首脳会議 1
本日4話目
『よお、クラウド。お疲れ』
『ポーター?夜勤明けじゃなかったか?まだ起きていたのか?』
『いや、一眠りはしたんだ。お前も今日はこの後休みだろ?飲みに行かないか?』
『おいおい、忘れたのか?ダイニングBAR・緋のバーテンダーが居ないんだぜ?今閉まってるだろうが』
『っ!そうか!……忘れてたな』
『だったら、アロンソの家に一緒に押しかけようぜ!スーパーでなんか惣菜買っていけば、エーナさんも喜ぶだろ』
『……お前、ダイナちゃん狙いか?』
『やっぱ分かるか……?最近、アロンソの奴が更にガードを固くしているからさ。このパターンでしか会えないわけよ』
『……アロンソも大変だな。ただでさえこの『マンション』女性が少ないからな』
『そーなんだよ!野郎しかいねえ!だから切実に癒しが欲しい!』
『だが……ダイニングBAR・緋に相当な美人がたまに居るだろう?』
『は!?なんだよ、それ!ちょっと詳しく!』
……あれ?ルスラーンは男性体の姿でバーテンダーをしてなかったっけ?
首を傾げながらベースルームのリビングで自警団事務所の防犯カメラチャンネルを見ていた僕。勿論、フェイとゲンデも一緒にまったりしているよ。
「あー……禁断の花園が見つかり始めたなぁ」
自警団事務所でのやりとりを聞いて「また一人犠牲者が出るのか……」と呟くゲンデ。
そもそも、そういうゲンデもその一人だしね。確か、ゲンデの推しがいるってフェイが言ってたし。
それに、他に女性型だと気が付いているのは、勘のいいスレッドさんにケインさんもだったっけ。
フレディさんなんか「他の騎士達の中で噂になっていたんだが……スカイラウンジ・蒼の副料理長が女性って本当か?」ってゲンデに聞いて来たんだって。
他にも結構見ている人は見てるんだね。ゲンデ情報によると、カルチャールームのスタッフとダイニングキッチン・新の調理人がかなり美人だって評判らしいんだ。
見つける人は見つけるんだなぁ……
あ。それで禁断の花園ってゲンデが言っている理由は、所詮『マンション』AIだからだって。
「どんなに美人で、どんなに魅力的でも『マンション』AIなんだよ……!だがしかし!!!それでも注目してしまう男の性よ!!!」
なんて言いながら騎士団の人達とその事を話題にしながら楽しく飲んでいるのは、フェイから聞いてるんだけどね。
「でもさぁ……本物の女性であるスティール家や王家のメイドさん達もいると思うんだけど……?」
そう、僕の周りには結構女性いるんだよ?
自警団員の家族もだけど、スティール家の女性陣とメイドさんでしょう?王妃様や王太子妃様やティニア様とそのメイドさん達もいるからなぁ。
そんな野郎だけなんて思わないけどね?
「それはアラタだけ!こういっちゃなんだが、スティール家と王家のメイド達は高嶺の花なの!俺達が気軽に話しかけられる存在じゃないの!」
僕の言葉はゲンデから思いっきり否定されたんだけど……そうかなぁ?みんな親しみ易くて気楽に話せるのに。
なんて事思ってたら、フェイから新たな情報が出てきたよ?
「ですがスティール家メイドを『牡丹』組、王家メイドを『薔薇』組として、それぞれファンクラブ会員がいると報告が来ていますが?」
「ああ、それは新しく入って来た騎士達だな。奴らもバックにダノン様や王家がいるのを理解しているから、そうやって楽しんでいるんだろうよ」
「おや?メイド達の間でも『騎士団』と『自警団』でファンがいると報告もありますよ?現在ランキング1位のゲンデさん?」
「っ!!ちょっと待て!フェイ!そこ詳しく!」
そんな感じで、ベースルームでも自警団事務所と会話の下りが一緒で僕も笑っちゃったけどね。
でも、ちょっとだけゲンデを良いなぁ……と思ったのはフェイにバレてるだろうなぁ。まあ、僕はまだ子供だから仕方ないだろうけど。
それより、そろそろ時間になったかな?
「フェイ。そろそろ時間になったんじゃない?自警団事務所からボルグド殿下とダノン父様が出て行ったよ?」
「そのようです。という事で、ゲンデの話はここまで」
「なにっ!これからだってのに!」
「ゲンデ、仕事の時間です」
「くっそ!分かってるよ!」
悔しいそうに言いつつも、スッと表情を変えて立ち上がるゲンデ。
こう言う真面目な所をメイドさん達は見て評価しているんじゃないかな?やっぱり、僕の護衛が認められると嬉しいよね。
「じゃ、行こう!」
スッと立って頷くフェイとゲンデを伴って僕が向かう先は、この上のスカイガーデン・翔なんだ。
あ!その前にね、一個増えた事があるんだよ!
なんと僕とフェイとゲンデ専用エレベーターが一基出来たんだ!これは嬉しかったなぁ。待ち時間がゼロだし。
因みに、騎士達はエレベーターより非常階段で移動しているから、実のところ普段そんなに混まないんだけどね。
でも、フェイによると……住民増加と更なる増加見込みに伴い、これも僕の安全対策の一つなんだって。
僕のスキル内だから大丈夫なのにね。っと着いたかな?
ポーン……という到着音と共にエレベーターのドアが開くと……なんと!僕の目の前には満点の星空が広がっていたんだ!
「あれ?まだお昼だったよね……?」
足元を照らす照明しかないせいか、吸い寄せられるような見事な夜空を見上げながらエレベーターを降りたらね。同じく魅入っている殿下とダノン父様が目の前にいたんだ。
「こーりゃ見事だな」
「なかなか趣のある出迎えですな。流石はアーガイル様」
上を見上げつつも僕らが来たのが分かったのか、僕らに顔だけ向けて声をかける殿下。
「お、アラタも来たか」
「はい。でも、スカイガーデン・翔ってこんな事も出来たんですねぇ」
「スキル保持者が驚いているって事は、フェイがアラタを喜ばせようとしたんだな?」
「その通りです。本日の会場設定に付いては、既に主催のアーガイル様より報告がございましたので。何より、マスターが喜んで下さる事が私の喜びですから」
「うーわー……出たよ。フェイのアラタ優先が」
「ハッハッハ!流石はフェイ!」
呆れる殿下と同じように隣でゲンデもまたフェイに呆れているけど、こんなサプライズは幾らあっても嬉しいよねぇ。
ダノン父様に至っては豪快に笑いながら頷いているし。
こんな感じで騒いでると、なかなか来ない僕らを迎えに来たんだろうね。ブライアンさんが奥から歩いて来たよ。
「皆様、お待ちしておりました。会場へとご案内致します」
優雅な仕草で僕らを先導するブライアンさん。
その後ろで足元がライトアップされた道と満点の星空を堪能しながら歩いてくとね———
湖の中心に向かって続く道の先には、優しくライトアップされた東屋。
夜空だけではなく、湖面にも映し出される星々。
そして……なんと東屋の上に光のカーテンも現れたんだ!
「これは……!」
「ほう……!」
「うわぁ!凄い……!」
これには僕も含め殿下もダノン父様も息をのんだよ。
「お待ちしてましたわ。さあ、中へどうぞ」
感激して動けなくなっている僕らを見て、にっこり笑顔で迎えてくれたのは王太子妃のアーガイル様。
ブライアンさんが僕らの後ろに付いて、今度はアーガイル様が僕らを先導しながら教えてくれたんだけどね。
どうやらアーガイル様と王妃のスウィート様は、本当によくこのスカイガーデン・翔を利用してくれているようで、どんな事ができるのかフェイに風景パターンを聞いていたんだって。
そしてティータイムの度に景色を変えて楽しんでいたらしいんだけど、今回また全員が集まれると聞いて僕を含めてサプライズ食事会を主催してくれたんだよ。
本当にこんな見事な景色も堪能できる食事会なら、何回でも出席したいよね!
……但し、食事の間の会話は雲行きが怪しくてね。
「これで話し合う内容が、ゼリース国による辺境伯領の占領についてじゃなけりゃ良かったんだけどよ」
景色を見ながら悔しそうに呟いた殿下。
そうなんだ……!僕らが移動している間に、ゼリース国……しかも僕の実家の軍が動いたみたいなんだよ。
どうやら先行した諜報員達からの報告によると……まず先に盗聴スキル持ちのクウィラさんを不意を付いて拘束して、次にアインス様を拘束したみたいだね。
同時に、メイドさんや執事さんや騎士さん達数名も拘束されたから邸の残りの者達は抵抗出来なかったらしくてね。
数人は犠牲者が出てしまったらしいけど……一応、辺境伯邸の人達も住民も生かされてはいるみたい。監視付きでね。
あ、東屋に着いた。
「……思う事は色々ありますが、まずは食事を頂きましょう?スカイラウンジ・蒼のオランが腕を奮ってくれたんですのよ?」
アーガイル様が促す先には、既に席に着いている王太子殿下とミルリック王子とスウィート王妃様。あ。セレナ母様も、もう先に着いていたんだね。
「後はお義父様が集まれば、開始出来ますわ———ええ、辺境伯領には、一時辛抱して貰いましょう」
にっこりと笑うアーガイル様の言葉に、更に笑顔になる王族の皆さんとセレナ母様。
そして、その直ぐ後に登場したパライバトル王様の笑みも深かったなぁ。
「待たせたな、アラタ君。そして、皆にも随分待たせてしまった。さあ、食事も始めようではないか———楽しい食事をな」
……なんか少し背中が寒くなったけど。
食事……出来るんだよね?と思わず湖面に映るオーロラに問いかけてしまう僕なのでした。
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