旅は道連れとはいうけれど……
——— 場所に止まってから、一カ月はあっという間に過ぎたんだ。
変わった事といえば、ゲンデが身体強化が出来る様になった事。
「養われっぱなしじゃ、面目丸潰れだからな」
なんて言って努力してたんだよ?
それもこれもコンビニの本で魔法の使い方や身体の鍛え方、護衛の仕方ってハウツー本があったからね。
二人共時間たっぷりあったし色々試してみたら、僕は付与魔法が使える様になったし、毎日使い切るようにしていたら魔力も上がったからね!
今のステータスはこんな感じ。
アラタ(ディゼル) 13歳 男 人間
HP 150/150
MP 500,000/500,000
スキル マンション
取得魔法 付与
開放設備 オートロック 宅配ボックス コンシェルジュ 低層マンション
称号 転生者 創造神の加護
あとね、マンションの詳細はこれ。
【マンション】
アラタの記憶が蘇った事により使用可能になったスキル。
マンションに関わるありとあらゆるものが魔力対価で使用可能になる。
現在使用可能
[居住区]
・ベースルーム(2LDK/トイレ/バスルーム付き)
[設備/追加居住マンション]
・オートロック 取得済み
・宅配ボックス 取得済み
『大型スーパーマーケット 取得済み
ドラッグストア 取得済み
家具・寝具 取得済み
電化製品 取得済み
コンビニ 取得済み 』
・低層マンション[2階建て 1F ワンルームタイプ/2F 2LDK 全戸数20戸] 取得済み←MP400,000だった。こっちを先に取得したんだ。
・マンションコンシェルジュ 取得済み←MP450,000だった……最近やっと取れたんだよ。
・分譲マンション MP700,000
・マンションカスタム MP800,000
[保険]*対象を選んで下さい。(入居者のみ使用可能)
・耐震 MP1,000
・対物 MP1,000
・火災 MP1,000
・人災 MP1,000
・生命 MP10,000
*致命傷を負っても回復する。
・医療 MP10,000/100,000
*一日回復魔法(小)が使用可能/回復魔法(大)使用可能
[入居者追加]一人に付きMP10,000
増えたでしょう!頑張ったからね!
因みに追っ手はどうなったかというと、篭って三日目にやっぱり来たんだよね。そして街道脇のボロ切れを見つけて、辺り捜索して帰っていったんだ。
とりあえず、これで少し時間が稼げる筈!
そう思った僕らは、途中の村や街をスルーして一直線に国を出る事にしたんだ。
僕の家は辺境に近かったからね。
でも身分証がないといけないって事で、他領の冒険者ギルドで僕はアラタとして、ゲンデはゲンで作ったんだ。
それで、今、僕らは街馬車に揺られながら移動中なんだけど……
「ゲン……尻が……!」
「あー、アラタ鍛えてねえからなぁ」
「ならば、アラタにはこちらを」
フェイがスッと取り出したのは、[衝撃吸収クッション]。クッションは宅配ボックスで買ったもの。それに僕が衝撃吸収を付与したんだ。
「あー、流石フェイ!ありがとう」
「あ、狡いぞ!それなら俺にも出してくれ!」
「ゲンは鍛えた方が良いかと」
「マジか……!」
とはいえ諦めずにフェイに頼み込むゲンデ。フェイは表情を変えずに頑張って下さい、と断っている。
まあ、そのうち出してあげると思うけどね。
さて、このフェイって誰?って思うでしょう。なんと、マンションコンシェルジュなんだよ!
ゲンデの希望で女性の姿をしているけど、姿は自在に変更できるんだって。マンションで作ったものは自在に取り出し可能だから、アイテムボックス持ち設定で、フェイも冒険者登録しているんだ。
ただこのフェイ、今は美人でスタイルもいいもんだから、道中結構絡まれるんだよ。だから僕は男性体でいいっていったのに……
「せめて目だけでも楽しませてくれ!」
ゲンデが散々華がないだの、ムサイ男世帯だの文句が出るからフェイは女性体のまま。
でもコンシェルジュって荒事も対応するんだよ。実は一番体術に長けているのはフェイなんだ。よく休憩所でゲンデと特訓してるんだよ。
あ、僕の話し方も13歳の時のアラタに引っ張られて今はこんな感じ。まあ、記憶には地球でのアラタの記憶があるから、合わせたら42歳だけどね!
ま、それは置いといて……
今の乗客は家族連れ3人と四人連れの冒険者(男二人、女性二人)だからマシだけどね。いつもなら、フェイの威圧炸裂するから大変なんだよ。
今回護衛の冒険者も誠実そうで当たりだし。
このまま目的地まで行けるかな?って思っていると、まあ、うまくいかないんだよね……
「ん?なんだ?前方に騎士らしき人いねえか?」
結局粘り勝ちしたゲンデが窓の外を覗き込むと同時に、馬車がいきなり止まったんだ。
なんだ、どうした?とざわめく車内。すると、扉が開き騎士の人が全員出ろと命令してきたんだ。
クッションをフェイが収納し外に出てみると、物々しい装備の騎士様達が馬車を警備してたんだ。
その中の一人の騎士が御者の人に何かを聞いている。
用件を聞いた御者さんが青い顔をして戻ってきて
「回復魔法ができる人を探している?」
「なんで?お抱え術師がいるだろう?貴族様には」
「は?お忍び?そりゃまた厄介な……」
ボソボソと相談する乗客達。3人家族は魔法が使えないみたいだし、乗客の冒険者パーティでは女性回復士がいるらしいけど、自信がなくて無理無理と首を振っている。
護衛の冒険者パーティは攻撃重視のメンバー構成で下級ポーションくらいしか持っていない。となると……
「僕らしかいないかぁ……」
丁度僕が[保険]で医療(大)をかけていたものだから、3人で貴族様に自己申請する事にしたんだ。
御者さんと一緒に騎士様達に伝えにいくと、すぐさま身分証提示を言われ、念の為治療が終わるまで身分証を預かると言われた僕達。
何かあったら即座に確自の手元に戻るように付与魔法かけているから、別にいいんだけど。
回復魔法が使える者だけ、という事で僕だけが立派な馬車に連れて行かれたんだけど、ゲンデは僕の護衛を断られて機嫌が悪いし、フェイも僕の側に居られなくて表情が更に無になってる。
でも二人共すぐ駆けつける、と目で合図をくれたから、僕はそんなに心配してない。
僕が連れていかれた馬車の中には、顔色が青く、苦しそうな息遣いの20代くらいの青年が居た。
でも身体は結構しっかりしていて、顔も普通にしていれば整っている方だろう。
それより気になったのは髪色だ。
僕の国では赤や青や金髪といった、前世とは違う彩り豊かな髪色の人達はいるけど、銀の髪が一筋髪色に加わっているのは高貴な方だけ。
最近フェイに聞いたのは、確かこれから向かう国の王族がそういう髪をしていた、と言う事だったけど……
「この、者が、回復術師か……?」
うん、こりゃ正解だね。隣国の王族で体型がよく、紫の目は第三王子だったかな……
「幼い、が……できる、のか……?」
「団長!今は話さないで下さい!おい、解毒だ!解毒をこの方にかけてくれ!」
侍従に支えられてやっと、と言う感じだ。
僕は声に出さずに医療解析を王子にかけると[ポイズンブラッディベアの毒]と出た。
体長3メートル、爪に毒があり、凶暴なBランクの魔物。でも、正直言ってこの辺りにいる魔物ではない。
その辺は関わるつもりもないからさっさと解毒をかけてしまおうと思う。
「【デトックスヒール】」
普段は言わないけど、見知らぬ人の前で詠唱破棄なんて危険な事はしたくない僕はさっさと治療を済ませる。
僕が唱えると、急激に顔色が変化していった王子。って言うか殿下って言った方がいいのかな?
まあ、いいや。終わったし帰っていいよね?
……なんて問屋がおろす筈もなく……
「ほう……、貴族に見えたが冒険者であったか。で、行き先はヴェルダントか。丁度良い。乗っていけば良い」
「いえ、ご迷惑になると思いますので」
「なあに、女性もいるなら人数は多い方がいいだろう。気兼ねせずに乗ってくれ。話し相手が欲しかった所だったからな」
流石に二度は断れなくて、国越えをまさかの王族と一緒にする事になった僕ら。
乗り合い馬車は、騎士に言われてサッサと出発したらしいし。
逃げ場を無くした僕らは、第三王子と従者がいる車内で居るわけだけどさ。
ゲンデは我関せずになってるし、フェイは僕ありきで反応するしで、王族の相手をするのは主に僕。
うーん……僕らだけで行動した方が、マンション使えるのに……!
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