首脳会議 2
本日五話目!
「もう、聞いてよぉ!あのガチャ本当に全種類入っているのかしら?20回連続よ?20回連続!もう何個かくらい当たっても良いと思うの!」
前回に引き続き、スカイガーデン・翔に居る僕達。
僕の目の前で優雅な仕草で食事をしているミルリック王子だけど、食事中の会話内容は今日も散財したガチャの話。
「ミルリック兄上……あれだけあるのにまたやって来たんですか……?」
そんなミルリック王子に呆れ顔のボルグド殿下は、『マンション』のミルリック王子の部屋を見た事があるんだって。
「どんだけ集める気だか……」とボソッと呟やいていたから、恐らくコレクションルームと化しているんだろうね。
それにね……やっぱり見つけていたよ。森で住む愉快な動物達の人形。
え?なんで僕が分かるのか?って思うでしょ?
だってね。今日は王族らしい正装姿のミルリック王子だけど、ポケットから可愛いらしいリスの人形がこんにちはって顔を見せているんだよ?
僕、思わず二度見しちゃったよ……
まあ、家族である王族もダノン父様とセレナ母様もスルーしているから、僕だって何も言えないし人の好みの問題だから良いんだけどね。
そうそう、好みと言えば……
「お母様とセレナお姉様。今日はまたとてもお綺麗ですわ」
「ふふっ、ありがとう。ほぼ身内の食事会だもの。これくらいなら許されるでしょう?」
「スウィート様とご一緒出来るなんて嬉しいですわ。でもアーガイルも素敵よ?」
「このイブニングドレスは、『シノワズリー』と言うらしいですわ。とても気に入っておりますの」
そう。スウィート様とアーガイル様は、以前にセレナ母様が着ていたロングドレスが気になっていたらしくてね。
今は三人共宅配ボックス内のアパレルショップ『オーダーメイドヤミン』から購入した、ロングタイプのイブニングドレスを着ているんだ。
実際、綺麗な女性が着飾っているのって眼福だよねぇ。
因みに、三人の格好をより詳細を伝えると……スウィート様は、花の刺繍が見事な透け感のある五分袖のゴールド色のイブニングドレス。
セレナ母様は紫のボレロ付きイブニングドレス。アーガイル様はシャンパン色のシノワズリー風イブニングドレスなんだって。
勿論これはフェイ情報だよ。
そんな煌びやかな三人を温かく見守り、何事なく食事をしているのはサンタリア王太子殿下。
一見、『マンション』に対して普通の態度でいるように見えるけどね……何を隠そう、王太子殿下はかなりの甘党なんだ。
スイーツをこよなく愛し、『マンション』に来るたびにスーパーの隣のブースにある『パティスリー・エデン』でケーキを大量購入して行くんだよ。
あ、これは防犯カメラで偶々見かけて発覚したんだ。勿論、王太子殿下が直接来た訳じゃなくて、サンタリア殿下専属侍従が買いに来ていたんだけど。
そして、この『パティスリー・エデン』は、自警団事務所が出来た時に現れた本格派ケーキ店。
僕の前世の時には少なくなっていた、かなりの甘党を納得させるケーキ店っていえばわかるかなぁ。
正直言って、僕は一口でご馳走様って感じだったよ。アレを一度に二、三個食べれるらしいんだよねぇ……
それで僕が見たところサンタリア王太子殿下の体型が変わってないから、世の女性達からすると羨ましいだろうね。
そして最後に登場のパライバトル陛下は、僕にとっては謎の人だったんだけど……
「フェイ殿。この酒はストロワが用意したな?」
「左様でございます。パライバトル陛下にのみストロワのマティーニをご用意させて頂きました」
「ふむ……!確かに、この味はストロワしか出せぬ味。本当に面白いものだ。単純なのに奥が深い……酒にこんな楽しみ方があったとはなぁ」
どうやらかなりの酒豪みたいだよ。さっきからカクテルグラス数杯飲んでいるのを見てたけど、表情が全く変わってないからね。
後から聞いた話だけど……パライバトル陛下は、時間を作っては20階のオーセンティックBAR・紫炎に行っているらしいんだ。
そこで、ストロワと話ながらお酒を飲むのが最近の息抜きなんだって。
ストロワ本人からは……
「あのお方は博学ですね。会話がとても軽快で且つ嫌味はありませんし、私も楽しませて頂いています」
なんて報告を受けているよ。
フェイと同等……ううん、酒や会話の技術についてはフェイ以上のストロワに楽しいと言わせる陛下って凄い……!
凄いと言えば、毎度お馴染みのボルグド殿下やダノン父様も規格外だし。
……王家や階級の高い貴族って、周囲からかなりの高水準が求められるし、柔軟な姿勢じゃないとやっていけないんだなぁって思い知ったよ。
で、そんな人達の中に13歳の僕が混ざっているんだよ?
僕からすると、違和感ありまくりなんだけど……まあ、なんとか食事を乗り切ったんだ。
食後のティータイムに突入した時に、つい安堵のため息を吐いちゃったけどね。
そんな僕の姿に苦笑しながらも、アーガイル様に感謝を伝えたパライバトル陛下。
「さて……食事も会場も堪能させて貰った。本題に入る前に、アーガイル。見事な主催者としての働きに、まずは感謝を伝えよう」
「光栄ですわ、陛下」
スッと立ち上がって、優雅に礼で応えるアーガイル様。その仕草に目を取られていると、今度は僕に声をかけられた陛下。
「そして、アラタ君。……ああ、いや、君は立たなくても良い。アラタ君の立場は、国にとって今や私よりも上なのだから」
名前を呼ばれ慌てて立とうとした僕より先に、静止を促す陛下。僕に向ける表情は優しかったんだけど……
「———しかし、そんなアラタ君を含め我が国ごと蔑む輩には鉄槌を下さねばなるまい」
本題に入った途端に、パライバトル陛下の王としての威圧感が増したんだ。
陛下のピリッとした雰囲気に緊張感が増した中、陛下に報告を始めたサンタリア王太子殿下。
「我が国の武力の中枢だった辺境伯領を制圧した気になっているのは、ゼリース国の筆頭騎士家の次男ですね。名はゼリア・グリード……アラタ君の実の兄です。
兵力は既に三千を超える程、辺境伯領に集結させている様子。どうやらアラタ君の抹殺も目的の一つだった模様……実に愚かとしか言いようがありませんね」
サンタリア王太子殿下が報告の途中でフッと苦笑したのは、僕の隣で殺気を放つボルグド殿下とダノン父様を見たからだろうね。
うん、正直僕も怖いと思ったよ。でもね、この時誰よりも怒りを抱いていたのは僕の後ろに立つ僕の右腕。
「ご安心下さい。我が『マンション』はマスターの指示の下、全力を尽くしてウェルダント国をサポート致します」
きっぱりと言い切ったフェイの表情を見たミルリック王子は、この後僕に「久々に身体が痺れたわぁ……!」と教えてくれたんだ。
僕は背を向けていたからどんな表情か分からなかったけど、フェイの怒りの感情は伝わって来てはいたからね。
でも、内心では焦ってたんだよ。
ヤバイ……!フェイが心の底から怒っている……!とにかく、落ち着いて、フェイ!
念話でフェイにそう伝えたものの……フェイの怒りは収まらないのは予想出来たから、今度は陛下に僕から進言したんだ。
「パライバトル陛下。僕の力は本来支援特化ですが、だからこそ味方を増強する手段は最強とも言えます。……元身内ですが、構いません。———掃討致しましょう」
僕だって怒っているからね……!やるなら徹底的に行くよ!
改めて決意を表明する僕に、笑顔で頷く陛下。
「その言葉が聞きたかった。では、心置きなく動くとしよう——セレナ。辺境伯領でのその後の動向は?」
「現在敵は、辺境伯領にて地盤を固めている様子。恐らくすぐには行動に移さないだろうと予想されます。既にアラタの諜報員が辺境伯家の軍を解放する為に動いています。指示さえあれば、我が主力軍も動き出せるでしょう」
「ふむ。では、ダノン。敵対勢力が三千以上だがこちらの戦力をどう見る?」
「現在アラタのおかげで一人一人の実力が増しております。更にアラタの支援があれば、我が『マンション』自警団だけでも余裕でございましょう」
「ボルグド、要望はあるか?」
「いえ、アラタの支援があれば必要ございません。……ですが念の為、王宮に残してきた騎士15名を新たに『マンション』専属に移動を要請致します」
「あの15名か……手配しておこう。ミルリック、お前の部隊も動かして貰うぞ」
「喜んで拝命致します……うふふ、滾るわぁ……!」
「……程々にしておけ。——スウィート、アーガイルは王宮の中の監視の目を更に強化するように」
「「畏まりました、陛下」」
「私も王国軍をすぐに動かせるように手配をしておこう。———さあ、アラタ君。足りないものはあるかな?」
パライバトル陛下の見事な采配に感心した僕だけど……これはディゼルだった僕の故国と身内が起こした事。
ウェルダント国にはこれ以上迷惑はかけられないからね。
「問題ありません」
……むしろ気合いが入った僕。
ゼリア兄さんには、そろそろ覚悟をして貰おうかな。
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