとレナと共にいてくれ」
「そうね。アラタも大事な私達の子だもの。此処は親に任せなさい。でも[保険]は有効利用させて貰うわよ?」
「こちらも『マンション』の専属自警団だけは借りさせて貰うが、良いか?」
「勿論だよ!それに、僕だって此処にいながら二人の支援は出来るからね!」
「ああ……!我が子は頼もしいな」
「ええ……!本当に」
いつの間にか僕の近くに来ていたダノン父様。僕の頭を優しく撫でてくれたんだ。そして、セレナ母様も僕をぎゅっと抱きしめてくれた。
……あったかいなぁ。今の父様と母様は。
それにエイダンとレナちゃんだって前にお茶をした時、こう言ってくれてたっけ。
「僕は、アラタの為に貴族側の盾になるよ。その為には武力もだけど、知識とその応用が必要なんだ。だから今カルとサーチにも鍛えてもらっているんだよ。……今は、まだアラタを助けられないけど……必ず!実現させるからね!」
僕の目をまっすぐ見て宣言してくれたエイダン。
エイダンが最近更に勉強に熱が入っていると思ったら、そんな理由があったんだね。へへっ、なんか嬉しいなぁ。
でもまさか、カルチャールームAIのカルと図書室AIのサーチにまで教えてもらっているとは思わなかったけどね。
エイダンが頑張るなら僕も頑張らないと!って気合いが入ったんだ。そして、レナちゃんの場合はね……
「おべんきょうがんばるの!そしたらみんなをたすけられるってストロワいってたの!」
まさか、レナちゃんからストロワの名前が出て来るとは思わなかったよ……!
どうやら、ちょこちょことストロワに会いに行っているらしいレナちゃん。ストロワも「可愛いお友達が出来ました」ってフェイに報告済みだったんだって。
バーテンダーと友達になれる5歳児……うん、将来が楽しみだね。
そんな感じでちょっと驚いたけど、レナちゃんの優しい気持ちが伝わって来てほっこりしたんだよねぇ。
うん、僕の今の家族はみんな優しくて強い……!
だからこそ僕だって力になれる!
「フェイ!【マスター権限】を使うよ!『マンション』住民《《全員に》》全[保険]の適用を!」
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