マンション自警団選抜
———なんて、パライバトル王様に協力すると宣言したものの……あの会合から早一週間。
蓋を開けてみると、いつもと変わらない『マンション』中心の僕の生活。
でもね、変わった事はあるんだよ?
まずは王家の皆さんがちょくちょく『マンション』に休みにくる様になったこと。
「セレナとこうしてお茶が出来るなんて、嬉しいわ」
「スィート様と時間が合いませんでしたもの。それに、従兄弟のアーガイルとこうやって以前の様にお茶が出来るのも、アラタのおかげですわ」
「セレナお姉様とお義母様とこんなに素敵な場所でご一緒出来るなんて最高ですわ!」
スカイガーデン・翔の東屋で優雅にお茶をする三人。今日は鮮やかな一面のコスモス畑の日だね。
爽やかな風とコスモスの上を撫でるように雲が流れて行く様は、風車がアクセントにもなって見事なんだ!僕の好きな景色でもあるよ。
そして、意外なところにハマったあの人。
「きゃあ、可愛い!何この私好みの子達!しかも、お買い得よぉ!」
「……一つ一つに包装がされていて、更に絵までついている菓子とは……!なんて手間暇をかけているんだ!それでこの値段……?」
わかったかな?スーパーマーケットのお菓子売り場でいるのがミルリック王子。従者のエルガさんもその数と種類に驚いているよ。
手に持っているのはすみっこが好きな子達だね。他にも色々カゴに持っているけど……うーん、こんなに食べるのかなぁ?
「……ちょっと!エルガ!見て頂戴!」
色々なものを買い占めてホクホクレジに来たミルリック王子がとうとうアレを見つけたみたいだね……
「何なの!この可愛い子達は!?丸いものの中にいっぱい入っているわ!えっと……一回銅貨5枚?このつまみを回せば良いのね?」
「殿下、何をやって……?それ、どうやって中身を取り出すんです?」
「……待って、こういうのはよく見るのよ……!……!!見つけたわ!これよ!」
カパッ。コロン。
「なんとも小さな食器ですね。とても精巧な作りで……凄いな」
「どうしましょう、どうしましょう!こんなに種類があるのよ!?」
うん、どうやらガチャを見つけたみたいだね。しかもミニチュアシリーズ。何気にすみっこが好きなキャラクターもあるし。ミルリック王子しばらく動かないだろうなぁ……
アレ?シネマスプリング、今ライオンが王になる作品やってるんだ。あ、凄い真剣にティニア王女とトレイル王子が見ているね。
メイドさんや従者さんも釘付けだ。うんうん、面白いもんねアレ。音楽もいいし。
「マスター、防犯カメラの性能はいかがですか?」
そう言ってコトリとテーブルにコーラを置いてくれるフェイ。うん、ありがと。
「流石だね。かなり音声拾えるし、解像度も問題ないよ」
「何か不明点がありましたらお知らせください。そうやって何事もない様、皆様の快適な空間を維持するのもマスターのお仕事ですからね」
「なんか、みんなのプライベート見ている様で気が引けるけどね」
「これは施設の確認ですから」
「まあ、ね」
これは慣れるしかないかなぁ。あ、そうだ!読者のみんなを置いてきぼりにしちゃってたね。
僕は今ベースールームのTVで『マンション』の施設内に異常がないか確認していたんだよ。
最近ベースルームでTVを見ていたら、[防犯モニター]ってチャンネルが何個かあったのを見つけたんだ。
そしたら、各施設の様子が確認出来るようになっていてね。だから今の施設にいるみんなの様子がわかったんだよ。
なんて、脳内の誰かに向かって説明をする僕を横目に、ピタっと動きが止まるフェイ。
ん?誰かから連絡あったのかな?
「マスター。今、フィットネスジムのジムから準備が整ったと連絡が来ました」
「準備終わるの早っ!」
……思いもしなかったよねぇ、あの募集かけた時は。
「うん、行こうか。……なんか僕までドキドキしてきたよ」
そんな会話をしながら急いでベースルームから出て行く僕ら。なぜなら———
「さあ!やって来ました!マンション自警団選抜!司会はこの私ゲンデと——」
『フィットネスジムのAI、ジムがお送り致します』
男達の雄叫びが上がるフィットネスジムで、ついにマンション自警団選抜が始まるからね。
「あー、やってるやってる」
その騎士達の気合いたるや……フェイと共に二階フィットネスジムに入った途端に凄い熱気が僕らを迎える程だったんだよ。
一応『マンション』責任者として見届けてほしいって要望がゲンデから来ていたけど……これ、僕最後まで持つかなぁ?
「この譲れぬ戦いは、かの辺境伯領の地での序章となりましょう!我らの安住の地は我らの手で守れ!今こそ力を示す時!」
なんだかんだでノリに乗って司会をしているゲンデ。そんなゲンデも今日に至るまで大変だったらしく……
「道を歩けば『今まだ間に合うか?』とか『サッサと定員締めきれ!』とか『この募集の期限いつだ?』とか『殿下とダノン様は断れ!』とか———俺に言うなぁああああああ!」
ってこの間もベースルームで叫ばれちゃってさ。ゲンデも鍛錬がし辛かったらしいんだ。
だったら、ともう期日を決めて選抜大会をやろうと言う事になってね。で、今日になったわけだけど。
ついでに司会をゲンデとジムにお願いしたら、ジムが張り切っちゃってさ。仮想空間でコロッセオを作っちゃってねぇ……
『予選Aチームは、会場入りをお願いします』
まさかの仮想空間での武闘会が始まるところなんだよ。……本当、ここ『マンション』だよね?って思ったよ。
あ。そういえば、新規魔力登録が多数出たのは報告してなかったね。
勿論、新規魔力登録者達はボルグド殿下の騎士団員達100名。
この人数聞いた時には、ボルグド殿下の団員ってこんなに少ないの?って思ったんだよねぇ。
でも、これ選抜して来たからなんだって。それも過酷な訓練を潜り抜けて来た精鋭らしいんだ。
その精鋭達と顔合わせしたのは昨日だったんだけど……自警団選抜を今日行う事を告げたらね。まさかの全員から参加を希望されたんだ。
それで、急遽共用会議室1・2を待機室にして、そこでTVで中継観戦しつつ出番を待って貰う事になった本番当日。
何せ自警団にエントリーしてくれたのは、辺境伯家騎士さん達12名もいるし、そして何故か殿下とダノン父様までいるんだもんなぁ。
殿下やダノン父様は面白がって参戦したらしいけど。殿下よっぽど雑務からの解放が嬉しいんだろうね。
「溜まった鬱憤晴らしてやるぜ!」って気合い入っていたんだよ、殿下。グエルさんが頭抱える姿が目に浮かんだよ。
でもって……
「ヌハハハハ!殿下になんぞ、まだ負けはせんわ!」
やる気に火がついたダノン父様。なんか本当に室内温度が上がったんだから、本気度がわかるよね……!
「マスター、自警団員の募集人数追加したんですか?」
そんな中、隣にいるフェイからコソっと聞かれたんだけどね。
「うん、流石にこの人数だと足りないかなって思って」
結局、専属を30名、派遣を人数無制限にしたんだ。だからこれは専属が決まる戦いって事になるね。
なんで専属を30名しか取らないのか?って思うでしょう。理由は簡単。部屋数がそこまでしかなかったんだ。
昨日、騎士達の魔力登録者が規定を超えたから、自警団施設を解放したんだけどね。施設の設置になんと!MP400,000もかかったんだ!
なんで?と思ったから、調べてみたんだけど……見たら納得しちゃってね。
『 ー『リュクスマンション・籐』全館案内図ー
BF3/トレーニングフィールド*
BF2/自警団員専属寮(1DK 25戸/2DK 5戸)*
BF1/スーパーマーケット・泉*
1F/メインエントランス・サブエントランス・エントランスラウンジ・エレベーターパーキング(バレーサービス/ルームイン・アウトサービス有り)・共用会議室1.2.3・男女別大型トイレ・リュクス藤銀行・自警団事務所
2F/フィットネスジム
ダイニングキッチン・新
ダイニングBAR・緋
シネマ・スプリング
自警団待機所
3F〜9F/1LDK+WIC+SIC 各階ワンフロア 10戸*
10F〜15F/2LDK+WIC 各階ワンフロア 8戸*
16F/3LDK+SIC 8戸*
17F〜18F/3LDK+S+WIC+SIC 各階ワンフロア 6戸*
19F/パーティ会場・奏*
20F /スカイラウンジ・蒼*
オーセンティックBAR・紫炎*
22F〜23F /ロイヤルパレス(10LDK+WIC+SIC) 各階層1戸*
24F/マスタールーム(ベースルーム)
25F /スカイガーデン・翔 *
*は、自警団専用エレベーター有り 』
自警団事務所や待機所や専属寮はわかるよ?でも自警団専用エレベーターやトレーニングフィールドは予想外だったなぁ。
因みに、自警団専属寮は一応規定が一部屋20畳だけど[増改築]有りのサービスもつけたんだ。
トレーニングフィールドは、訓練する地形が選べるらしいよ。渓谷/砂漠/荒野/湿地帯/標高1500m/海/森林の擬似状況を空間に作り出すみたい。
騎士達は、戦闘訓練や鍛錬にフィットネスジムのマシーンや仮想空間、更にトレーニングフィールドを使い分けると良いだろうね。
……うん。本当に規格外『マンション』だねぇ、此処は。
それに———
「此処が稼ぎ時!国からの支援金に加えてマンション自警団でも稼げ!さあ、野郎共行くぞおおおおおお!」
ゲンデが言っているように、騎士達はお金の稼ぎ時なんだよねぇ。だから余計に白熱しているのかも。
あ、始まったね!一体誰が勝ち残るかなぁ?
アクセスありがとうございます♪




