辺境伯家の内情
すみません!間違って2度同じ内容を投稿してしまったようですm(_ _)m
改めて更新致しました!誤字報告で教えて下さってありがとうございました!
開いた口が塞がらないってこう言う事なんだろうなぁ。
辺境伯様『ニューマンション』に入って、入り口から動こうとしないんだ。殿下もその姿に大笑いしているけど、いや、流石にその姿は気を抜きすぎでは?
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登録を済ませると「どうぞ」とフェイが辺境伯様を連れて『ニューマンション』に入って行っちゃった。殿下もそれに続き、グエルさんが僕の背を押して一緒にマンションに戻ったんだ。
え?見張りは大丈夫ですか?スレッドさん(騎士)が来てくれる?あ、はい。
そう言われて『ニューマンション』に入って、立ち尽くす辺境伯様にぶつかったのがつい先ほど。
「失礼しました。大丈夫ですか?」
「ああ……いや、大丈夫ではないな……なんだ!ここは?」
「はい、ここが僕の奥の手『ニューマンション』です。で、どうでした?僕の演技っぷりは?」
「ああ、思いっきり素だったな!」
「む?殿下には聞いて無いですぅー!辺境伯様に聞いたんです!」
「いや、急場凌ぎですまなかった。それに、殿下。諜報員を派遣してくれて助かりましたぞ!我が屋敷は奴が牛耳っておりましてな!」
「ダノン……お前、相変わらず剣だけしか興味ないんだな。セレナの苦労がわかるよ」
「ああ、勿論『素朴な田舎者少年』の役はハマり役でしたぞ!」
「聞けよ、俺の話」
はい、本来の辺境伯様はこんな感じの御人です。殿下はちょっと拗ねちゃっています。
はい、機嫌直して下さい。殿下のお好きなカフェオレですよー。
なんて茶番劇をやりつつ、場所をゲストルームリビングに移した僕達。
「ハッハッハ!もはやなんでも有りですな!」
ダノン様がちょっと壊れました。理解が追いつかなくて考えるのを諦めたら、笑いが止まらないという現象に陥ってます。
そんなダノン様を横目に話し合いを始める殿下。
「……まあ、ダノンはその方が話が進め易いか。さて、ようやく本題に移れるな。まずは、盗聴スキルのクウィラの奪還が先か」
「いえ、殿下。辺境伯家の皆さんの安全確保が先でございます」
殿下の提案にすかさずフォローを入れるグエルさん。殿下も「わかっているが、アラタが居れば大丈夫だろ?」と同意を求めてきます。
「殿下?マスターを顎で使おうなどと思っていませんよね?」
「当然だろ?アラタには借りがありすぎて、俺だって頭上がらないわ」
「ならばよろしい」
フェイも最初っから飛ばしているなぁ。まあ、確かに殿下には貸し作ったからね。しばらく僕働かなくても賃貸収入でやっていけそうだもん。
ん?読者を置いていくなって?
えっと……この話はどこまで戻るかなぁ。あ、そうそうゼネストの街(10話)に入る前まで遡るんだ。
きっかけはグエルさんの一言。
「殿下。辺境伯家に到着の知らせを出しておきましたが、諜報員が手紙を持ち帰ってきたのですが、いかがなさいますか?」
その日、殿下は珍しく『ニューマンション』の部屋でお仕事中(報告書作成中)だったんだけど、たまたま明日の辺境伯領について相談に来ていた僕とフェイとゲンデ。
「えっと、じゃ、僕ら部屋に戻ってますね」
気を利かせてその場を去ろうとした時、「ちょっと待った」と殿下に呼び止められたんだよね。
「俺の予想通りなら、アラタ達にも聞いて欲しい」
なんて言われて、ちょっと読み終わるのを待っていたら———
「……案の定だ」
「殿下、やはりセレナ様からのお願いですか?」
「ああ、そうだ。状況はこちらの形勢が不利になっているようだな」
「では、王都のタウンハウスへ家族旅行という名の避難をなさるわけですね?」
「セレナはかなり悔しいらしいな」
「心中お察し致します」
なんてグエルさんと殿下で話始めるんだよ?いやいや、ちゃんと話をしてくださいって!
ジト目の僕ら三人の視線に、殿下が苦笑して教えてくれたのは……
「辺境伯家の乗っ取り!?」
「ああ、そうなりましたか」
「はぁ!?なんだそれ!?」
という若干一名何やら反応が違うけど、これから向かう辺境伯家の不穏な報告だったんだ。
辺境伯家について説明すると、当主ダノン・スティール辺境伯(33)と妻のセレナ・スティール様(30)、ご令息のエイダン・スティール様(13)、ご令嬢のレナ・スティール様(5)の構成になっているんだけどね。
そこに、辺境伯の弟アインス・スティール様(31)が数年前騎士団から戻ってきた時から、不穏な事が起こり始めていたらしいんだ。
そもそも、アインス様は騎士団の副隊長を務めていた位の実力者。それが魔物討伐で部下を庇って重傷を負い、普段の生活は出来ても戦う事は出来ない身体になってしまったみたい。
そして、その時に結婚していた奥さんは、騎士団の地位を辞退するアインス様に見切りをつけて実家に子供と一緒に戻ってしまったんだって。貴族としての見栄だとかグエルさんは言ってたなぁ。
そうして心身ボロボロになっているだろう、と家族の了承を得て実家へ呼び戻したダノン様。お優しい方だと思ったけど、ダノン様曰く———
「いやあ、事務処理というものが根っから苦手でしてなぁ。気づけばやられておりましたわ!だからこそセレナを娶れて俺は幸運でしたな!」
なんてあけっぴろげに言って笑うくらい脳筋だったんだ。あ、これは後日談だよ。
殿下が「あいつは脳が筋肉で出来ている」って頭を抱えて教えてくれたのがその時の話。その分、強さは一級品で騎士団長の殿下を超える力で辺境伯領を守ってきたんだって。
で、そのダノンさんを裏で支えてきたのがセレナ様。領民思いなのはダノンさんと一緒で、お互いに出来ない分野を補いつつ二人三脚で頑張ってきたのに、何故不利な立場になったのかは理由はこれ。
「アインスは人の心を掴むのが上手いんだ。孤児や一人親や教会に寄り添うように行動する。それも自分が領主ならもっと寄り添えるかのように言ったり、領主夫婦の不仲をほのめかしたり、屋敷の下働きにも同じように寄り添うように同情と信頼を得る行動を積み重ねていたらしい」
殿下は頭を抱えながら教えてくれたけど、ちょっと悔しそうだったな。
「騎士団の頃はそれが上手く作用していたのに、何故実の兄を嵌める行動をするのか……!」
って手をぎゅっと握り締めていたな。フェイが念話で『殿下も裏切られた側なんでしょう』なんて言ってたけど僕もそう思ったよ。
で、遂に領民や屋敷の使用人からの陳情が増えて、殿下が来るなら一緒に王都に向かいたいとセレナ様を通してお願いがあったのが、さっきの手紙の件なんだって。
そして殿下と移動といえば、当然関わって来る僕のスキル。
「そこでだ。辺境伯一家を助けたいんだが、アラタの力を貸して欲しい。時が来るまで辺境伯一家を匿ってくれないだろうか?」
殿下によると、おそらくタウンハウスにも居られない状況だろう、と今から予想がつくみたいなんだ。
で、僕はう〜んと悩む。
『フェイ、ゲンデ?話しを聞く限り、僕は助けたいと思うんだけどどう思う?』
『俺はアラタに任せるが、殿下が信頼しているんだから良いと思うが?』
『私も基本マスターに従いますが、この件は実際に確かめてから判断させて頂きたいですね。勿論タダでは動きません』
うん、フェイの看破スキルで裏を取れたら良いね。
「殿下、僕とフェイを直に辺境伯に会わせて下さい。最終的にフェイ達の判断に任せます。フェイとゲンデは僕の事を1番に考えてくれますから」
「そうか……!懸念は一つ、盗聴スキル持ちがアインス側についている事だ。だから、アラタ。お前には詳しい点は話せないが良いか?」
「え?なんでです?」
「「「顔に出るからだ(です)(だな)」」」
むっ!!三人揃って言うとは……!!!……だけど言い返せない……!今だって読まれまくっているしなぁ(遠い目)
「わかりました。僕は全面的にフェイとゲンデを信頼します」
「おい、俺は?」
「殿下はもうちょっと努力して下さい」
「お前なぁ……」
————って言うやり取りがあったんだよね。
そしてやっぱり表情に出してしまっていた僕は、みんなの言う通りだったわけで……
「アラタの天然ボケが炸裂していたおかげでやりやすかったわ」
「ふむ。事前に情報を得ていてあの表情でしたか……」
……悔しいけど殿下とダノン様に言い返せない……!演技もちゃんと入ってたのに!(当社比)。
「アラタ様は正直を貫いておりますから。私はわかってますよ?」
「フェイ……!」
「アラタ、いえ、アラタ様。今は辺境伯ご一家の事で相談したいので、一旦こちらに意識をお戻し下さい」
グエルさん……真面目だなぁ。フェイも乗ってくれたのに。まあ、いっか。
「あ、話し会う前にゲンデの姿が見えないけど……殿下?ゲンデに何か頼みました?」
「ああ。諜報員と組んで動いて貰ってるな。悪いな、ゲンデを使わせて貰って。ウチの騎士達は顔知られていてな」
「なるほど……!それで!」
「そのゲンデから報告来てますよ?『対象に接触成功』だそうです」
「「おお!!」」「優秀ですね」
フェイの報告に殿下とダノン様が笑顔で顔を見合わせる中、グエルさんはゲンデをちょっと見直しているみたい。ゲンデはやる時はやる男ですよ!
と言うか……いい加減、その歯に物が挟まった話し方やめて貰って良いですかねぇ?
お読み頂きありがとうございます!




