AI諜報員の実態 殿下専属諜報員トッド視点
本日3話目!
……くっそぉ。俺が遅れを取るとは……!
「ボルグド殿下の諜報員ゲット〜!」
「くっ!離せ!」
コイツ……!確か[マンションセキュリティシステム]から生まれた諜報員だった筈だが……何故、暗部経験のある俺を拘束出来る!?
「あらぁ?恥ずかしがらなくても良いのにぃ」
「ルスラーン、揶揄うのは寄せ。おい、お前。此処で暴れるなよ?私達は、お前達の補佐をしろとも命令されているんだ」
何……?そんな事を言ってはいなかった筈だ……!俺は最後まで確認してから出た筈なのに……!
というか……立ち止まった途端にいきなり捉えられ上空に引き上げられたようだが……此処は例の輸送機の内部だろうか?
思ったより広い……!それに現在此処にいる諜報員は7名か……
「ふむ。黙秘は肯定と受け取ろう」
「プリストル隊長。彼らが私達の補佐では?」
「ベル、人間というものは我らより繊細だ。だからこそ、我らが補佐に回った方が良い」
「流石はスカイラウンジ・蒼の副料理長殿。よくスティール家と接しているが故か?」
「……お前もそう変わらんだろう?既にカルチャールームで待機していたではないか」
「ふっ、これからだという所だったがな」
「あらぁ?ベルはマスターがあれだけ言われていても許せるのぉ?」
「それは話が違うだろう?我らのマスターを貶す輩は思いしらさねばな?なあ、ジョリー?」
「当然」
「ジョリーちゃんはそうねぇ。貴方マスターとの付き合いが長いものね?」
「ドクターとして当然。フェイ様から連絡があった。ようやく私にも部屋が与えられる」
……会話からこのメンバーの情報を得ようと黙っていたが……コイツらは先程スキルから生み出されたのではないのか?
しかも、どうやら人間のように個性がある……!
「あらあら。どうやら私達探られているわよぉ?」
……何故気付かれた?俺は目を閉じて黙っているというのに……!
「諜報員なら当然かしらぁ。ところで貴方、自分の認めた存在にしか名前を明かさないらしいじゃない?面白いわぁ。だったらまずは私達を覚えてくれるかしらぁ?」
くそっ、俺の事も既に調査済みかよ。だったら開き直る方が都合がいい……か。
「どうせ降りれないんだ。勝手にしろ」
「ふふっ、勝手にするわねぇ。じゃあ、まずは運転席にいる二人を紹介するわぁ」
「ああ、ルスラーン。私から言おう。任務中だから顔を向けて挨拶出来ず済まないな。私が操縦士のプリストルだ。普段は『マンション』20階のスカイラウンジ・蒼の副料理長をしている」
どうやらコイツがこの機体の中での頭か?頭に被り物をして目も隠しているが、恐らく男だろう。声は若干高いがな。
「はいはーい!次は私ね!副操縦士のアヴィアよ!普段は『マンション』2階のダイニングキッチン・新で調理担当してるよ!君、たまに騎士に扮装して食べに来てたでしょ?美味しかった?」
な!?ボルグド殿下にさえ気付かれていなかったのに、見破られていたとは……!という事は、他の奴らも見抜かれているってわけか……
「……ああ、美味かったな」
「ふっふっふー!まだまだスカイラウンジ・蒼には敵わないけどね。味には自信あるよー!また来てね!」
操縦士のプリストルの隣から顔を出していたアヴィアという副操縦士は、操縦士と同じ被り物で顔と目が見えないが、口元や口調から女性型だという事がわかる。
実際、フェイというアラタの助手から真夜中に魔力登録を提案された時は驚いたが……やって良かったと仲間内では評判だ。
飯が美味けりゃやる気にも繋がるからな。
「じゃあ、次は私ねぇ。私はカーゴマスター兼メカニックのルスラーンよ。荷物の積み込みと修理は私の担当よぉ。私は普段『マンション』の2階のダイニングBAR・緋を担当しているわぁ」
「な!?馬鹿な!?あそこの担当は男だった筈だ!」
「うふふ〜、バーテンダーの時は男性体が良いのよぉ。こっちが本当の姿なのぉ」
……コイツも被り物をしていたが、接触した際明らかな女性の身体付きだったからこそつい驚いて声を上げてしまった。
やはり『マンション』内も油断出来ないか……
「なに、マンション内ではゆったり過ごすが良い。あそこは安全だ。我がマスターの能力は強力だからな」
俺の思考を読んだのか話に割り込んで来たのは、帽子を被った30代くらいの女性型AIだな。黒いメガネで目は見えないが、恐らくかなりの美人だろうと予想がつく。
正直言ってかなり俺の好みだ。……人間だったらな。
「うふふ〜。どうやらこの子、ベルが好みなのねぇ。見惚れているわぁ」
くそっ、ほんのちょっとの表情の変化まで読み取られるか!
「おや、光栄だな。だが、私の好みは子供でな。大人は対象外だ」
「ちょっとぉ〜、変な事は教えなくていいと思うの〜」
「ルスラーン、これは大事な事だ。ああ、済まん。自己紹介がまだだったな。このMAー22ー1機を担当する飛行隊長のベルだ。普段はカルチャールームで教師を担当している」
なっ!なんだコイツら……!隊長のベルが黒いメガネを外すと相当な美人じゃないか!ルスラーンという奴も被り物を脱いだら、長髪のとんでもない美人だとは……!
これは騎士達に見つかると騒ぎになるな。確かに、『マンション』内は男性体が都合が良いだろう。
「ルスラーン邪魔。次は私。私はドクターのジョリー。『マンション』でも医師を担当している。何かあったら私に言って」
コイツも相当な美人だが……あの『マンション』に医師など居なかった筈だが……?
「ジョリーちゃんは古株よぉ。フェイちゃん同様、マスターに『マンションスキル』が発現した時から《《存在は》》していたもの」
すぐに席に戻って行ったジョリーという医師の代わりに、俺に補足情報を告げるルスラーン。……いや、あまり近づかないでくれ。
「ああ、ごめんなさいねぇ。貴方、既に大事な女性が居るのよねぇ。想いも告げられないとっても切ない関係だけどぉ」
「!!」
何故知って居る!?これは仲間にも知られていない筈だ!!
突然の暴露に表情を隠しきれない俺に、理由を教えてくれたのは残りの二人。
「フェイ様に隠せる事は何もないのです」
「フェイ様は私達の憧れなのです」
……待て。この二人、顔が一緒で表情もないから判別が難しい。
「こ〜らぁ、ノールにフィアット。ちゃあんと挨拶しなさ〜い」
「はい、ルスラーン様。私、ノールです。フィアットとは双子です。これからカルチャールームで働く予定です」
「同じく、カルチャールームで働く予定でノールと双子のフィアットです。MAー22ー1機内では私達も乗員ですが、地上では貴方以上の動きが出来ますです」
コイツっ!俺以上に動けるだと……!!!
「フィアット、わざと亀裂を作るな!ノールも横で頷いて煽るのは止めろ!」
「「はいです。ベル隊長」」
「済まないな。この二人はまだ生まれて浅い。だが、協力は惜しまない事を約束しよう」
「……本当だろうな?」
「ああ、お詫びに伝えておこう。残りの輸送機二機にもボルグド殿下の諜報員を乗せている。ゼリース国グリード家行きにはラルドン、へーゼル国行きにはシュベックという名の男性をな」
「何っ!」
ラルドン、シュベックの二人は、俺より先に殿下に仕えていた奴らだが身体能力は俺とほぼ同等……!
何よりラルドンは気配察知スキルに長け、シュベックは遠視スキルがあった筈。アイツらをどうやって拘束したんだ……!
「我らは即座にAI同士で連絡を取り合う事が出来る。そして、人ではないが故に睡眠も休憩も食事も必要がない。擬態も得意分野だ。さあ、どうだ?味方にするなら心強いと思うが?」
上から目線の物言いが気になるが、容貌が良いだけに笑顔の破壊力も凄まじいな。
いつもの単独行動よりは……協力した方が良さそうだ。
「ああ、わかった。宜しく頼む。……俺はトッドだ」
「ああ宜しく頼む、トッド」
ベルと握手を交わしこれからの動向予定を確認しようとすると、どうやら『マンション』マスターであるアラタからの連絡が入ったらしい。
『あー、あー、マイクテストマイクテスト。只今マイクのテスト中です』
『マスター、マイクテストは必要ありません』
『……なんかやりたくなるんだよねぇ、これ。えー……輸送機に乗っているみんな。一つだけ言わせてね。絶対無理はしない事!後、全員無事に帰ってくる事!これだけは約束してね!』
『マスター、二つになってますよ?』
『あ、本当だ。でも良いの!大事な事だから!……ん?なんです、殿下?……それだけ伝えればわかるんですか?
えっと、輸送機に乗っている殿下の諜報員さん達に、殿下からの伝言伝えますね。
「気付かないとでも思ったか?」
だそうです?え?本当なんの事です、殿下?』
『マスター、私に代わって下さい。———此処からは業務連絡です。MA-22-2とMA-22-3は最高速度に切り替えて下さい。MA-22-1はまもなく到着です。ステルス機能のまま辺境伯邸上空へ移動して下さい。……盗聴スキル持ちのクウィラの保護を優先するように』
ブツッと音声が切れた途端に笑い出す乗組員達。俺もまた殿下の伝言を聞いて思わず「フッ」と声を出してしまった。
……恐らく、殿下は俺たちの数少ない息抜きを見過ごしてくれていたんだろう。
部下想いの殿下らしいと思えば、つい口角も上がる。
帰っても気楽に『マンション』内を歩けると思うと正直、やる気が上がるというもの。
それはあちらも同じなんだろう。
「マスターらしいわぁ!AI諜報員に向かって無事に帰って来いよぉ?」
「流石我らがマスターだ!」
「うん。今日もマスターの体調問題無し」
「フェイ様、優しい」
「フェイ様、流石」
機内後部が温かい雰囲気に包まれる中、突如プリストルから緊迫した声が上がる。
「総員降下準備!到着目標にて異変あり!」
「プリストル!あれはどう見てもグリード家の軍じゃない?」
「そうだ!マスターの記憶と一致する!アヴィア!全員降りてから『マンション』へMA-22-1を返還する用意を!」
「了解!」
「ベル!高度を上げて辺境伯邸上空で停止飛行させる!」
「了解!ルスラーン!全員を一度で降下させろ!」
「はあい、ベル隊長。任せて」
緊急事態の中、ルスラーンが空間から取り出したのは……光る大きな籠、か……?
「はーい、全員乗ってねぇ」
10人は余裕で入る光る籠の入り口を開けて、指示を出すルスラーン。……おい。まさか背負うのか?
不安になりつつも指示に従い光る籠に入ると、どうやら『マンション』と似た空間へと繋がっていたようだ。
隊長のベルによると、生き物をも輸送出来るカーゴマスターという空間使いがルスラーンらしい。
正副操縦士の二人以外が乗り込みシュッと入り口が閉まると、機内の景色から白い空間に変わった。
現在ルスラーンが直接降下中だという。
輸送の為ならどんな高さからも降下出来るとは、流石規格外のマンションAI。
「さあ、トッド。我らを使ってみせろ。如何様にも動いてやろう」
つい感心してしまったが、そんな俺の様子を見て隊長のベルがニヤっと笑って煽って来た。
———ならば、遠慮なく使わせて貰おう。何せ、グリード家の軍が動いているんだ。
この空間から出たら、しっかり働いて貰うぞ。
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