『リュクスマンション・藤』をご案内 1
「さて、皆様がいるこのエントランスはメインエントランスでございます。出入り口はマスターが扉を設けた場所、今回はスティール辺境伯家の客間となっております。
また、サブエントランスも新たに追加されました。こちらは[エントランスキー]をお持ちのお客様が出入り致します入り口でございます。現在は、うちのゲンデのみが使用出来るエントランスです」
フェイが説明をしてくれるメインエントランスに、初っ端から驚きが隠せない殿下達。ついでにゲンデと僕まで「ほああ」と間抜けな声を出しているよ。
だって、このエントランスの広さったらないよ!それに色合いもシックになっているんだ!壁面が黒アクセントに金色、床は焦茶、天井はオフホワイトの大理石。
壁の三面が開放感あふれる全開口窓で、なんと窓の外は森と広大な湖が広がっているんだよ!?
え?どういう事?僕の認識だとスキル内だから亜空間だと思ってたけど!?
「皆様が今ご覧になっている景色に関しては、当マンションのオプションで造られた空間です。勿論、外に出て散歩も出来ますが、散策の範囲は限られておりますのでご了承下さいませ」
フェイ、こう言う時は考えを読んでくれてありがとう!っていうか、このスキル凄いな!?景色も造り出すのか!
僕まで驚く様子に、ご満悦なフェイ。そして一人一人に何やら紙を渡しているね?……うん?これは……!!!
「さて、皆様にはこのリュクスマンションの全容をお知らせ致しましょう。先程お渡しした紙をご覧下さいませ。
*****
ー『リュクスマンション・籐』全館案内図ー
BF1/スーパーマーケット・泉
1F/メインエントランス・サブエントランス・エントランスラウンジ・エレベーターパーキング(バレーサービス/ルームイン・アウトサービス有り)・共用会議室1.2.3・男女別大型トイレ・リュクス藤銀行
2F/フィットネスジム(解放条件 MP100,000)
ダイニングキッチン・新(解放条件 MP100,000)
ダイニングBAR・緋(解放条件 MP100,000)
シネマ・スプリング
3F〜9F/1LDK+WIC+SIC 各階ワンフロア 10戸
10F〜15F/2LDK+WIC 各階ワンフロア 8戸
16F/3LDK+SIC 8戸
17F〜18F/3LDK+S+WIC+SIC 各階ワンフロア 6戸
19F/パーティ会場・奏
20F /スカイラウンジ・蒼(解放条件 MP200,000)
オーセンティックBAR・紫炎(解放条件 MP150,000)
22F〜23F /ロイヤルパレス(10LDK+WIC+SIC) 各階層1戸
24F/マスタールーム(ベースルーム)
25F /スカイガーデン・翔 (解放条件 MP70,000) 』
*****
——以上が全容となっております。……皆様、一度休憩を致しますか?」
どうやら全員がついていけていない様子だったらしい。フェイが気を効かせてエントランスラウンジに案内してくれる。
勿論、ラウンジで座るのは僕とダノン様と殿下。ゲンデは僕の後ろに立っているし、セラさんはダノン様の後ろ、グエルさんは殿下の後ろに控えているよ。
僕らが座っているのも高級一人掛けソファーだから座り心地は最高品質。ゆったりとしていてモダンな本革造りなもんだから、これまたダノン様や殿下は驚いている。
僕だって今はアラタの意識が強いから、根が庶民なだけあって恐々と座っているんだ。
これ、慣れるまで時間かかりそうだなぁ……
「紅茶とコーヒーとソフトドリンクのご用意がございます。いかがなさいますか?」
フェイが飲料を選ぶように言ってくれるのがありがたいよ……僕も喉が渇いてきたんだもん。
「あ、ああ。俺はカフェオレで頼む」
「かふぇ?……俺は、紅茶で頼む」
「フェイ、僕はオレンジジュース」
「畏まりました」
フェイは使い方を教えるんだろうな。ゲンデやグエルやセラさんを連れて、ドリンクバーがある壁際へ移動していったんだ。
そして、左右から聞こえてきた大きなため息。
「「はあああああああああ……」」
これには同時にため息を吐いたダノン様と殿下が苦笑い。
「殿下、完全にお手上げです。どうなっているんですか?この空間は?」
「悪い、俺も全く同感だ。アラタの規格外さを更に思い知っているところだ」
二人がちょっと疲れた顔をしているけれど、僕のせいかなぁ?
「こう言っちゃなんですけど、僕だって初見だという事を忘れないで下さいね!」
「そうなんだよなぁ……怖いのはスキル所持者がわかってないところなんだよ……」
「確かに、殿下が言う通りですな。どうやら見たところスキルで全てが備えられている。……という事は初期経費要らずですぞ?」
「へえ。ダノン、お前も意外に気にするんだな」
「当然ですな。一応領民の税で生きておりますから、節約に関しては気をつけていますぞ」
「まぁ、副官に頼んでいるんだろうが、良い気構えだ」
「……殿下は一言多いですな?」
「性分だ」
なんてダノン様と殿下がなんてことない会話をしていると、それぞれが各自の主の飲み物を運んで来たんだ。
「アラタ、ほら」
「ありがと。ゲンデも飲んだ?」
「ああ、フェイはその為に俺らを連れて行ったみたいだ」
「そっか」
さすが気の利くコンシェルジュだね!
『恐れ入ります』
……うん。こう言うところがなければ、ね。
今の僕の考えはスルーしたのか、殿下やダノンさんを見て笑顔で語りかけるフェイ。
「さて、皆様。時間の関係上全てをご案内するには難しいと存じます。ご希望の場所を優先してご案内させて頂きますが、いかがなさいますか?」
希望の場所か……僕はスーパーマーケットかなぁ。
「俺はとりあえず騎士達が入る部屋を見てみたい」
「ほお、流石は殿下。部下思いでいらっしゃいますな。俺は今後家族が入るであろう部屋が見てみたいが」
二人共まずは身内優先なんだなぁ。うん、上司がこういう人達なら下の人達もついてきやすいだろうね。二人共慕われている理由がわかるや。
「畏まりました。では、殿下が仰る3階の一室と辺境伯御一家が宿泊予定の18階の一室をご案内致しましょう。マスターのご要望にはお時間がかかると予想されますので、後ほどご一緒に参りましょう」
……ちょっと残念だけど僕はこれからもここにいる訳だし、ゆっくりみれば良いか。
そう思ってたら殿下が「すまんな」と声をかけてくれた。気遣い屋さんだなぁ、殿下。
一方でダノン様といえば、ワクワクを隠しきれてないみたい。早く見たいのかもう立っているし。
それに、控えているグエルさんやセラさんもなんとなくソワソワしてるね。ゲンデは……うん、もう浮かれているね。
「俺の部屋も変化しているんだろ?く〜!楽しみすぎる!」
うん、気持ちは分かる。元々ゲンデ今の時間は勤務外だった筈だからね。僕もワクワクしてきたし!
「では皆様、エレベーターにお乗り下さいませ」
ポーン……と音がなって静かにエレベーターのドアが開くと、順次に乗り込みフェイが扉を閉めて3階のボタンを押す。
移動は一瞬。しかも動いたの?ってくらい静かなんだよ?
前の低層マンションの時に全員乗っているからそんなに驚きはしないけど、「ほお」とか「へえ」と感嘆の声が聞こえてきたから、やっぱり性能の違いは感じとったみたいだね。
ポーン……と3階到着の合図が鳴りドアが開くと、まずはエレベーターホールがお出迎え。此処もかなり広めに造られているね。
エレベーターホールを出ると共用廊下に出て、目の前には爽やかな森の景色が広がっていたんだ。
「こちらは森サイドになっています。反対側は湖サイドで、景観はお好みで選ぶ事が出来るようになっております。
因みに、3階から9階まで各階層全室同じ作りですのでご安心下さいませ。では、こちらをご案内致します」
全員が景色に魅入る中、ちょっと奥まった入り口の扉を開けて先に入って行くフェイ。
玄関を入ると、これが一人用?って思う位の4、5人は入る玄関がお出迎え。この広さに加えて、左に大きめのシューズインクローゼット(SIC)も完備されていたよ。
そこからスリッパを人数分出し、並べながら説明をするフェイ。
「低層マンションと同様、靴を履いたままでも対応出来るようにしておりますが、お寛ぎ頂くには室内履きのご利用を推奨しております。今回は、是非皆様スリッパをご体感下さいませ」
僕や殿下達はもう既に利用しているけど、ダノン様とセラさんは初めてだったからちょっと戸惑ったみたいだね。……でも、履いて気持ち良さそうで良かったよ。
全員が履き替えるのを終わったと同時に、フェイが設備を説明し始めたんだ。
「廊下の左右をご覧下さい。まずは右側に洗面脱衣室と浴室がございます。こちらは白を基調とした落ち着いた空間をコンセプトにしております。石鹸や歯ブラシ、タオル等は宅配ボックスでお取り寄せして頂く事になります」
そんな説明を聞きながら、洗面脱衣室に入って行くダノン様とセラさん。ここは、主に見た事のない二人が中に入ってチェックしていたんだけど……
「はああ!」「こりゃ凄い」「これを騎士が使うのか!?」
なんて、主にダノン様の声が響いていたけどね。僕の隣でゲンデとグエンさんが「前より広い」とか「浴槽が大きくなりましたね」なんて嬉しそうに言ってるからやっぱりグレードはアップしていたんだね。
因みに、左にあったトイレでもダノン様とセラさんは驚愕していたよ。
「我が屋のトイレよりも格段に性能が違う……!!」「なんと!これでトイレなのか……!」って驚いていたんだ。水洗トイレなんてこの世界じゃないもんね。
「ぎゃあああ!水が便器からでよった!!」
あ!ウォシュレットの使い方教えてなかった……うん、フェイ。ダノン様やセラさんに使い方を教えてあげて。
その間に、僕たちは廊下の先にある扉を開けて中に入って行ったんだ。
「は?これで一人用なのか……?」
ゲンデが嬉しさの余り震えて指で確認しているよ。うん、モデルルームみたいになっているね。
リビングの右側奥にキッチンスペースがあって、キチンとIHコンロがついているから、簡単に料理出来そうだね。
あ、簡易冷蔵庫もついてるんだ!騎士達も冷えた飲み物よく買っているし必要だったもんね。
「へえ、こりゃ座り心地も良いな」
殿下はリビングの二人掛けソファーに座って、目の前のTVのリモコンを使って、もう宅配ボックスの使い心地まで試しているよ。
あ、どうやら宅配ボックスは全室使えるようだね。ん?チャンネルが増えて有料の映画やアニメが見れるようになっているや。グエルさんも殿下と一緒になって確かめているね。
僕はウォークインクローゼット(WIC)の広さを確認してたんだけど、約3畳分位の広さだったよ。一人だと充分過ぎるくらいだね。
「うおおおお!これ、今まで以上に起きれなくなる!」
うわっ!!隣の寝室から叫び声が聞こえたと思ったら……ゲンデだった。びっくりしたなぁ、もう!
どうやらベッドがセミダブルベッドに変わっていて、マットレスもまた柔らかく程よい硬さのグレードになっていたみたい。リネンも備えつけの物は肌触りが最高だしね。
あ、ゲンデ!そろそろ起きて!ダノン様達がきたから!
「なんと!部屋には家具まで付いているのか!?」
あ、良かった。まだ視線はリビングの方だったね。
……でも、実は僕も気になっていたんだよね。本来マンションって部屋だけ買うものだし、家具とか付いてないのが普通だと思ってたから。
まぁ、その辺はフェイさんに聞いてみよう。
「はい。今回は全室モデルルームとして作らせて頂きましたので、それぞれの部屋にあった家具も備えさせて頂いております。しかし、これはウィークリーやマンスリー契約のお客様のみのサービスでございます。
お部屋のご購入の際は、家具が一切ない状態になりますのでご注意下さいませ」
「ふむ。家具ごと欲しいのであれば、別途に料金がかかるということか……」
ダノン様の独り言に関しては、殿下も初耳だったのかグエルさんと何やら話しあっているみたいだったね。
そう、今は登録者の騎士達や殿下はマンスリー契約の状態って事だね。辺境伯御一家もとりあえずはそうなるだろうな。
え?ゲンデの部屋と僕の部屋は?って?
「マスターとゲンデの部屋に関しては、私が見繕っておりますのでご安心下さい」
「え?フェイさん?俺の部屋の家具、敢えて安い物にしてたりとか……?」
「ゲンデはマスターに感謝して下さい。最高品質の家具で揃えていますよ」
「アラタぁああ!ありがとう!!!」
なんて一幕もあったけど、まずは殿下ご希望の部屋の内覧は終了。
「騎士達の部屋として上等過ぎるわ!」
まあ、殿下にツッコミ貰ったけど、それ僕に言われてもなぁ……って困ったりしたけどさ。
一時の贅沢だと思って、殿下お支払いをよろしくお願いします!っていったら、なんかフェイに相談に言ってたよ。
王族も値切りするんだね。まぁ、殿下なら僕は安くしても構わないけどさ。
ん?甘いって?あー……はい。フェイさんに任せます。
「よし!次は、我らが使う部屋でいいか?」
あ、ダノン様待ちきれなかったんだね。もう玄関に行って叫んでいるよ。
「はい、では皆様。次は、18階へと参りましょう」
フェイの言葉に移動する僕達。ええと、18階は、、3LDK+S+WIC+SICだっけ。
ん?辺境伯御一家は四人だっだよね?
部屋割りはどうするんだろうね?
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