第一章 幕間
八姫八君は公には、男は『〇行家』、女は『〇条家』と呼ばれる。四行家は第四王子・四郎の家系であり、二条家は第二王女・二子の家系であった。
――女王は王ではなく神である。
二条家はそう定義した。女王の尊厳を損ねることなく、むしろ崇高なものに押し上げ、自らは神の権威を預かる者であると。
これにより、女王の役を食うことは決してあり得ないとし、二子は女系の王位継承を許されようとした。
しかし、第一王女・一姫はこれを許さなかった。
女系継承が始まれば、一姫と二子が争うことになる。だが一姫は一向に子を成せなかった。二子は自分の子を養子に取らせることを勧めたが、その謀が更に一姫を憤慨させた。これには第一王子・太郎の目論見も一枚噛んでいたと思われるが、真相を知る者はいない。
そして、二子は道半ばで憤死したという。
神子を産み続ける二子唯一の権能。それは時代を跨ぐにつれて他の八姫八君の脅威となる。神子の総数が二子の血統で埋め尽くされれば、女王の存在すら脅かしていただろう。
勢力の均衡を覆してしまう力が彼女自身を滅ぼし、その子孫達にまで永い呪いをかけてしまったのである。




