ロイヤルファミリーをロイヤルパレスへご案内 2
ポーン……
「23階ロイヤルパレスへ到着致しました。皆様どうぞエレベーターホールにて少々お待ち下さい」
フェイの案内でエレベーターホールに出て来たロイヤルファミリーの皆さん。
どうやら、メイドさん達が乗り切れなかったみたいで、全員揃うまで少し時間が必要みたいだね。
でもその待ち時間さえも苦じゃないのが、ここ、ロイヤルパレスならではなんだ。
何故なら、エレベーターホールは全面ガラス張りで、円状のフローラルベランダガーデンが窓の外を鮮やかに彩り、その奥に広がる雲海と青空のコントラストが見る人を惹きつけているんだ。
「……言葉もないってこういう事ね……」
ミルリック王子が景色に吸い寄せられるように窓に近寄っていくと、王族ですら驚きの表情であちこちに忙しく目線を動かして感動していたんだけどね……
「どーよ!アラタのマンションは!」
そんな中、我が事のように自慢気なボルグド殿下の声が邪魔しちゃったんだよねぇ。
その様子に、子供達以外の王族全員がはぁっとため息をついていたよ。
「ボルグド……少しは感動する時間を与えてくれても良いんじゃないかしら?」
「そうね。お義母様の言う通りよ?おかげで感動が薄れましたわ」
女性二人に詰め寄られるボルグド殿下。困った視線貰っても僕も助けられないよ?……女性にはあまり逆らっちゃいけないって定石だからね。
「まあ、仕方ないよ。ボルグドだし。それよりティニアとトレイアも気になっている中を案内してくれないかな?みんなも揃った事だし」
僕の代わりに助け手を出したのはサンタリア王太子。流石、お兄さん、ナイスアシストです。
それに、確かにティニア王女もトレイア王子も口角が上がっているからね。うんうん、ここに来たらワクワクするもんね!
「では、皆様を中へとご案内致します」
苦笑した案内役のフェイが手を入り口に差し出すと、扉の前に立っていた騎士さん達が両開き扉を開けてくれて、更に豪華な中の様子が見えたんだ。
———そこは、マンションの中とは思えない天井の高さ。
正面には中程から左右に分かれる大階段。
床は幾何学的なデザインに中央に太陽の柄。
壁はベージュの温かな色合いの中に金の繊細なロココ調の装飾が施された優美な物。
それらを明るく照らし出すシャンデリアの光は、天井の風景画をも優しく浮き立たせていたんだ。
「まあ!なんて見事な装飾なの!」
これに1番に反応したのはやっぱりミルリック王子。ゆったり入って来た他の王族は、ほぅっと感嘆のため息を吐いていたよ。
僕も圧倒されちゃったよ……!これ、前世で僕が憧れてたオーストリアの美しい泉の宮殿そっくりだったんだから。
うわぁ、本物ってこんな感じだったんだねぇ!
「ではご説明致します。ロイヤルパレスの一階は大浴場と脱衣所、使用人控え室、調理場、洗濯室がご用意されております。
二階が王族皆様の居室とリビングとなっております。お一人お一人にお部屋をご用意しておりますが、王様と王妃様、王太子様と王太子妃様の部屋は扉にて繋がっておりますのでご安心くださいませ」
あ、フェイの説明が始まった。
ん?部屋数が多いんじゃないかって?
そうなんだよ!ロイヤルパレスは早速[増改築]を利用したんだよね。勿論、フェイが追加料金きっちり貰ってね。
そして、一部屋一部屋の拡張や繋ぎ部屋、使用人部屋の増築が追加されたんだ。大浴場や調理場や洗濯室は、そのままだけど。
そして、『マンション』ならでは!王族の居室には大型TVをご用意!勿論、空調や換気空気の循環設備も設置済み。
「建物の中なのに、新鮮な空気が流れているのね」
「とても清々しいですわ」
女性陣にも好評でなにより。
「皆様のお部屋も気になるでしょうが、まずは二階のリビングへとご案内致します」
あ、フェイあれを渡すんだね。みんな何を選ぶのか楽しみだよねぇ。
そんな事を思いながら王族の皆さんの後をついて階段を上がっていくと、廊下もシンメトリーと曲線の見事な装飾で飾られていて、歩いているだけで優雅な気分になれる二階に到着したんだ。
リビングは二階の真ん中に位置しているんだね。そこをメイドさんが扉を開けてくれるとね———
壁一面の壁画にサンルームのように天井までガラス張りの明るくて見晴らし良いリビングが僕らをお出迎え。
テーブルや椅子等の調度品も格調が高い装飾の凝った物だったんだけどね。
全員が座れるコの字型に配置された大きなソファーに案内されて、王家の皆さんが座った後ぼくも座らせて貰い、つい座り心地を確かめる僕。
うん、やっぱり『マンション』産の高品質の物は座り心地いいね。
そんな感想を持つ僕を横目に、フェイが一人一人の前にメニューのような装飾された台紙を置いていったんだ。
僕とボルグド殿下は見本を渡して貰ったけどね。
「皆様、まずはお手元の『マンションのご案内』をお開きになって下さい」
フェイに言われた通り一人一人が手に取って開くと、光ってでてきたのはお馴染み[エントランスキー]。
ロイヤルパレスの居住者限定で、一人一人に[エントランスキー]が配られるんだ。
あ、他の部屋は基本一部屋につき一枚だよ。辺境伯家は全員一部屋ずつだったから一人一枚手にしていたわけだね。
これには全員が「「おお」」とか「まあ」「これが……!」と興奮していたね。子供達は二人で見せ合いっこしてたのが微笑ましかったなぁ。
「マンションの基本的な案内図はその台紙に記載されている通りです。[エントランスキー]の使い方に関しては、お一人お一人に準備された個室にてご確認下さい。また注意事項も必ずご覧下さいませ」
一通り説明し終わったフェイが「以上でご案内を終了致します」と言うと、1番に動き出したのはこのお方。
「これがボルグドが言っていた[エントランスキー]ね!早速使い方を調べなくちゃ!エルガ!私の部屋へ案内して頂戴!」
「畏まりました。ではミルリック殿下はこちらへ」
ミルリック王子が早速専属侍従を呼んでササッと移動して行ったのには、みんなが苦笑していたね。
でもみんな気持ちは一緒だったみたい。それぞれのメイドさんや侍従さんが一人一人に呼び出されて、嬉しそうに案内されて行ったからね。
一応説明しておくけど、各部屋には簡易のバスルームやシャワー室、水洗トイレが完備されているよ。
標準の調度品はソファーとテーブル、エアコンにTVと天蓋付ベッドだね。増築でメイド部屋や従者部屋も追加してたかなぁ。
みんなが気に入ってくれたら嬉しいね。
「で、フェイ。俺とアラタをこのリビングに残したって事は何かあるんだろう?」
なんて思っていると、ボルグド殿下がフェイに聞いていたんだけどね。
メイドさんや従者さんが、僕とボルグド殿下の対面にソファーを移動させて、紅茶を三人分用意していたからね。ピンときたよ。
「ん?フェイ。もしかして王様が来た?」
「マスター、その通りです。今メインエントランスに到着しました。待機していたストロワより連絡が入りまして、王様が殿下とマスターに相談があるようですよ」
ん?相談?
「もしかして例の件か」
なんの事か思いつかない僕に、ニヤリと笑うボルグド殿下。殿下はどうやら何か思い当たる事があるみたいだね。
「アラタ、多分自警団員の心配は要らなくなるぞ」
「へ?もしかして殿下が来るんですか?」
なんて聞き返していると、ノックの音がして『パライバトル王様が到着されました』って騎士さんの声が聞こえていたんだ。
殿下が了承の言葉を返すと、扉が開いてスッと入って来たパライバトル王様。その表情はとっても満足そう。
あ、王様の前だ!立たないと!
「アラタ、お前は気にしなくていい」
慌てた僕の行動を読んだボルグド殿下が静止したから立てなかったけどね。その様子に、僕らの対面に座った王様も笑い出したんだ。
「アラタ君はとても誠実だな。これだけの能力を持ちながら高慢さが微塵もないとは」
ハッハッハと豪快に笑う王様に「我がマスターですから」と答えるフェイ。
って、ちょっとフェイってば!
「いや。気にしないでよい、アラタ君よ。それよりも、ボルグドから話しは聞いたかね?」
「あ、親父。まだ話してねえわ」
「……お前は相変わらずだなぁ。こんなボルグドを任せていいものかどうか考えものだが……」
蚊帳の外の僕が殿下と王様の顔を見比べていると、殿下がニヤリと笑って教えてくれたのが———
「ボルグド殿下の騎士団を『マンション』の護衛に?」
僕は驚きでつい声を上げちゃったけど、王様曰く……
「アラタ君の能力は国家間の間でもとりわけ稀有で有用な能力だ。マンションでの自衛手段もあるとは聞いているが、ウェルダント国が後ろ盾になるからには、一団を預けても良いと思ってな」
そう笑顔で話す王様の言葉に補足するように話し出す殿下。
「で、1番の後ろ盾である俺が名乗りをあげたってわけだ。基本外交やら魔物討伐やらで飛び回っているから丁度よかったからな!」
「なーにが丁度良いだ。お前がゴリ押ししたんだろうに。……だが、まあ良い。騎士団長はこれを機会に副騎士団長に譲り、ボルグドがアラタ君の専用窓口とさせるが———アラタ君。今なら変えがきくがどうかな?」
パライバトル王様がボルグド殿下を揶揄うように僕に確認して来たんだけどさ。
うん、僕としては嬉しい提案かな。殿下だったら慣れているし、なにより信頼出来るからね!
そんな僕の考えを読んだフェイが『多少懸念事項はございます』とツッコミ入れてきたけど概ね同意をしてくれて、僕は喜んで王様の提案を受け入れたんだ。
「では、まずは一つ解決だな。では、もう一つだが……」
王様が笑顔から一変して表情を変え、入り口に控えている騎士に合図を送ると、扉が開きダノン父様が入って来たんだ。
「ダノン、忙しいところ呼び出して悪かったな」
「いえ、パライバトル王の呼び出しとあらばいつでも参上致します」
王様とダノン父様の真面目なやりとりなのに、念話でフェイったら『ジム通いで忙しい感じですね』って伝えてくるんだよ。
真面目な雰囲気の中で思わず吹き出しそうになったよ。フェイってば!
そんな事を考えている僕の側では、ボルグド殿下が厳しい表情をしていたんだけどね。
「動きがあったのか、親父」
何か思い当たったのか、真面目な表情で王様に質問する殿下。それに対して頷く王様に、険しい表情になるダノン父様。
……辺境伯領関連かな?
僕が思いつくと言えばそれくらいだったけどね。それが王様の言葉で確信に変わったんだ。
「隣国と辺境伯領に動きがあるらしい事が判明した。……そこでアラタ君に頼みたい。どうか、ボルグドの騎士団とダノンの協力をお願い出来ないだろうか?」
真剣な表情で頼み込んでくるパライバトル王様。
『マスター、どうやらマスターのご実家が関わっていそうですよ』
なんて念話を送ってくるフェイの言葉も気になるし……うん。協力しない手はないよね!
「僕でよければ喜んで!」
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