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オルドの自伝書  作者: うめ助
一章
9/36

8話


「もう!今までどこに行ってたの!」


 カナリヤの怒号が応接室に響く。


 カナリヤの視線の先には正座をした李夏とアレクセイがいる。


「団長怒らせるのは相当だぞ...」


 その様子を遠目から呆れた顔でハーレンが聞いていた。近くには同じような顔をしたライルも立っている。


 カナリヤは普段は穏やかで怒ることもほぼないのだが、今回の李夏の行動は簡単に許せることではなかった。


「ごめんなさい……」


 李夏はしゅんとしてカナリヤの言葉を受け入れる。大声に驚いたのか、体が少し震えていた。


「なんで俺まで」


 反省している李夏に反して、アレクセイはあまり納得していないようだった。


 次第にカナリヤの顔が怒りから心配に変わる。


「……心配したのよ」


 カナリヤは膝を着いて2人を抱きしめる。


 その抱擁は優しく、まるで母のような温かみを感じた。


 もしお母さんがいたら、こんな風に抱きしめてくれたのかな。と母との記憶が朧気なアレクセイは軽く抱きしめ返す。


「でも、無事だったなら良かった。そうだ、あなたの名前を聞いていい?」


 カナリヤは離れるとアレクセイの方を向いた。


「アレクセイ・ルータイです」


「アレクセイくんね。来て早々怒ってごめんなさい。李夏くんの表情を見るに、ここに居てくれるのよね?」


 そう言うカナリヤを「あ、綺麗な人だ」と、アレクセイは思った。


「これからよろしくね。あなたの部屋も用意させておくから、今日は休んで」


 カナリヤはふっと微笑むと、使用人に指示を出した。


 カナリヤが離れたのも確認したハーレンとライルは正座したままの2人に近づいて話しかけた。


「お疲れ。かわいそうとは思わないからな。今回のは自業自得だ」


「当たり前だよ!突然半月も居なくなったんだから!」


 ハーレンとライルは怒りを通り越して呆れの境地にまで行っているようだ。


 しかし言動からはもう許している様子だった。


「貴方はアレクセイって言うんだよね?私はライル!これはハーレン!よろしくね!」


 ライルはアレクセイと同じ姿勢になってそう言った。


「これって何だよ。一応先輩なんだけど」


 眉が上がっているハーレンをよそ目に、ライルは話し続ける。


「ねぇその服、凄い高価なものだよね。貴族か何かなの?」


 ライルの観察眼はすごいものだ。人の言動などから感情をある程度読み取り、さらには物の価値まではかれる。


 ちなみに、彼女は爆発物を好むのだが、周りがどんな反応をしているのかも分かりきった上でしているのだ。


「そうですね。元、王と言いますか……」


 アレクセイはライルの気迫に押されてたどたどしい態度になる。


「えー!王様なの!?ていうかここを離れて何してたの!?李夏くんとはどこで会ったの!?関係は!?」


 ライルはぐんぐんとアレクセイに近づいてくる。


 アレクセイは李夏をちらりと見るも、李夏はその場から2歩ほど下がっていた。


 李夏は申し訳なさそうにアレクセイから目を逸らす。


「(着いてくるの間違いだったかもしれない)」


「そろそろいいだろ。離してやれ」


 頃合いを見て、ハーレンはライルを引き離す。


「そろそろ部屋の準備も出来てるだろう。李夏、案内してくれるか?お前の部屋の隣だ」


 暴れるライルを片手で組み敷き、片手間でハーレンはそう言う。


「分かりました。ありがとうございます」


 李夏とアレクセイはその場を離れる。広い応接室にライルの暴れる声と音が響いた。

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