戦いの前に—— 2
……って考えてた僕。
「アラタの考えの甘さは今に始まったことじゃないだろ?」
「……言わないで、ゲンデ」
「マスターの能力で具現化した商品は、全てにおいて一級品ですから」
「フェイ……答えになってないって」
ベースルームにて、へとへとになっている僕の隣で、自分で淹れたお茶を飲むゲンデと僕にジュースを準備してくれたフェイ。
……うん、女性ってタフなんだねぇ……
フェイが準備してくれたジュースを飲みながら、一息つく僕。
あ、ごめん!みんなは何のことかわからないよね。
じゃあ、エントランスラウンジで『マンション』の案内図を見せた後から説明するね。
例に漏れず女性騎士団員の皆さんも『マンション』の特異さに言葉もなくなっていたんだけど、事前の情報が今回はあったらしくてね。
「是非!スーパーマーケットに行きたいです!」
って元気な栗毛の女性騎士さんが言い出したら、全員が乗っちゃってね。
僕はマンションツアーみたいに順に案内するつもりだったんだけど……まあ、順番は狂っても良いかって気楽に思っていたんだ。
そして、いざスーパーマーケットに行ったら———
「きゃあ!野菜の鮮度が良いわ!」
「ちょっと待って!すっごいパンのいい香り!」
「え?嘘……!魚なんて高級なものがあるの?」
「ここにサンタリア王太子殿下ご推薦のお菓子があるのね……!」
「出来たての料理があるわ!これでもう料理で苦労する事はないのね!」
スーパーの入り口に来た途端に賑やかになった女性騎士団員の皆さん。うん、気持ちはわかる。スーパーに来るとなんかワクワクするよね!
ダルクさんもこれには苦笑していたよ。どうやら指導役のダルクさんも楽しみにしていたらしく、ここは自由行動を許していたらしいんだ。
でもね……しばらくすると、僕に質問が集中しちゃって———
「女性特有の悩みを解消する品があると聞いていたんですけど?」
「肌の手入れにとても良いものがあると聞いていますわ!」
「髪もツヤツヤになるんですよね?」
「唇もプルプルになる塗り薬があると聞いたのですがどちらに?」
僕、前世も女性に囲まれる経験ってなかったし、質問が質問だけに焦った焦った……!
勿論、そこは頼りになる我らがフェイさんがフォローしてくれたけどね。
「皆様、でしたら本日出来たばかりの専門店街をご案内致します」
フェイが手で示す先には、受付嬢のような制服を来た女性型AIが三人が待機していたんだよ。
「彼女達が皆様のご要望に沿った商品をご案内致します。順に参りますので、まずは三班に分かれて頂けますか?」
そうフェイが提案すると、ザッと即座に三班に分かれる皆さんは流石は騎士団!って感じだったね。
でも……あれ?
「ダルクさんはあちらに行かなくても良いのですか?」
「ええ。私がいると、彼女達は心から楽しめないでしょう?」
僕の隣から動かないダルクさんに聞いてみたら、どうやら他の皆さんに気を使っているみたい。
うーん……確かに指導役って立場だけに難しいけど、かなり親しまれているように僕は見えたんだけどね。
でも仲間思いの人なんだなぁ。
「ダルク様がこちらにいるのなら私もご一緒しよう」
「ならば私も」
ほっこりした僕とダルクさんが会話していると、隊長のノビアさんと副隊長のキュナさんもこちらに歩いて来たんだ。
「気にしなくとも構わないのに……」と言いながらも嬉しそうな表情のダルクさん。
うん、やっぱり優しい人だもん。慕われるよね。
あ。そうそう。スーパーマーケットの専門店街については説明していなかったね。
実は、女性騎士団が来ると決まったタイミングでスーパーマーケットもバージョンアップが可能になったんだよ。
そう、なんと!総合スーパーのようになったんだ!と、言っても宅配ボックスのラインナップがテナント化したんだけどね。
だから、ドラッグストアと家電量販店と家具寝具店とアパレルショップが具現化したんだ。BF1階がすっごく広くなったんだよ!
そしてお気づきの人も居るだろうね。家電量販店には、大型おもちゃ売り場がついているんだ。
……ミルリック王子が発狂しないといいなぁ。
それに伴って、マンションの宅配ボックスの機能はテナントに移って無くなったから、少し不便にはなるだろうけどね。
でも僕は、ウィンドウショッピングも好きだったからちょっとワクワク。
……とはいえ、ワクワクしていたのは最初だけで———
「アラタ君には、この服が似合うのではないでしょうか?」
「いや、こちらを是非着てみて欲しい」
「あら、これもどうでしょう?」
今ダルクさんが手にしているのは、THE王子様という黒の派手な模様が入ったジャケットにショートパンツの中世風ロリィタの服。
……えええ……ショートパンツって……?
若干引いている僕にノビアさんが勧めてくるのは、何故かあった刺繍陣羽織の青ラメ無地の着物。
……僕が着たらどこの若様状態になるだろうなぁ……あ!ちょっと言っておくけど、七五三になるかもなんて思ってないからね!
つい脳内で言い訳していると、更にキュナさんが勧めて来たのは白の学生服。イヤイヤイヤイヤ……確かに僕13歳だけど、一応中身は大人だったからね?
「み、皆さん、ありがとうございます……!」
……ちょっと作り笑いになるのも仕方ないと思うんだ。だって全員真剣に選んで持って来てくれるんだよ?
そもそもこういう状況になったのは、ダルクさん達と僕達も一緒に見て回る事になったからだけどね。
そのダルクさん達が、女性騎士団員が楽しんでいる様子を見て、改めて僕に感謝を示したいと提案して来たんだ。
元日本人の僕が気にしないでと断ろうとした時に、『好意を受け取るのも懐の広さを表しますよ?』なんて、フェイも念話で勧めてくるし。
しかも、「ここはどうでしょう?」ってダルクさんが興味深そうに指差したのが、『仕立て屋 こすぷれまにあ』って店なんだよ?
確かにここの服は上等で着心地は良かったけど、正にコスプレ感半端ないんだ。そんな服達を真剣に三人が選んで、三人が納得するまで僕は着せ変え人形になって……精神的にぐったりした僕。
「うん、これですね」
「仕方ないな」
「そうですねぇ」
結局、最終的に三人が納得したのはなんと白の学生服だったんだ。しかも派手な金と銀糸の刺繍が施されている逸品。
何故か三人が「最高の一着を贈ろう」なんて言って選び抜いたからすごく時間はかかったけど……うん、有り難く頂戴致しました。
……いつ着れるかなぁ、この服。
なんて思っている僕の横で三人が次の行程を話し合っているんだけどね。
「さて、次は我ら騎士団の服でも新調してみましょうか」
「良いですね」
「良い服だらけですから」
三人共まだ見るの?!って思った時点で僕はアウト。
もう9階の女性騎士団員専用の部屋への案内はAI達にお任せして、『マンション』管理があるのでこの辺でと言って抜け出して来たんだ。
そして現在ベースルームのリビングでぐったりしている訳だけど……防犯カメラチャンネルで見たら、まだ真剣に騎士服を選んでいたんだ、あの三人。
それに、他の女性騎士団員の皆さんもスーパーやドラッグストアでかなりテンションが上がっていたし。
やっぱり異世界でも、女性はショッピングが好きなんだなぁって実感したよ。
そういえば……連れ去られたボルグド殿下はどうなったんだろう?って思って、カルチャールームの防犯カメラを覗いてみたらね……
『まだまだ殿下も鍛錬が足りませんね』
『うっぎゃぁああああ!セラ!足を!触るな!』
茶室のような空間で、四つん這いになって動けなくなっていたボルグド殿下。恐らく足が痺れているんだろうね。セラさんに扇子で足をつつかれていたよ。
周りにいた騎士さん達も結果自分達も同じ状況になっていた故に、「触らないで下さい!!!」って騒いでいたかな。
……正座って慣れていても辛いから、初めてなら尚更仕方ないよ。うん。
そんな殿下達の様子を見てから、他のカルチャールーム講座の様子も見ていたらね。その一つに気になる講座を見つけたんだ。
「フェイ、あの五人の騎士達って何を学んでいるの?」
「あの五人は映画をどうやって作るのか教えて欲しい、とカルに頼み込んできた方達ですね。今は、まずは機材の種類と扱い方を学んでいるようです」
へえ……!映画を作りたいって思うほど、よく見ていたんだろうね。これは是非とも見てみたいから、頑張って欲しいなぁ。
うんうん、と頷く僕の横では「アイツら、暇さえあればシネマスプリングにいる奴らだ」という呟くゲンデ。
やっぱり!と思ってゲンデに詳しく聞こうとしていると、真面目な雰囲気のフェイに呼ばれた僕。
「フェイ?何かあった?」
「はい。AI諜報員達から報告がありました。現在、盗聴スキル持ちのクウィラを保護したようですが……もう一人、アインス・スティールも一応捕獲したようです。アインス・スティールの対応をどうすべきか確認要請がありましたが、如何なさいますか?」
「「は?」」
突然の報告に僕と同様に驚いたゲンデと声がハモったけど……AI諜報員達仕事早いな!
クウィラさんに加えて、まさかのアインス様まで既に救出済みとは……!
えっと……この件は、まずはダノン父様や殿下達に報告かな?
アクセスありがとうございます♪
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