再び辺境伯領へ移動開始
あれから他の世帯の家にも挨拶に行ったんだけどね。流石に飲み物を飲み過ぎてお腹も気持ちもタポタポになった僕。
家庭訪問の先生の気持ちがわかった気がするよ……
なんて、前世の事を思い出したその日の夕食は余り食べれなかったけど……寝る前にフェイに頼み事をした後ベッドに入ったら、昨日はすぐ眠りに落ちたみたい。
だって、気がついたらもう朝の10時になっていたんだよ?
「うわぁ!寝過ごした!」
バタバタと支度をしてリビングに行くと、フェイとゲンデが防犯カメラ映像を見ながら僕を待っていたんだ。
「よお、アラタ。やっと起きたか」
「マスター、おはようございます」
ゲンデはゆったりコーヒーを飲み、フェイは何か広告のような紙を手にしながら僕を迎えてくれたんだけどね。
TVには、現在自警団事務所でダノン父様と殿下と騎士達が話しあっている映像が映されていたんだ。
……という事は、やっぱり出発しちゃったかぁ。
「おはよう……」
がっくりとゲンデの隣のソファーに座ると、すぐにお茶の用意をしてくれるフェイ。
え?何で落ち込んでいるのかって?
今日は辺境伯領へ出発の日だったから、殿下から朝の全体会合の時に挨拶頼まれてたんだ。
……それをすっぽかしちゃったんだよ?殿下に申し訳ない事しちゃったなぁ。
「マスターの代わりに私とゲンデが出席して来ましたので、ご心配なく」
フェイがそう言ってコトリとコーヒーとクロワッサンサンドを持ってきてくれたのは嬉しいけどね。
マンションマスターとして、しっかり果たしたかったなぁ。
「仕方ねえよ。昨日の頼み事が原因らしいぞ?」
まだ落ち込む僕にゲンデがフォローしてくれたんだけどね。
理由がピンと来なくて顔を上げてフェイに聞いてみたら……どうやら僕のMPの完全回復の為に起きられなかったんだって。
それなら仕方ないかと思い直していると、TVから殿下の声が聞こえてきたんだ。
『良いか?これからマンション内での生活が多くなるが、鍛錬の時間もきっちり組み込むから安心しろ。だが……!自警団が自ら遅刻や不正、勿論騎士同士でいざこざがあったら問答無用でここに叩き込むからな!』
ん?殿下が騎士達に手に持っている紙を見せてるけど、あれはなんだろ……?
『……殿下、これって何ですか?』
『あのセラさんが申し込んでいるマナー講習会だ。更に人間性の向上とお前らに足りない集中力と忍耐力が鍛えられるらしい』
あれ、もしかして……
「フェイ?殿下が持っているのってカルチャールームの講義の予定?」
「いえ。殿下がお持ちなのは茶道講座のチラシです。セラ様が興味持たれていたのを、殿下が質問して聞いていたようですので」
「そっか。と言う事は、朝にはもうカルチャールーム設置出来てたんだね」
「はい。そして私の一存ですが、カルチャールームの前には各講義のチラシをご用意しております。何より皆様にとっては馴染みのない講義も多数ございますから」
……うん、そうだろうね。その気遣いは良いと思うけど……殿下ってば、よりによって騎士達に茶道って……
あ、これでわかったかな?
実は昨日、1Fにカルチャールームの設置を頼んでいたんだよ。
カルチャールームには、この世界の貴族マナーやダンス、美術や音楽、教養や資格を取る講座があるからね。
自警団の家族達にはまずは学んで貰いたいって考えたんだ。
だけどさ……何故殿下、わざわざ茶道を選んだかなぁ?確かに日本文化も組み込まれているとは聞いていたけど……
『……だったら、殿下とダノン団長も一緒にやるんですよね?』
『そうですよ。部下に手本を見せてこそ上司じゃないですか?』
『まさか、部下だけにやらせるつもりじゃないですよね?常に人間は取り入れるものだって普段言ってますし』
『集中力と忍耐力は騎士にとって大事なんですよね?』
あー……ほら反撃された。元々の殿下専属騎士さん達だから、遠慮ないし、言われるだろうなぁって思ってたんだ。
殿下とダノン父様顔見合わせているけど、どうするんだろ?
『……お茶飲むだけだろ?』
『殿下、マナーはなかなか辛いものですぞ?』
『そりゃ、ダノンだからだろ?』
ボソボソ話しているけど、防犯カメラにはまる聞こえだね。
『わかった。その時は手本見せてやる』
『……仕方あるまい』
二人が返事をすると、ガッツポーズをする騎士達。
「どうやら騎士の皆さんはマナーという言葉だけで嫌がっているようですが、いざ茶道を体験するとなると皆さんの講義の後の姿が簡単に予想できますね」
フェイが映像を見ながら騎士達の考えを読み取っているけど……僕も殿下やダノン父様の未来が見えた気がするよ。
「ところで誰が教えるんだ?」
あ、ゲンデ。良いところに気がついたね。僕も確認しようと思っていたんだ。
「カルチャールームには専属のAI、カルチャーコンシェルジュのカルが在籍しています。バーチャルキャラを立体化させた講師達を駆使して、それぞれの講義を行いますよ」
ゲンデはわからない言葉がいっぱいあって、フェイに質問しまくってたけど、僕は納得。そうすればAIの節約になるもんね。
一応説明するとね。基本マンションは僕のスキルでしょ?日々のスキルを活用するのには、毎日僕のMPが使われているのは予想出来ていたよね。
但し、今の運営をする上での毎日の使用魔力は1,000だけ。かなり少ないでしょ。理由は、使用魔力増幅と魔素回収と魔力蓄積機能がスキルにはあるからね。
マンションのAIはその中の魔力で動いているんだ。一応AIが増えると微々たるものだけど毎日の使用魔力が増えるから、フェイも気を使っているみたい。
ん?フェイもその一人か?って?
フェイだけは違うんだ。フェイは、マンションスキルの初期設定でスキルに付随された完全自律型AIだから。
今となってはほぼ僕らと変わらない存在に見えるけどね。僕の大切な相棒だし。
「あ、そうだ。フェイ、もう一つはどうなった?」
「はい。其方も既に設置が完了しています。防犯カメラチャンネルを22にしてみて下さい」
僕がリモコンでチャンネルを切り替えると、映し出されたのは同じく一階の空間。
「お?本がいっぱいあるって事は図書室か?」
「そう。それに、ワーキングルームを図書室に追加しているから、本を読めるだけじゃなくて、ボックス席で勉強も出来るようになっている筈なんだ」
「勿論、設備は各種ありますよ。フリースペースにバーチャルオフィス、リモートスペース、コミュニティスペースに簡易キッチンもついていますから」
僕の説明に更に補足するフェイだけど、ゲンデにとってはまた訳がわかんなくなっているみたいだね。
「あー!またわかんねえ!でもここにも専属説明役が当然いるんだろ?」
「勿論司書で管理人のAI、サーチが在籍していますから心配いりませんよ」
「ってあれ?もうグエルさんやブライアンさん、イヴァンさんの姿があるよ?」
ゲンデに説明するフェイの言葉を聞きながら映像を見ていると、既に利用者がいるみたいで驚いた僕。
「彼らは知識を取り入れるのに積極的ですから。いい指南役にもなります」
フェイさんや。殿下やダノン父様の部下もちゃっかり利用するつもりですか?
「利用出来る存在は活用しない手はないですからね」
うん、何も言うまい。って、そういえば……
「フェイ、図書室の本の種類って結構あるんだね?」
「勿論です。各種資料や実用書や参考書から、雑誌や小説や絵本コミックまで揃えています」
「通りで広い筈だよ……図書室より図書館みたいだよ」
「それでも少ない方ですよ?ニーズに合わせて色々試行錯誤していくようですし」
……ニーズねぇ。……まさかアダルト的なものはないよね……?
「マスター、ご心配は要りませんよ。……恐らく」
「恐らくなの?!」
「サーチに任せている分野ですから」
う〜ん。まあ、僕のスキルだから制御して貰うようにするけど……ね。
なんてフェイと会話していると、ゲンデが混乱し過ぎてキレたんだ。
「お前ら俺にもわかるように会話しろ!!!」
ゲンデの様子に思わずフェイと顔を見合わせて笑ったけどさ。
うん。これでまずは教育環境も整ったかな。後は、自警団の家族を連れてきて試して貰おう。
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