ロイヤルパレスをご案内の前に……
……とは言っても、暇じゃないのもロイヤルファミリーの皆さん。
執務の調整やスケジュールの調整があって、すぐには実行出来なかったけど、10日後ようやく全員が揃ってご招待って事になったんだ。
その間にも、こちらもスタッフの増員や辺境伯家のメイドさんや従者さんにバイトを募集して準備をする事が出来たけどね。
やっぱり、もてなすならきっちりと!がモットーの元日本人だもの。しっかり準備しておきたかったんだよね。
あ、そうそう。ボルグド殿下にはお礼の意味で、ホームシアターセットをフェイが贈ってくれたんだ。
本当は大画面プロジェクターが良いと思ったんだけど、フェイ曰く……
「1LDKの殿下の部屋には勿体ないかと」
という現実的な意見に、結局75インチのTVと五つの本格派スピーカーにしたんだよ。
あの階、殿下とグエルさんしか居ないし。『マンション』は防音機能も勿論あるからね。
安心して重低音もしっかり聞けて、包み込まれるようなサラウンドサウンドを楽しんでもらえたらと思ったんだけど……
「アラタ!頼む!イヴァンかブライアンを貸してくれ、とダノンに頼んでくれ!マジで時間が取れねえ!」
うん、なんか泣きつかれたんだよ。どうやら、今までミルリック殿下に肩代わりしてもらっていた仕事案件も戻ってきたみたいでね。
目の前に人参がぶら下がっているのに食べられない状況になっているんだって。
グエルさんはもはや無の境地。無心で仕事をこなす姿は従者の中の従者だと思ったよ。
でも、その件は僕に言われてもねえ……
「あの二人はアラタに頼まれたら動く!頼む!今回限りだ!」
……切羽詰まってるなぁ。なんかやつれているし、ちょっとお願いに行ってみようか。
そんな感じでまずはダノン父様に会いに行ったんだけどね。
「ぬはははは!まだまだ甘いわ!」
「くっ!今度こそダノン様を超えたと思ったのに……!」
「次は俺が対人戦で挑戦します!」
「おお!かかって来るがいい!」
………えっと、今、2Fのフィットネスジムに来ているんだけどね。
実は、先日のお礼にフィットネスジムの対戦型仮想空間を少し難易度高くして、ランキング制を導入してみたんだ。
毎日のランキング上位3名には、ダイニングBAR・緋かオーセンティックBAR・紫炎の1日無料券を発行するって事でね。
ん?ダノン父様は王家との対面の時、何もしてなかったじゃないかって?
それがさ。隣に座ってくれていた時、僕の手をずっと握ってくれていたんだよ。
それにフェイが後で教えてくれたんだ。
『大丈夫だ。俺達も側にいる』
って思ってくれていたんだって。嬉しかったし、心強かったんだ、本当に。
そう言う意味では、セレナ母さんもそっと手を添えてくれたり、同じように思ってくれていたんだ。
そんなセレナ母さんには、スカイラウンジ・蒼のケーキバイキングをプレゼントしているよ。
「うふふ。レナとエイダンも誘って楽しんでくるわね」
なんて言って喜んでくれたよ。でもメイドさん達が特に喜んでいたって事は、セレナ母様メイドさん達にもご褒美として分けてあげるつもりなんだろうなぁ。
みんなが楽しんでくれるのってやっぱり良いよね。
ハッ、ちょっと現実逃避してたよ。もはや、ジムという名の訓練所での光景はこういうものだと思おう。
で、本題をダノン父様に聞いてみたらね。
「あいつらはあいつらの意思に任せているからなぁ。とりあえず、俺の許可は出しておこう。殿下も頑張ってくれたみたいだしな」
なんて、僕の頭に手を置いて優しく笑ってくれたんだ。うん、あったかいね。ダノン父様の思いは。
という事で、フェイと共にロイヤルパレスへ移動したんだ。
今、辺境伯のメイドさんや侍従さん、それに王家から送られてきたメイドさん達(フェイの監査を通った人達だよ)が12人も居て、部屋の改装をしているところなんだ。
王家の皆さんはなんと、既に本契約済みなんだよ……!
説明のみの内覧無しで、しかも一括払い。国というより、王家の皆さんのポケットマネーから出ているそうだけど、流石に驚いたよ。
どうやら、ボルグド殿下に自慢された[エントランスキー]が凄く魅力的だったらしい。
王家の皆さんにとって、安全な避難所は欲しいだろうからね。
そんな感じで王家の皆さんも既に魔力登録済みだし、メイドさんや侍従さん執事さんもこれから増える予定。
だから管理画面であった[増改築]が解放されたんだよ!
ふふふ……!色々出来そうでワクワクするね。って、ブライアンさんとイヴァンさん発見!
「おや?アラタ様にフェイ様。いかがなさいましたか?」
相変わらず乱れもないキッチリとした執事姿のブライアンさん。どうやらメイドさん達の総監督をしているみたいだね。
「はい?私もですか?」
丁度相談に来ていたイヴァンさんもいたから、本題をお願いしてみたらね……
「あの殿下は本当に仕方ない……!」
「甘やかしすぎたか……?」
……殿下は何やら前科もありそうな雰囲気だね。
「でしたら此処はオーセンティックBAR・紫炎のストロワに任せましょう。今はお客様がいない時間ですから」
どうなるかな?って思ってたら、フェイが提案してくれたんだけど……ストロワってバーテンダーじゃなかったっけ?
「バーテンダーはお酒の知識や技術だけではありませんよ。接客の技術も高いですし、様々な事に造詣が深いのです。何よりもてなしにかけては、この『マンション』でストロワの右に出る者はいません」
言い切るフェイの言葉に、深く頷くブライアンさんとイヴァンさん。ストロワの仕事振りには敵わないって思ったらしいよ。
僕もちょっと自分の事のように嬉しくなったね。
ついでにダノン父様からの許可も伝えて、「仕方ない……」と苦笑した二人。
[エントランスキー]越しにグエルさんに連絡を取り、迎えに来て貰う事にしていたよ。僕もそっとオーセンティックBAR・紫炎のウィークリー無料券を二人に渡しておいたし。
あ、[エントランスキー]越しの連絡って何?って思ったでしょう。
以前[エントランスキー]の特典は多岐に渡るって説明があった通り、その特典の中の一つなんだ。
『マンション』内外問わず、[エントランスキー]の所有者同士の通信が可能なんだよ。
但し、相手の[エントランスキー]番号を、自分の[エントランスキー]に入力している事が前提だね。
『マンション』内住民同士のコミュニケーション増進が目的なんだけどね。殿下なんか「どこに居てもグエルに捕まる……!」なんて言ってたなぁ。うん、グエルさん頑張って。
そうそう、王家の皆さんの購入特典って何?って思うよね。
まだ自室のTVに[エントランスキー]を差していないから本人達もわかってないけどこんな感じだって。
『本契約をご契約頂きありがとうございます。マンション購入特典として以下の品をご用意させて頂きました。リモコン操作でお好きな品物をお選び下さいませ。
1・今ならお得!キャッシュバックキャンペーン!一括お支払いした金額の10%が貴方の手に戻ってきます!こちらはご契約時より三日間だけ有効の期間限定キャンペーンです。是非お見逃しなく!(キャンペーン対象者は一括購入者のみ)
2・[エントランスキー]をお持ちの貴方にビックチャンス!なんと、『マンション』監修の『魔導辞書』が貴方の手に!
魔石対応/コンパクト設計/全ての学習をサポート/全言語翻訳対応/音声機能搭載/メモ機能搭載/スケジュール管理/計算機能搭載/宮廷マナーから最新貴族年鑑まで!
貴方の疑問や領地経営、円滑な貴族間交流に役立つ一台です!この機会を逃すと再購入は出来ませんよ!さあ、ご英断の時です!
3・貴方のお部屋のリフォーム請け負います!(ロイヤルパレス限定)
季節に合わせたお部屋作りは、快適に過ごす上で不可欠です。また、何かと変化があるのも生活する上では必然。
そんな時、貴方に寄り添う『マンションの匠』にご相談下さい!
[エントランスキー]の特典の一つ、『マンションの匠』が解放されると、即座にお好みの床・壁・間取りに大変身!
長く住まわれるからこそ、気が休まる部屋にしたい貴方には必見です!この機会を逃すと個人でのリフォームは不可能です!(注:通常はマスターの許可申請が必要です)お見逃しなく!
4・『パーティ会場・奏』の年間パスポート発行(ロイヤルパレス限定)
最新で最高の演出をご希望の貴方!急な来賓にも対応する『パーティ会場・奏』は、『マンション』の全ての施設を駆使して、お客様をおもてなし致します。
急な来賓の方には『パーティ会場・奏』内にございますスウィートゲストルーム(家具家電付き2LDK/3部屋)を解放致します。
心ゆくまで交流を楽しみ、安全で快適なお時間を過ごせるこのチャンスをお見逃しなく!(注:通常のお申込み、お問い合わせ、貸し出し料金のご相談はフェイまでお気軽にお申し付け下さい)
この機会を是非ご活用下さいませ。
貴方の生活を応援する
リュクスマンション・藤 』
っていうのを準備しているんだって。やっぱりグレードが上がっているんだね。3と4はロイヤルパレス限定だからなぁ。
悩むだろうなぁ……ん?どうしたのフェイ。
殿下から涙の感謝コールが届いたって?
そっか、殿下もゆっくり映画見れると良いね。じゃ、僕も管理しっかりやって備えておこうかな。
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