その頃のゲンデ。 前半ゲンデ、後半アラタ視点
すみません!前話を直しました。宜しければ前に戻ってお楽しみくださいm(_ _)m
「ったく、アラタの側を離れるのだけでも嫌だったのに……お宅の殿下は人使い荒いよなぁ?」
「だが、主は優しい」
「そりゃそうだろ。じゃなきゃフェイがアラタに寄せ付けさせねえわ。——で、『対象』はやっぱり閉じ込められているのか?」
「ああ、見張りが二人ついている」
「了解」
身体強化をかけて高速移動中に会話する余裕があるのも、歴戦の諜報員に気楽に言葉を投げつける事ができるのも、【人災】保険がかかっているからだな。
ったく……アラタを守りたいっつーのに逆に守られてばっかりだとは情けねえ。だが、これがあるから大きく動けるのも確か。
まだまだ実践経験が足りないからな、俺は。いい機会をくれたもんだぜ、殿下も。
民家の屋根の上を飛んで移動する諜報員の後をついて行く俺は、考えながらの移動に気を緩めていたらしい。
!!
「危ねえだろうが!」
察知した俺が飛んで逃げた足元の屋根に、投げナイフが突き刺さる。勿論、投げた張本人は諜報員。
「余計なことを考えるぐらいなら戻れ」
「ふざけんな!誰が戻るかよ!」
「だったら、集中しろ」
そう言って動き出した諜報員。俺も素早くその後をついて行くが、コイツらの体力はどうなっているんだ?ついて行くのに精一杯だってのはちょっと悔しい。
因みにコイツからは名前を教えられていない。無能には教える価値がない、だってよ。言ってくれるぜ。
だが、俺だって経験値を積ませて貰うさ。コイツの仕事の一挙一動が為になる。無駄な動きをせずに行動をするのは、見ていて惚れ惚れする。
あんな動きを俺も身につけたい……!
だからこそ機会は逃しちゃいけないんだ!って、決意してたら着いたらしいな。
スタッと極力音を立てずに地面に着地すると、窓から中を様子見る。すると……『対象』の母親を発見。
家の中では自由に動けるらしいな……
見張りは……?今気を抜いているのか欠伸しながら反対側を見ている。
さて、と。俺は俺の仕事をするか……
******
『アラタ、聞こえるか?』
『ハイハイ!聞こえてるよ?』
話し合いの最中に、僕にもゲンデからの念話が入ったんだ。うん、無事で何より。
『ゲンデは今何処?』
『接触対象であるクウィラの母親の所だ。予定通りニューマンションの[エントランスキー]を使用する。出て来れそうか?』
『はーい、今行くよ』
そうなんだ!僕もさっき聞いたけど、ゲンデが接触成功したのは盗聴スキル持ちクウィラさんの母親。
どうやら体調の余りよくない母親を人質に取られ、アインス側についていたそうだよ。
しかも母親にとっては、その見張り役が息子から遣わされたお手伝いさんとして認識されているから余計にタチが悪いんだ。
で、ゲンデが接触したけれど、疑われているんだろうね。という事で、ゲンデが持つ『ニューマンション』の[エントランスキー]使って僕を呼び出している訳なんだけど……え?なにそれって?
そっか!説明してなかったね。
[エントランスキー]は『ニューマンション』の居住権を持つ人だけが入手可能なカードキー。要するに、外部の自分のいる場所から僕の『ニューマンション』のエントランス空間に繋げる道具なんだ。
因みに、[エントランスキー]には生体認証機能と所有者に必ず戻る機能がついているよ。セキュリティは万全!
登録者は今のところゲンデだけ。僕とフェイはそれ要らないし。殿下達は居住者じゃなくて登録者だから持ってないよ。
って事でゲンデが動いているんだ。そう、お母さんをこちらに保護する為にね。最終的に『ニューマンション』に入れるかどうかは僕が決めれるみたいだけど。
『一応、殿下か辺境伯様かどちらか来れないか?今も騒がれてないだけで睨まれているんだ』
『あーそうだねえ。ちょっと待って』
「えっと、今ゲンデから連絡が僕にもあったんですけど、クウィラさんのお母さんが疑っているそうなんです。で、よければ殿下かダノン様のどちらか説得に来て貰えますか?」
「セラか。だったら俺が動こう。だが、すまん。本当にすぐセラの家に行けるのか?」
「はい、勿論ですよ」
なんて言っても信じられない気持ちもわかるし、みんなでエントランスに移動する事にしたんだ。
『ゲンデ良いよー』
『わかった。……驚かないで下さいよ』
ゲンデの声が念話で聞こえたと思ったら、玄関の自動ドアがシュゥーと開いて、ゲンデと椅子に座った女性の姿が見えたんだ。
「なんですか?なにも起こってませんよ?」
「セラ。相変わらずだな」
「っ!!ダ、ダノン様?本物ですか!?」
おそらくこの女性には、なにもない所からダノン様が出てきたように見えたんだろうなぁ。叫ばれなくて良かった。
「ああ、そうだ。セラ、俺の家に仕えていたお前なら分かるだろう?この魔石の紋章の意味を」
ダノンさんは胸に付けていた丸い魔石を女性に見せているけど……確か、砦と8枚の緑の葉の模様だったっけ?なんか意味あるのかな?
「それは領主だけが持てる証……!では、この青年が言っていた事は本当なんですか!?」
「ああ。クウィラはお前が囚われていると聞いて、……アインスに寝返った」
「……なんて事を……!大恩あるダノン様にご迷惑をお掛けするなんて……!……いえ、私なのですね?原因は。ならばこのセラ、命をかけてクウィラを説得致しましょう!ダノン様、私をお連れ下さいませ」
「流石。セラの豪胆さは健在だな。この不可思議な状況を受け止めるとはな」
「世の中は知らない事で満ち溢れているのですわ。ダノン様が空中から現れたのも何か力が働いていらっしゃるのでしょう」
「見事!ならば、アラタ殿、セラを連れて行きたいのですがお願い出来ますか?」
あれ?なんか僕ダノン様から殿呼ばわりされてる?まあ、後で訂正させて貰おっと。
「ハイハーイ。あ、初めまして。そこのゲンデの主のアラタと言います。詳しい事は後にして、僕の手の平に手を乗せて下さいますか?」
「あ、はい」
僕の登場にクウィラさんのお母さん驚きはしたけど、すぐに僕の右手に左手を重ねてくれたんだ。うん、魔力登録完了!
「っ!!こ、これは……?」
「あ、入り口見えましたねー。一応、何か持って行きたい物あります?しばらく此処に戻れませんよ?」
僕が念の為聞くと、少し時間が欲しいと言ったクウィラさんのお母さん。もう、セラさんでいっか。
セラさんが準備している間にダノン様はマンションに戻り、僕とゲンデが外の様子を見張ってたんだ。
あ、殿下の諜報員はそのまま外でいるよ。ゲンデが合図を送っていたから、また持ち場に戻ったんだろうね。
「お待たせ致しました」
「早いですね!」
「これでも元侍女ですから」
「うん、なら行きましょうか」
いくら度胸があるっていっても初めて通る時は不安だろうし、僕が先に自動ドアを潜ってマンションに戻ると、エントランスにはフェイだけが待っていたんだ。
「あれ?フェイ、お二人は?」
「殿下とダノン様は先にゲストルームにお戻りになりました。グエルが付いてますので大丈夫でしょう。マスター、お疲れ様です」
フェイが僕にオレンジジュースを用意してくれたみたい。そんなやってないけど……うん!美味しいね。
「あ、フェイ!俺にはないのか?」
「ゲンデは自分でどうぞ」
「くぅー!今回俺頑張ったのに!」
「諜報員に負けているなら、まだまだですよ」
「フェイ、お前……!ハイハイ、わかりましたよー!アラタ、俺このまま今日休んで良いか?」
「良いよー。お疲れ、ゲンデ」
「マスター、そこが甘いのです」
「まあ、良いじゃん。そろそろセラさんの意識を戻してあげないといけないし」
そうなんだ。セラさん、入って来た途端エントランスを見てから唖然として動かなくなってたんだよ。
「もしもーし?セラさん?」
セラさんの目の前で手をフリフリしていると、やっとハッって
気づいたみたい。良かった。
「す、すみません!余りに見事な造りに感動してしまって……!」
「いえいえ。これは序の口ですよ。さあさ、まずは詳しい詳細を教えますから、こちらへどうぞ」
僕が先頭になって三人でゲストルームへ向かう道中も、セラさんの目が忙しく動いていたみたいだね。1番後ろを付いて来たフェイがニコニコしてたもん。
まあ、マンションを見て感激してくれたら僕も嬉しいけどさ。でも、此処で驚いてたらもっと驚くだろうなぁ。反応見るのが楽しみだね。
あ!そういえばボルグド殿下いるの話してなかったような……?
『仕方ありません。その場で理解して頂きましょう』
フェイさん、だから考え読まないでよ……。
でもセラさん、ごめん!もうゲストルーム着いちゃったから、持ち前の胆力で乗り越えて下さい!
誤字報告に感謝して今日18:10にもう1話更新します。また24日から31日まで6:30、12:10、18:10と1日3話更新します。ちょっとした贈り物です。楽しんで下されば嬉しいなぁ。




