戦いの前に—— 1
今日から1日1話更新になります。
ザワザワザワザワ……
うーん。やっぱり集まる人数が同じでも雰囲気が違うよねぇ……
なんて呑気に観察していた僕の横で、ボルグド殿下がその集団に声をかけたんだ。
「おっし!よくぞ集まってくれた!……って言うか、お前ら。王宮で俺が集合かけた時よりも集まるの早くねえか?」
あの首脳会議という食事会から翌日の朝の現在。
何故か拗ねているボルグド殿下が、集まった騎士達に声をかけているところなんだけどね。
此処、『マンション』一階のエントランスラウンジに集合しているのは、王宮から新たに『マンション』専属に選ばれた15人の女性騎士達。
え?15人全員女性?って思わず僕が確認しちゃったけどね。
「当然です。我らが出張中に何を勝手に動いているのです?しかも、自分だけこんな良い場所に移り住んで?」
「ダルク……だから今回ちゃんと呼んだだろう?」
「遅すぎます。我らは王家ではなく殿下に忠誠を誓っているのです。なんのために彼女達が血を吐く思いで騎士になったと思っているのです?」
「わかったわかった……頼むからここで説教は勘弁してくれ……」
あ、殿下が凹まされてる。セラさん以来だなぁ、あの姿。
なんてジッとみていると、殿下をやり込めている女性騎士さんと目があったんだ。
……うわあ、厳しそうな感じの女性騎士さんだ……!しかも結構年齢がいっている様な気がするけど……
『マスター、女性の年齢を考えてはいけません。ただ、彼女はダノン様より年上だとだけいっておきましょう。[破軍のダルク]の名はウェルダント国や近隣国で有名です』
僕がダルクさんの見た目に関心を持っていると、後ろに控えていたフェイから注意とダルクさん情報を教えて貰ったんだけどね。
『[破軍]って……!軍隊を破るって事だよねぇ?え?あの人一人で軍隊を破ったの!?』
『その様ですね。強さ的に言いますと……今ではボルグド殿下がかなり上をいっていますが、最近まではダノン様の次に強いとまで言われていた方です』
思わず「ひえええ……」と声を出してしまった僕に、にっこり笑って近づいて来たダルクさん。
「失礼致します。『マンション』マスターのアラタ様とお見受け致しますが、我らを紹介させて頂いてもよろしいですか?」
殿下に話している時とは違い、優しそうな笑顔で僕の前で騎士の礼を取るダルクさん。
「勿論です。あ、すみません。先に自己紹介しますね。僕は『マンション』マスターのアラタと申します。隣にいる女性型AIがフェイ、後ろに控えているのが僕専属護衛のゲンデです。
もし、この『マンション』でご不便な点がありましたら、すぐに僕にお知らせ下さい」
よろしくお願いします、という意味を込めて握手の為に手を出したら……ダルクさんはスッと僕の前に跪き、差し出した僕の手をとって自分の額につけたんだ。
「かの御方にお会い出来て光栄です。我が主君同様に仕えさせて頂く所存でございます故、我らウェルダント女性騎士団の存在を覚えて頂けると幸いでございます」
そうダルクさんが言い切ると……残りの女性騎士さん達もザッと揃った動きで跪き僕に頭を下げるんだよ!?
うわぁ、格好良い!……じゃなくて!
「皆さん!気持ちは有り難く受け取ります!ですから、どうか立ってくれませんか?これからは同じ『マンション』の住民同士なのですから!」
アワアワしながらダルクさんや女性騎士さん達に声をかけると、「「「ぷ」」」と声を出しクスクス笑い出す女性騎士さん達。
え?僕、何か変な事言ったかな?
そう思っていると全員がスッと立ちあがり、若い女性騎士さんの一人が僕の前に来て、手を差し出して自己紹介してくれたんだよ。
「ああ、笑って悪かった。余りにも聞いていた通りの優しい性格のマスターだったからね。失礼、私はノビアと言う。この女性騎士団の一応隊長をしているんだ」
うわぁ……!この人、女性なのに格好良い!でも、着飾ったら凄い美人に変わりそうな感じだなぁ。
「ノビアさん、どうぞ宜しくお願いします。僕の事はアラタとお呼び下さい」
心の声はしっかりフェイに聞こえているだろうけど、一応表情には出してない筈。
笑顔で握手をして、女性騎士団員を紹介して貰ったんだけどね。
ノビアさんが「一応隊長だ」と名乗ったのは、ダルクさんを未だ超えられないからだって。
そんな謙虚なノビアさんだけど、フェイ曰くこの女性騎士団の隊長として絶対的な信頼を得ているらしいんだ。
うん!それはわかる気がするよ。
でもさ。直感で思うんだけど、ダルクさんを超えれる人っていわば怪ぶ……『マスター?』ってフェイ!違うから!偉大な人物だって言いたかったの!
ふう……あ、失礼。紹介に戻るね。
流石に全員の名前を一度に覚えられないから、主だった人を紹介して貰ったんだ。
「初めまして、マンションマスターアラタ。私は女性騎士団副団長のキュナと申します」
優雅な所作で左胸に手を当てて敬礼してくれたキュナさんは、とても女性らしい体型の美人さんでね。どうやら珍しい貴族の出らしいよ。
「初めまして、アラタ様。参謀役のパトラですわ。お会い出来て光栄ですの!」
次に進み出てくれたのは僕と背が同じくらいの可愛い女性のパトラさん。
コソっとノビアさんが「コイツを容貌通りに見ていると痛い目に遭う」と教えてくれたけど……確実にパトラさんに聞かれていると思うんだけどなぁ……
「あ、あの。女性騎士団回復要員のフローレンスです……!」
少しノビアさんの心配をしていると、最後に紹介されたのが可愛いらしい小動物系のフローレンスさん。ちょっと女性以外は緊張するらしくて、僕に対してもオドオドしていたんだ。
……僕、怖がられるのティニア王女と合わせて、これで二回目だなぁ。こんなに紳士なのにね。
なんかフェイから視線感じるけど……うん!ここは一つ僕が『マンション』の案内をするべきだよね。
「えっと、それでは!皆さんの住居になる『マンション』施設と部屋を、僕がご案内しますね」
なんて僕が言ったら、エントランスに集まっていた騎士達が全員肩を落としたりガッカリした表情をしたんだよ?
「ブハッ!見事に奴らの期待を裏切ったなぁ、アラタ!アイツらもしかして案内のご指名があるんじゃないかって期待していたんだぜ!」
ボルグド殿下のおかげで騎士達の総意がわかったけど、これはマンションマスターとしての仕事だと思うからね。諦めて貰うしかないんだ!
『マスターの心もダダ漏れですよ?』
『……フェイさん、そこはたまにはスルーしても良いんだよ?』
なんて念話でフェイと会話していると……いつの間にか大笑いしていたボルグド殿下が、メインエントランスに集まった騎士達に囲まれてたんだ。
「ボルグド殿下!確か今日は我らを鍛え上げて下さるとの事!ならば行きましょう!カルチャールームで『サドウ』なるものでご一緒に精神を鍛えて下さるのですよね?」
「いや?別にお前ら違反してねえし。それに、それを言ったのは自警団員に対してだった筈だが……?」
「いえ!殿下の部下である我らにとってもその言葉は同じ事!では、参りましょう!大丈夫です!グエルさんには許可をとっています!」
あ……本当だ。グエルさんも頷いているよ。
「さあ!参りましょう!カルチャールームへ!セラさんもお待ちかねですよ!」
「いや待て。お前ら何故そんなに乗り気なんだ?」
「さあさあ、急ぎましょう!」
「だあああああ!行くから!担ぎ上げんな!くっそ!グエルお前俺を売ったな?!」
エッホ!エッホ!と騎士達に担ぎ上げられて行くボルグド殿下。その様子をヒラヒラ手を振って見送るグエルさんの腕には、何やらお酒の瓶があったんだよねぇ。
「アイツら……!グエルの酒好きを利用したな……!」
ボソっと呟くゲンデ曰く……グエルさんが持っているのは、騎士達の間で贅沢と言われている金貨5枚クラス(50,000円相当)のシングルグレーンウィスキーなんだって。
宅配ボックスの方で確か扱ってあったかな?
それにしても……騎士達は、なんでそんなにカルチャールームの茶道を勧めたんだろうね?
『マスター、どうやら騎士の一人が聞いたその日に講座体験したそうですよ。その感想が騎士達に伝わったんだとか』
『それはまたチャレンジャーな……でも、殿下にも日本文化の良さをわかって貰えたら嬉しいよね!』
『マスター!……どうかそのままでいて下さい』
フェイ……それはどう言う意味かな?とフェイとやりとりしていると、ポンポンとゲンデから背中を叩かれた僕。
振り向いて見ると、ゲンデが視線で促す先には苦笑しながら待っている女性騎士団員達の姿が……!
「すみません!案内すると言ってそのままにしてしまって……!」
「いえいえ。ボルグド殿下がこちらでも素のままでいられるのが見れて安心致しました」
謝る僕を優しい笑顔でフォローしてくれたのはダルクさん。うん、この人も殿下の事を大事に思っているんだろうなぁ。
そう感じてちょっとほっこりしながら、改めて女性騎士団員さん達に椅子に座って貰い、エントランスラウンジの大型TVに注目して貰ったんだ。
「まずは、『マンション』の全体案内図をご覧下さい」
僕がTVに注目して貰うと、それを見た全員がザワザワとし始めたんだけどね。
僕自慢の『マンション』だし、きっと女性騎士団の皆さんも気に入ってくれるよね!
アクセスありがとうございます!
昨日から投稿の「自宅の倉庫が異世界に繋がった⁉︎〜家族全員チートで異世界セカンドライフ〜」もよろしくお願いします!




