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マンションスキルがあるので廃籍されても構いません  作者: 風と空
第二部 王都編

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マンションでの日常

「では、会議は終了する。各班それぞれ時間を守って行動しろよ?」


 朝礼の閉会を告げるボルグド殿下の声で動き出したのは、殿下の騎士達と辺境伯家の騎士達、総勢21名全員だね。


「1番時間を守らなきゃいけないのは殿下だろうに」


「全くだ。熱中し過ぎて昨日も遅れて来たよなぁ」


「殿下が面白かったからと、我らに先の情報を教えないで欲しいものだ」


「我らも楽しみにしているのだからな」


「仕方ねえよ。殿下が俺らより先に見ちまう方が悪い」


「「「「確かに」」」」


 ドッと笑い出す殿下側と辺境伯家側の騎士達。以前のようなギスギスした感じは無くなっていて、混合班で行動していても気楽に会話できる雰囲気になってきたんだよね。


「お前ら、サッサと行け!」


 それを聞いてご機嫌斜めの殿下の一声に、蜘蛛の子が散るようにササッと動き出す騎士達の動きは流石素早い!


「ハッハッハ!殿下、言われておりますな!」


 その様子を見て笑い出すダノン父様。勿論、会議に出席していたんだよ。


「まあ、垣根が無くなってきたのは良い事なんだが……何もうちの騎士に染まらんでも……!」


「良い傾向ではありませんか。あと三週間は掛かるのですから、共闘出来るに越した事はありませんな」


「まあ……アラタのおかげで、夜は全員『マンション』に帰って来れるからなぁ。いつもより自分の時間を使える奴らが多いってのも言える……か。なあ、アラタ?」


 ……殿下、何を言いたいのですかね?


「僕は皆さんに楽しんで頂けているようで嬉しいですよ?」


「そうですね。感謝される事はあっても、マスターが責められる謂れはございません」


 なんか言いがかりをつけられている僕も、勿論朝礼には参加していたんだ。僕と常に一緒にいるフェイもね。


「へいへい。要は時間の使い方だろ?ったく、ここは退屈とは無縁だからなぁ」


「確かに。きっちりと鍛えられるのも嬉しいですからな」


「出たよ、筋肉馬鹿。これ以上鍛えてどうするんだよ……?」


 あ、殿下とダノン父様が言っているのはフィットネスジムの事だよ。フィットネスジムを解放したら、一部従者達と非番の騎士達の鍛錬場所になっていたんだ。


 でも1番入り浸っているのは、やっぱりダノン父様だね。


 限界に挑戦するのがすきなのか、一つのマシーンの最高レベルまで上げてやるんだよ……フェイがマシーンの調整が多いと文句言ってる事多くなったなぁ。


 そうそう。このフィットネスジムには、各種マシーンに搭載AIがいて、ちゃんとトレーナーのように指導するんだけど……


「『ジム』はまだ鍛えられると言っていたからなぁ。もっと頑張らんと」


 そう。このAIとダノン父様が妙に馬が合ってね。更にヒートアップした結果……最近は異世界版フィットネスジムへと変化しているんだ。


 対戦型の仮想空間があるから、対人戦や対魔物戦でどれだけ鍛えられたかがわかるようにもなっているんだって。これは騎士達に大人気なんだよ。


 そうなるとフィットネスってなんだろう?って思ったんだけどね?フェイ曰く……


「地球では肉体的および健康的観点で「望ましい」と考えられている状態であり、それを目指すための行為・活動を指しますが、異世界であるこちらの「望ましい」と考えられている状態に合わせた結果ですね」


 だそうだよ?……ちょっと、僕は遠慮させて貰うかなぁ。


「まあ、アレは俺も良い鍛錬になるから利用はしているけどよ。俺がよく行くのはシネマ・スプリングだからなぁ」


 どうやら殿下も利用はしていても、シネマ・スプリングの方の利用頻度は高いみたい。


「夜間の時間帯が空いているし、上手くすりゃ要望に応えてくれるからなぁ」


 という事で、夜間のシネマ・スプリングはほぼ星大戦争になっているみたい。結構エピソード進んだみたいだよ。


 日中から夕方までは同じ映画がやっているんだけど、殿下の希望でリクエストに応じる夜間帯も上映が始まったんだって。


 でも、勘違いしないでね?夜間帯と言ってもフェイさん監督のもと、健全なものしか流してないから。だよね?


 「当然ですね」


 ………まぁ、僕も少し残念だけどね。

 

 それはいいとして!危ない危ない……!余計な事を言わせられるところだった。


「えー……ゴホン。殿下、じゃあ今回は街に寄らずに王都を目指すんですね?」


「なんか急に態度を変えた事をツッコミたいが、そうだな。元々俺はお忍び、ダノンもそれに近いからなぁ。街に寄る必要がなくなったんだよ」


「それにこのマンションにいる限り、寄る必要は本当になくなりますからなぁ」


 殿下が楽でいい、というのに同意して、ダノン父様も頷くけど……


「そうですか……残念です」


「ん?アラタ。寄りたかったのか?」


「はい。新しい街ってワクワクしますし、お金を落としていきたかったっていうのもありますね」


「マスター、お気になさらず。お金はこのマンション内でも回っておりますよ?」


 フェイさん、最近なんか嬉しそうなのってもしかして……?


 チラッと気になったので殿下とダノン父様を見ると、二人ともにフイッと目を逸らされたんだよ。


 ……そっか、フェイが楽しそうならいっか。でもそうなると、このマンションで求人出そうかなぁ。


 ちょっと最近気になってきたのが、騎士達の部屋なんだよね。マンションって基本借りている人、もしくは所有者に掃除任せているからねぇ……まあ、今は言わずと知れた状態なんだけど。


 お小遣い稼ぎに誰かくるかなぁ?

 

「マスター、その案はいいと思います。最近の陳情にはもっと仕事が欲しい、という声も上がっていますから」


 フェイさん、また僕の考え読んで……でも、みんな真面目だなぁ。働きたいなんて凄いや。


 じゃあ、やっぱりマンション専属のお掃除隊をお願いしようかな。スキルで出来なくもないんだけど、お金を回らせたいし。


 あ、あと個人的に学びたい人っていないかなぁ。うちのマンションの技術高いし、セミナーみたいに売りに出してみても良いかも。個人的な夢は追いかけて欲しいからね。


 って事を、殿下とダノン父様に相談すると……


「お、良いんじゃね?確かに掃除は大事だし、金稼ぎたいって奴らは多いぞ」


「こちらのメイドや従者からも声が上がってましてな。騎士達は魔石交換所があれば、と声を漏らしていましたぞ」


 おお?意外に好感触。フェイはどう?


「良いですね。スキルで一瞬でできる事でも雇用を産めますから。マスターの能力の節約にもなりますし。


 それと、ダノン様。魔石に関してはリュクス銀行藤で取り扱いいたします、と騎士の皆様にお伝え下さい。


 あとは、こちらが雇いたいのは掃除が得意なメイドや侍従ですね。マスターのおっしゃるセミナーは、こちらのスタッフは常時動けますから何時でも開催可能ですし、料金の程は格安価格(あくまでもフェイにとって)に設定いたしましょう。


 ダノン様、殿下。各階の掲示板に依頼書貼り付けておきますので、もし希望者がおりましたら調整を宜しくお願い致します」


 テキパキと考えをまとめて動き出すフェイに、二人は圧倒されたみたいだけど、何やらニンマリ話し始めたんだよね。


「銀行で魔石が取り扱っている……か。これはいいな」


「確かに、このまま出て行くだけでは少々心もとなかったですから。これは、本気を出しましょうか」


 どうやら殿下とダノン様は、今日一日移動班の方へ向かう事が決定したみたいだね。


 そして、その後フェイの手によってメイドや従者達や騎士達の階の掲示板に、張り出されたのはこの三枚。



『求人募集


 ・掃除スタッフ 勤務時間応相談 日給 金貨一枚

        資格 丁寧かつ真面目に働く者


  *希望者はフェイまでお越し下さい。  』




『セミナー開催!学んで自分の技術を伸ばそう!


 開催予定 参加費 各銀貨三枚


 ・スカイラウンジ・蒼 

 一流の料理人から技術を学べる機会です!担当にはオラン料理長が付きます。時間帯はあなたのお好みの時間に合わせます。


 ・オーセンティックBAR・紫炎

 一流のバーテンダーから、仕草からお酒の知識や配合、接客の全てを学ぼう! 時間帯はあなたのお好みの時間に合わせます。


 気軽に開業してみたいあなたを応援!


 ・ダイニングキッチン・新

 安くて手軽に調理可能な料理と技法を教えます!屋台のイロハから提案まで! 時間帯はあなたのお好みの時間に合わせます。


 ・ダイニングBAR・緋

 気軽な酒屋を目指すあなた!手が届きやすい値段のお酒のレパートリーやそれに合う簡単なおつまみを作れるようになってみませんか? 時間帯はあなたのお好みの時間に合わせます。  』




『リュクス藤銀行よりお知らせ


 魔石の換金を始めました。

 お気軽にお持ちください。

          

     リュクス藤銀行スタッフ一同より 』



 これには張り出した当初から注目が集まったみたいで、この日の話題は掲示板一色だったみたい。


「ちょ!スレッド!みたか?リュクス藤銀行のお知らせ!魔石が換金出来るって!」


「まじか!ケイン!どうせ移動中魔物と戦うんだ!その魔石が換金出来るなら、借りてた金の補填に当てれる!」


「おい、二人とも。殿下に掛け合って来ないか?取り分の交渉に行こう」


「お、ポーター。興味があったか」


「当然だ。此処では金がいくらあっても足りん」


「へっへっへ。馴染んできたねえ、辺境伯家も」


 なんて騎士達の声が聞こえてきたり————


「ちょっと!カエラみて!このマンションで求人だって!しかも掃除よ?それで日給金貨一枚!これ、正に私達の為じゃない?」


「きゃあああ!更に稼げるのね!そうすれば、我慢せずにスーパーマーケットで買い物が出来るわ!」


「……カエラ。ほどほどにした方が良いわよ?最近あなたまた太ったでしょう?」


「し、仕方ないのよ!美味しいお菓子があるのが悪いの!」


「まあ、貴方の味覚の鋭さは全員が認めているからねぇ……掃除も良い運動になるだろうし」


「何を買おうかしら……チョコ?クッキー?ああ!楽しみね!」


「……貴方、働いてからにしなさいよ。まずはセレナ様に相談に行くわよ?」


 これは辺境伯家のメイドさん達の会話だね。あ、全部フェイから聞いた話しだよ?


 他には従者さんの中にセミナーの受講者がチラホラいたり、ブライアンさんとイヴァンさんがオラン料理長にセミナーお願いに来たりと、結構な反響があったんだ。


 ……実は、僕もついでセミナーの受講しようかなって考えているんだ。


 やっぱり僕だって、働かないとね!

アクセスありがとうございます!

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