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マンションスキルがあるので廃籍されても構いません  作者: 風と空
第二部 王都編

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王都入り前に確認事項

 殿下やダノン父様が頑張り、騎士達も精力的に魔物を狩るおかげで、旅は順調そのもの。


 更にお忍びなのに、何故か周囲の街や村から『国民思いの第三王子』『庶民に寄り添い歩む王家の鏡』と殿下の株が上がるという現象が起きている今———


「殿下……余り目立ち過ぎるのはどうかと思いますが?」


「いや、その……魔石買い取り額が意外に良くてな?それにこの辺りの治安にも貢献しておきたくてな……?」


 此処スカイガーデン・翔の東屋の中で、笑顔のフェイを前に正座(自主的)で言い訳をする殿下の姿があるんだよねぇ。


 その横では……


「貴方は何をしているのですか?」


「いや……今後の事を考えてだな。稼げる時に稼いでおこうと思ってだな……」


「気持ちはわかりますわ。でも、今は何故王都に向かっているのか思い出して頂けないかしら?」


「まあ……王都の辺境伯邸に滞在するという名の緊急避難だな」


「貴方?」


「あ、後はアラタが王家の庇護下に入る為の旅でもある!」


「むしろそちらが大事でしょうに。国の庇護下にまだ入っていない今の状況では、アラタのスキルに注目がいくのはもっての他ですわ」


 鋼鉄の笑顔でダノン父様を諭すセレナ母様の姿があるんだよね。笑顔に迫力があるのって凄いよねぇ……


 そうそう。今此処に居るメンバーは、僕とフェイとゲンデに、辺境伯家からはダノン父様とセレナ母様と執事のブライアンさんと従者のイヴァンさんとそれぞれのメイドと騎士達。


 殿下サイドでは、ボルグド殿下に従者のグエルと騎士達数名が東屋にいるんだよ。


 この東屋は、スカイガーデンを見ながら会議も出来るように大きめに作られていてね。この人数が居ても余裕があるんだよ。


 因みに、エイダンとレナちゃんは現在お勉強中。朝、ちょっとだけ二人共が残念がっていたけどね。


 今後の事を話し合うには、今日の午前中が皆の都合が良かったからね。二人共にはパフェで手を打って貰ったんだ。


 で、今のなんとも言えないこの状況に戻る訳だけど……


 僕からするとね、どちらも僕を心配しているが故に諭しているし、僕の事を思ってくれているから敢えて姿勢を低くして諭しを受け入れているのがわかるんだ。


 僕が身内から捨てられたからこそ、身内のように親身になっている人達に囲まれて、今の僕は恵まれていると思うし、凄く心がポカポカしてくるんだ。


 でもね……だからこそ僕もしっかりしなきゃいけないと思う。


「セレナ母様にフェイ。僕の心配をしてくれてありがとうございます。殿下とダノン父様の気持ちも感謝ですが、まずは席に着きませんか?」


 僕の言葉に助かった!という表情の殿下とダノン父様。良いの?という表情のセレナ母様とフェイには苦笑しちゃったけどね。


「マスター。今、辺境伯領から王都までの街や村では、殿下の移動行程に疑惑がかかっているとゲンデが報告していたのを覚えていますか?」


「うん。覚えているよ、フェイ」


「アラタ?殿下が特殊な能力を持つ子供を拾ってきたと、噂が流れているのよ?」


「はい。それも知っています、セレナ母様」


 それでもまだ心配そうな二人に、僕はにっこり笑って僕の考えを言ってみたんだ。


「僕はもう殿下の後ろに隠れるのは潮時だと思っているんです。むしろ、バレたらバレたで良いんじゃないかって思っているくらいです」


 そんな僕の言葉に「まあ……」と頬に手を当てるセレナ母様と黙って僕の言葉を待つフェイ。まあ、黙っているのができなかった人も居るけど……


「よく言った!アラタ!そうなんだよ!お前の力はもっと称賛されても良いんだ!」


「アラタ!スティール家がバックにいるんだ!思いっきりやってしまえ!」


 殿下とダノン父様がガタッと立って言ったのは良いけれど、ハッと正気に戻ったのか、二人共静かに着席して僕に次の言葉を話すように視線で促してきたんだ。


 ……ゲンデとグエルさん、思いっきり肩が震えてるね……


「……えっと、僕の能力は確かに支援特化だと思います。だけど、決して弱くはないんです。むしろ、僕のスキルは僕自身をも強く出来ます。そして、仲間さえも。


 守られなければならない立場に見えるかもしれません。でも、僕はどちらかといえば守りたい……!いえ、守れると断言出来ます。


 だからこそ、スティール家の四人と殿下。そして、グエルさんやブライアンさんやイヴァンさん。本契約に入る前に最終確認に入らせて下さい」


 僕が話しながらステータスから管理画面を出して本契約申請者の名前をタップすると、パアアアッと光りながら各契約者の前に出現した、カードタイプの【エントランスキー】。


 でもまだ実体化はしていないから、宙に映像が浮いてる状態なんだけどね。


「本契約者は、何処からでもそのカードを宙に翳すとサブエントランスからの出入りが可能になります。という事は、危険が迫る時いつでも逃げ込める安全な避難場所が出来た事になりますよね。


 更に、本契約者には【保険】の連続使用が可能になります。


 賃貸居留者との違いは【保険】の適用時間とその日の内に【更新】が可能な事。


 賃貸契約者は一定時間が過ぎた後はまた【保険】が使用出来るまで一週間程時間を置く必要があるという縛りがありましたがそれが無くなります。


 つまり、これにより本契約者が『マンション』外での仕事や作業の際危険性がなくなりますが、以上の事が出来る代わりに一つの制限が加わります。


 ……それは、マンションのマスターである僕を裏切れない事。


 これに関してはフェイ、更に詳細を伝えて貰っていいかな?」


「畏まりました。【本契約者】はいわば、アラタ様と魔力で繋がる事になります。そして、それは良い意味では増強、悪い意味では親元であるアラタ様の[言葉]には逆らえない事に繋がります」


 フェイの説明に聞いていた騎士達やメイドに動揺が走ったように見えたけれど……本契約を結んだ人達からは何一つ動揺を感じられなかったんだ。


 その様子に少しホッとする僕を横目に、フェイが更に説明を加える。


「本契約者が逆らえない[言葉]には、[強制退去][取り消し][保留][売買の禁止][保証人]がございます。


 [強制退去]は文字通り『マンション』からの退去。これにはマスターの事も『マンション』の事も記憶が一切無くなり、その後マスター自身をも認識出来なくなります。


 [取り消し]は【保険】の使用をマスターによって制限される、もしくは使用不可能にされる事、[保留]は本契約者が『マンション』内から出られなくなる事でございます。


[売買の禁止]は、本契約者の特権であるマンションで購入した商品を外で販売が出来る権限を、一切失う事でございます。これには、商品を購入する権利も同時に失う事に繋がりますからご注意下さいませ。


 ……補足しておきますが、賃貸契約者の皆さんにはこのマンションの商品を外で売る権限はございません。もし、破った際には[強制退去]と同じくマスターや『マンション』の記憶が無くなり、マスター自身を認識出来なくなります事も説明に加えさせて頂きます。


[保証人]は、本契約者が指定した第三者に『マンション』の商品を外で販売出来る権限を与えられる代わりに、もし契約不履行行為が見られた場合は自分が保証人となった人と同じ結果を被って貰う事になります。


 例え自分が何もしていなくとも、契約不履行を犯した第三者と同じく連帯責任が問われますので、この[保証人]になるにはお気をつけ下さいませ」


 説明が終わると、スッと僕の後ろに控えるフェイ。


 うん、僕のスキル内の事だもん。ただ住むだけじゃないんだよね……本契約って。


 だからこそ、僕は全員の顔を見て最終確認をしたんだ。


 「そして、その上で聞きます。皆さん、本当に本契約をなさいますか?」


 僕は、しばらく考慮する時間が必要だろうと予想していたんだけどね……


 「当然!」(殿下)

 「勿論だ!」(ダノン父様)

 「ええ、迷う必要はありませんわ」(セレナ母様)

 「即決ですね」(グエル)

 「むしろ光栄です」(ブライアン)

 「喜んで!」(イヴァン)


 ……全員が、口々に僕を信頼すると言ってくれたのがまた嬉しかったなぁ。


 そして、フェイに目線を向けると、僕を見て笑顔で頷いてくれたんだけど……実は、フェイと僕の声をエイダンとレナちゃん達にも届けていたんだ。


 二人共も即決だったんだって。


 レナちゃんはメイドさんの噛み砕いた説明つきだったけど「アラタお兄様をしんじる!」って幼いながらも自分で結論出してくれたんだ。


 エイダンは「僕は兄弟を更に守れるように頑張んないとね」って言ってくれていたみたい。


 へへっ、なんか兄弟って良いね。


 そんな感じで全員の意思を確認した僕が[許可]をタップすると、宙に浮いていた映像のカードが具現化して本契約者の手に渡ったんだ。


 此処で、殿下が実験をして良いか僕に聞いてきたんだけど……


 実験は[エントランスキー]が本契約者以外に触れるか?というもので———結果、これは触れない上に認識出来ない事も確認出来て、更に納得していたみたいだね。


うんうん。本契約者の皆さん、これからも宜しくお願いしますね!

アクセスありがとうございます!

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