19話
「くっそ……!攻撃が効かないんじゃなにもできねぇ……!」
ハーレンがアレクセイと合流した後、アレクセイも魔法での攻撃を試みたが、もちろん弾かれてしまった。
ゴーレムが地面を殴るたびに足元は激しく揺れ、巨大な岩石がハーレンめがけて飛んでくる。
ハーレンのいく先は岩で塞がれ、潰れるのを待つことしかできなくなった時、
「プロテクト!」
聞き覚えのある声。ハーレンに向かってきた岩は厚く硬いバリアにぶつかって粉々になった。
「李夏……!良い登場するじゃねえか」
ハーレンの視線の先には、構えた腕を震えさせた李夏が立っていた。
李夏の後ろには、髪をくくったクラハもいる。
人数が増えたのはいいことだが、以前状況は変わらない。
「ゴーレムに攻撃が届けば勝機はあるのになぁ……」
李夏の小さなつぶやきを、クラハは聞き逃さなかった。
「(李夏さんの武器は壊れて、ハーレンさんとアレクセイさんの魔法は通らない。今ぼくができることは……!)」
クラハは自分のしっぽに手を伸ばすと、鱗を掴んで、力強く剥がした。
「(い゛っ……!)」
しっぽに激痛が走る。それでも剥がす手は止めない。これが、無力な自分ができる最大のことだから。
「(ぼくらの種族の鱗はすごく硬い。これを加工すれば、ゴーレムなんて一発だ……!)」
クラハは懐から愛用のハンマーを取り出し、それを鱗に打ちつける。
いくつもの鱗が重なって1つの塊になり、溶岩で溶かされたら手で成形する。
後は冷やすだけ。それなのに、
冷たいものを持ち合わせていなかった。
いつもそうだった。肝心なところでミスをする。せっかく決めた決意が崩れそうになる。
しかし、後ろから冷気を感じた。
「これだからクラハはグズなんだよ」
後ろから伸ばされた手の持ち主は紫色の目のクラハだった。でも目の前にいるのはクラハなのに、一瞬メイハが見えた。
「《フロリア・ストリーム》」
隣にいるクラハの魔法で、厚い武器に水がかかる。ジューと音を立てて、4つの武器が完成した。
武器全体が緑色で、よく見ると鱗の柄が見える。
剣、拳銃、杖、そして弓。
弓はクラハが使う分。プロほどの腕前ではないが、護身程度に習っていた。
「……皆さん!これ使ってください!」
クラハがそれぞれに武器を投げ渡す。
「これ……!」
李夏は剣を手にとり、目を輝かせながら振り回す。
一番ゴーレムの近くにいたハーレンがゴーレムに向けて弾を放つ。
弾はゴーレムを突き破り、たしかな手応えを感じた。
「はは、最高……!」
ハーレンは楽しそうに口角を上げる。
続いてアレクセイ、李夏もゴーレムに攻撃を入れる。
どちらも命中し、流れが変わったことをその場全員が実感した。
「あちゃー……自由にさせすぎたかな」
サーレイは今日初めて、笑顔以外の表情を見せた。
「今度こそっ!喰らえ!」
李夏が大きく剣を振りかぶり、ゴーレムの頭を斬る。
斬られた頭は鈍い音を立てて地面に落ちる。やがてゴーレムは動きを止めた。
安心するのは束の間。
「やっちまえ!クラハ!」
ハーレンの声に合わせて、クラハは力を込めて矢を放つ。
矢は炎をまとってサーレイへ飛び、サーレイの頭に刺さった。
攻撃が命中したサーレイはオーラが消え、地面に倒れた。
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「やったねクラハ!」
李夏は嬉しそうにクラハに駆け寄る。
矢が当たったあの感覚がまだ残っていて、手がじんじんする。もう、しっぽの痛みなんか、平気だった。
「なぁクラハ、そのしっぽは大丈夫なのか?」
ハーレンが心配そうにクラハのしっぽを指さす。
「うわ、痛そう……」
続けてアレクセイも顔を顰める。アレクセイはクラハと同じ獣人なのでその痛みがどれほどのものか、一番わかっていた。
「痛くないですよ。これまでの痛みに比べたら」
クラハは目を細めてそっとしっぽを撫でる。
「そうか。ありがとうな。クラハがいたおかげだ」
ハーレンはそう言ってクラハの頭を軽く撫でた。クラハより数センチ高いハーレンは、昔から大柄だったクラハにとって新鮮な存在だった。
「あ、あり……!?」
そういえば感謝されたのはいつぶりだろう。少なくともクラハが覚えている範囲では数年ぶりだ。感謝された嬉しさで顔に熱が集まる。
「……目的地はこの先です。急ぎましょう!」
クラハはなんとか気持ちを切り替えてそう言う。その言葉は初めの弱々しい様子とは全く違った。




