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マンションスキルがあるので廃籍されても構いません  作者: 風と空
第一部

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17/32

あっという間に出発の朝

 フェイとの商談の後、ちょっと項垂れるダノン様とホクホク顔の殿下。どうなったかは丸わかりだよね。


 フェイも表情が半々だったなぁ。「殿下にしてやられるとは……!」とちょっと悔しいがっていたもんなぁ。まあ、王家としても散財は出来ないだろうしね。


 で、それから後の時間は、僕の部屋やら他の施設の解放をしたと思うでしょう?


 ……本当に時間がなかったんだ……(涙)


 一応、僕って従者の見習いだったでしょ?従者の仕事って色々あるんだね。殿下の仕事(結構やっていたんだ!)の補佐の補佐。次の仕事の準備。お茶や食事の支度や、辺境伯家のメイドさん達からのお呼びだし……


 僕、仮の見習いだったけど、もはや立派な見習い扱いだったよ。内情知っている殿下やダノン様まで、暇になったからって僕で遊ばないで欲しいよ!もう!


 そして……念の為グエルさんと一緒の部屋で、夜をこちらで過ごして久しぶりに実感。


 ベッドがすっごい硬い……!え?こんなに硬かったっけ?って驚いちゃった。何度も寝返りをうつ僕の姿に、グエルさんが心配して何度も声をかけてくれたよ。すみません、グエルさん……!


 『マスター。戻ったらぐっすり眠れますから、忍耐の時です』


 隣の部屋にいるフェイまで念話飛ばしてくるんだもん。よっぽど僕、我慢出来ない子って思われているんだろうなぁ。いや、贅沢しすぎたんだろうけど。


 それでも、なんとか眠る事が出来て翌朝———


 起きて出発の朝になった時。今日はゆっくり寝れるんだ……!と思ったら仕事も苦にならなくなったよ。


 だけど、それは僕だけじゃないようで……


 「アラタ!」


 「スレッドさん?」


 僕が辺境伯家の出発の準備の為にフェイと移動していると、殿下の騎士のスレッドさんが声をかけてくれたんだ。コンビニのホットスナックをよく齧っていた人だよ。


 「今日、俺出発すると夜勤になるんだ!楽しみだぜ!」


 「はぁ……」


 なんか僕に用があるのかなぁ?って思ったら、「じゃ!」って仕事の宣言だけして去って行ったんだよ。


 うん?夜勤が楽しみなのかな?


 って思ってたら、今度は寝るのが大好きケインさんが走って来たんだ。


 「よお、アラタ!」


 「ん?今度はケインさん?」


 「俺さ!出発したら殿下付き勤務なんだ!」


 「そ、そう?」


 「ああ、よろしくな!」


 そう言って、やっぱり去って行くケインさん。寝れる訳でもなく勤務なのに、嬉しそうに僕に報告にきた意味がわからない……


 首を傾げて歩いていたら、グエルさんに指定された場所に着くまでそんな事が何回もあったんだ。


 「アラタ!俺、食事当番だったんだぜ!」

 

 「アラタ!俺、なんと自由時間貰えたんだ!」


 「アラター!会いたかったぜ!」


 ……うん、なんで僕に皆んな寄って来るのかな?


 なんて不思議に思ってたら、フェイが念話で心の声を教えてくれたよ。


 『今日俺出発すると夜勤になるんだ!楽しみだぜ!(今日自分の部屋で寝れるんだろ?新しくなったみたいで楽しみだぜ!)』


 『俺さ!出発したら殿下付き勤務なんだ!(今日さ。殿下、何の映画を見ると思う?俺、前回の続き希望なんだけど)』

 

 『アラタ!俺、食事当番だったんだぜ!(やっとマンションの食事が食える!飯屋あるんだって?)』


 【アラタ!俺、なんと自由時間貰えたんだ!(うおおお!新しくなった部屋で、酒飲みまくるぜ!)』


 『アラター!会いたかったぜ!(もう硬いベッドだと寝た気がしないんだよおおお!)』


 …………………うん、そっか(遠い目)。

 なんというか、マンションに行ったら皆、度肝抜かれるだろうなぁ……


 『ふふふ……涙を流す姿が目に見えます』


 フェイさんや。なんか違う意図に聞こえたんだけど?


 『スーパーマーケットに騎士の皆さんが集まるのが目に見えるようです』


 え?だって[ダイニングキッチン]と[ダイニングbar]くらいは解放しようと思ってたけど?


 なんて思ってたら、むしろ[スカイラウンジ蒼]を解放した方が良いとフェイにアドバイスされたんだ。


『騎士達より、マスターと辺境伯御一家の食事が優先です』だってさ。フェイさんや、殿下は数に入れないの?


『節約思考の方には向きませんし』


 うん、とことん殿下にしてやられた感があるんだろうなぁ……でも、そこがフェイの優しさだと思うけどね。



 ———と、まあ、そんなこんなで出発の時間になりました。


 いざ蓋を開けてみると、意外に少人数だった辺境伯御一家。


 「殿下、いよいよ出発ですなぁ!」


 「ダノン……お前、一応悲壮感を見せろよ」


 「ハッハッハ!暗殺者など、昨日も返り討ちにしてやりましたわ!」


 「だから、声でけえって……」


 なんと!ダノン様夜に襲撃があったそうですが、どうやら昼のマンションの刺激が強くてワクワクして寝れなかったらしい。


 むしろ、襲ってきた暗殺者を返り討ちの上、聞き取りという名の拷問にて諸々吐かせたようで。ひえええ、お、恐ろしい……!


 おかげで、移動中にも襲撃予定がある事が判明したらしいけどね。


 殿下との打ち合わせで、大きな辺境伯御一家用の馬車(10人乗り用/拡張空間付き)に乗る事になった僕ら。出発してある程度の距離をとったらマンションへ移動するし、襲撃が本当に来ても大丈夫。


 襲撃者は騎士達にお任せ。勿論、護衛の騎士達には【人災】と【対物】保険の重ねがけ済みだから、安心しているんだけどね。


 え?殿下?当然、騎士団長自ら出るんだろう?って?……言われてますよ?殿下。


 「クッ、と、当然だ……!」


 「最初からそう言えば良いんですよ」


 どうやらグエルさんに説得されたみたいだね。さっきまで「うちの騎士達は優秀だ!」とか言ってゴネていた人だから、騎士達に責められまくっているけどさ。


 「なら!この俺が!!!」


 「逆に貴方は大人しくしていなさい」


 こちらは辺境伯御夫婦。ダノン様ったらセレナ様に止められているんだ。うん、セレナ様強し。


 あ、ごめん。そう言えば辺境伯家の総人数の話だったね。


 まずは、辺境伯御一家 計四名。

 次いで、執事、各専用メイドと従者 計九名。

 更に、その他雑用メイドと従者  計六名。

 護衛に、辺境伯家騎士  計十二名


 合計三十一名だけど、これでも少ない方なんだって。その分少数精鋭だそうだよ。


 まあ、でも今のマンションなら余裕で大丈夫だね。


 事前に僕は全員の顔合わせをして魔力登録しているから、彼らももう入れるんだけど……


 「では、兄さん。あちらに着いたら連絡下さいね。無事の到着を祈っています」


 「ああ、アインス。領地の事は任せたぞ」


 ダノン様と握手するアインス様。一見仲良さそうに見えるのになぁ……


 そう。なんと堂々と敵対しているアインス様自ら見送りに来ているんだ。


 『心の中をお読み致しますか?』


 『ううん、いい。寝覚め悪くなりそうだもん』


 フェイったら、僕の事揶揄っているな?僕の性格上、知らない方が良い事もあると思うんだ!


 「お義姉さんも、体調に気をつけて下さいね」


 「ええ、ありがとう」


 すると、アインス様はセレナ様にも優雅に挨拶を交わしていたんだ。エレナ様も表情は笑顔のままだけど、内心は凄い事になっているみたい。……貴族の表情筋の凄さを見たよ……


 「エイダン、レナもたまには顔見せにおいで」


 「アインスおじ様もね!」


 「ありがとうございます」


 こちらはまだよく分かっていないレナ様と、笑顔だけど目が笑っていないエイダン様。うん、この辺はわかりやすいね。


 そんな感じで一通り挨拶が終わり(殿下には最初に挨拶してたんだよ)、全員が馬車に乗り込むと、進み出す一団と最後まで見送るアインス様側。


 とても、襲撃者を用意しているようには見えないんだよなぁ……ん?何、フェイ。『マスターはそのままでいて下さい』?なんか、微妙なんだけど……


 でもさ、別に息を殺したように静かにしてなくても良いと僕は思うんだけど、馬車の中は静かなんだよね……?


ガタガタ、カタン……!


「良し!止まったぞ!」


 辺境伯家が見えなくなったところで馬車が所定の場所に止まり、声を上げる殿下に僕はびっくり。


「来たか!」「遂に来たのね!」「もうはなしていいの?」「うん。良いんだよ!」


 次いで、堰を切ったように話し出す辺境伯家の皆さん。え?なんで話すの我慢してたんだろう?


 『どうやら、期待と興味と好奇心を押さえる為だったようですよ?でも、心の中は皆さん愉快な状況でした』


 フェイさんは一人この状況を楽しんでいた様子。フェイ、人の心はそんなに読んじゃ駄目だよ。え?ほどほどにしてる?……本当かなぁ?


 「さあ、アラタ!まずは俺達が移動する!大丈夫だ!俺とダノンが案内するから、アラタは皆を素早く中に入れてくれ!」


 「殿下、そんなに楽しみだったんですか……」


 「当然!さあ、皆待ってるぞ?」


 殿下のテンションにちょっと引いた僕だったけど、まずは当初の予定通り、この馬車の中にマンション扉を設置するようフェイに頼む。


 「「おおお!」」」「まあ!」「うわあ!」「うわっ!」とそれぞれがいきなり出て来たマンション扉に驚いて声を上げてる。

ここでは貴族然とした表情は捨てているんだね。


 「では皆さんは、マンションコンシェルジュの私がご案内致しましょう」


 そう言ってフェイが先導してマンションに入り、殿下や辺境伯家がそれぞれ入って行ったんだ。


 僕はグエルさんと協力して、事前に中に入る執事さんメイドさん侍従さんを呼びに後続の馬車へと向かったんだ。


 あ!勿論、保険がかけているし、ゲンデが僕の側にいるよ?一応ここまでが、僕の仮見習いの時間だからね!


 扉をノックすると、語らずササッと移動をする彼らは、さすが辺境伯家で訓練された使用人達。


 そう、後は騎士達が誰も乗っていない馬車を率いて目的地まで移動する手筈になっているんだよ。


 勿論、騎士の数人はマンションに入るけどね。


 だから僕は知らなかったんだ。僕とグエルさんとゲンデがマンションに入るまで、入った人達が固まっていたなんてね。


 ……うん、最初に『リュクスマンション・藤』を見たら圧倒されるよね。良し、スキルマスターとしてここは一つ決めてみよう!


 パンパンパンッと手を強く叩いてみんなの意識をこちらに向かせると、声を張り上げる僕。


「辺境伯家の皆さん!ようこそ僕のマンションへ!此処では、快適な空間と充実した生活をコンセプトに、皆さんの生活を豊かにする施設と設備が整っています!


 今日は、歓迎の意味を込めて全館内を見学出来るように解放致しましょう!お好きな部屋で貴方の好きなお時間をお過ごし下さい!」

アクセスありがとうございます!

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