表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オルドの自伝書  作者: うめ助
二章
19/45

17話


「めんどくさいなぁ。ならいっそ、ここでまとめて『壊して』あげるね」


 サーレイが指を鳴らすと、地面からゴーレムが2体現れる。


 ゴーレムの体にはヒビだらけで苔がたまり、開いた口元からは荒い呼吸が聞こえる。


 それから、鈍く光る紫色の目。


 サーレイは洗脳能力か近しいものを持っているのだろう。


 まるでゴーレムはサーレイの操り人形だ。


「李夏、来るぞ!」


 ハーレンのその言葉に李夏はやっと武器を構えた。


 ゴーレムが足を踏み出すたび、地面は激しく振動して立っているだけでもかなり力を使ってしまう。


「これでも……喰らえっ!」


 李夏が剣を振り下ろす。しかしガキンと音を立てて、李夏の前を刃が舞った。


「っ……!なに壊してんだ!」


 武器が使い物にならなくなった李夏を庇うように立ち、ハーレンは弾を放つ。


 その弾はいとも簡単にゴーレムにキャッチされ、柔らかいものをすりつぶすように粉にされた。


「ちっ……銃も使えないのかよ」


 ゴーレムが腕を振り上げる。ブオンと空を裂き、洞窟の天井に突き刺さる。その衝撃で天井にヒビが入り、ガラガラと崩れ始めた。


「まずい!崩落するぞ!」


 ハーレンの必死な声に李夏はハッとし、慌てて飛び退く。


 李夏が洞窟から出て振り返りった時には、洞窟は塞がれていた。


 李夏はそこでふと大きな岩に目をやった。岩の影には、見覚えのある足がある。


 李夏は無意識にその足に近づいた。


「……お前ら無事か!?……ってクラハは?李夏もいない!?」


 ハーレンが辺りを見渡していると、白いシルエットが近づくのが見える。


「はぁ、はぁ、やっと追いついた……!」


 息を切らしながらアレクセイがハーレンに駆け寄る。


 目が覚めてすぐ来たのか、寝癖がそのままだった。


「大変だ……!李夏たちが……!」


 ハーレンはアレクセイの肩に手を置き、緊迫した様子で事の顛末を伝えた。


 ━━━━━━━━━━━━━━━


「ぼくの馬鹿……!自分からついてきたくせにっ……なんで、なんで逃げたの!」


 クラハは長い体を器用に畳み、大きな岩の影に隠れていた。


 震えが止まらない。どれだけ鼓舞しようとしても、足が動かない。なんだかめまいもしてきた。


 汗と涙で目の前が霞んでいく。自分は、こんな時でも守られるのか。危険から逃げて、自分のやりたいことだけやって、最終的には他人任せ。


 だんだん意識が朦朧としてくる。これが走馬灯というやつだろうか。頭の中にはメイハの姿が浮かぶ。


 クラハにとって、メイハとは決して届くことのできない、いつでも頼れる都合の良い相手だった。


 ━━━━━━━━━━━━━━━


「クラハはいつもグズなんだから」


 これは、幼少期よくメイハに言われていた言葉。毎日と言ってもいいくらいの頻度で。


 メイハは天才だった。まだ10にも満たない子供が、鍛冶のプロの道具を使いこなし、上等な武具を作っていた。


 特に秀でていたのは防具の作成だった。


 どんなことをしても壊れない。ヒビすらもつかない。


 そんな防具が、小さな手から生み出されていく光景を自分が一番見てきたのかもしれない。


 クラハの自慢の弟。しかしそれと同時に、そんなメイハが憎かった。自分より年下なのに。自分の方がたくさん作ってきたのに。メイハは自分がどれほど血を流してきたなんて想像もしないだろう。


 そんなクラハの努力を、メイハは軽々と飛び越えた。


 メイハが優秀なのはメイハ自身も自覚しているようで、クラハを見る目が呆れを帯びているのは明らかだった。


 いつまでも成長しないクラハを軽蔑していたのだろう。クラハはいつもそう思っていた。


「メイハはあんなに優秀なのに、兄のクラハはな……」


 そんなこともよく言われた。実力社会の鍛冶界では、メイハは評価されて、クラハは地に落とされる。


 そのせいで、周りをみるのが怖くなった。髪を伸ばし始めたのもそのくらいの時期だった。もう、前を見たくない。


 ある日クラハが街の子供にいじめられていた時、殴りかかろうとしたいじめっ子にメイハはクラハより小さな体で、目の前に立ってこう言ったんだ。


「ボクのお兄ちゃんをいじめるな!」


 声も体も震えて、ぼくにしか分からなかったけど少しづつ後退もしていた。


 あの時は嬉しかったな。メイハはぼくを見てたんだなって。


 でも、実力のない兄なんていらないと思ってたに違いない。


 だからメイハがあの病に倒れた時、安心してしまったんだ。 もう比べられることはないんだって。


 その日から、街は混乱に陥った。


 メイハの発病をきっかけに、どんどん人が倒れていって、お父さんもお母さんも倒れて、消えた。


 そして、視界は紫色に染まっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ