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オルドの自伝書  作者: うめ助
一章
10/45

9話


 寮の廊下に2つの靴の音が響く。


 廊下は綺麗に整備され、足元にも高価そうな絨毯が敷かれている。


 窓からさす青い光が2人を歓迎しているようだった。


「ライルさんだっけ。なんか、凄い人だね」


 アレクセイは先程の衝撃が強かったのか、ライルに握られた手を見る。


「あはは、だよね。僕もまだ慣れないよ」


 そんな雑談を交えながら、やがてアレクセイの部屋の前までたどり着いた。


「ここがアレクの部屋かな。多分」


 李夏は軽く扉を開け、中の様子を確かめる。


「うん、ここだね」


 入ってみて、と李夏に催促されるがままに部屋に入ると、王族であるアレクセイでも感動できる程の豪華な内装が出迎えた。


「つい最近まで戦争だったよな……?どうしてこんなに豪華なんだ……?」


 西洋のお城のような赤い絨毯に金色の装飾が入ったベッドやキャビネット、窓枠などの細かい所にも装飾があしらわれていた。


「こんな部屋がいくつも……!?」


「僕も驚いたよ。全部の部屋がこんなに豪華だもん」


 李夏も驚いた様子で頭をかく。


「さすが、英雄を育てた国だな」


 アレクセイは感嘆した様子でベッドに腰掛ける。李夏も続いて椅子に座った。


「英雄……」


「知らないのか?思い出したんだ。フィラデルフィアの歴史を教えて貰ったこと」


 ━━━━━━━━━━━━━━━


 数十年のこと。


 当時のフィラデルフィアを治めていたのはニーナというまだ若い女性だった。短い金髪に、輝くような明るい緑色の瞳を持っていた。


 ニーナは生まれ持った武道の才能と、溢れる人間性によって国民から慕われる良き王だったそう。


 その頃から城に騎士団も学校から併設されていて、ニーナは学生の頃から将来が期待されていた。


 ニーナが女王になって間もなく、人形の軍団がフィラデルフィアに襲いかかり、多くの尊い命が失われた。フィラデルフィアの他にも多くの国が被害を被ったそうだ。



 人形の王であろう人物が城に来るとこう言った。


「私は、いつまでもくだらないことで争う人間に失望した」


 人形の王は腰を超えるほどの緑の長髪を1つに括り、人間ならば耳がある場所に羽が生え、真っ黒で冷たい目をしていた。


「当時は天使族とは何も関わりがなかったから、人形の王が天使族であることに気づかなかったみたいだな」


 アレクセイは続ける。


 ニーナは人形によって奪われた命の為、長い年月をかけてついに人形の王を討った。


 フィラデルフィアを含める多くの国は世界を救ったニーナを称え、ニーナに多くの報酬と名誉を与えた。


 ニーナはその後、使命を全うしたと、地位を渡してひっそりとどこかで暮らしている。


 ━━━━━━━━━━━━━━━


「英雄……ね」


「そう。すごい人だよな……そういえば、李夏は英雄に似てる気がする」


 アレクセイの動きが鈍くなる。うっすらと冷や汗をかいているようだった。アレクセイの瞳に、金髪で緑眼の人物が映る。彼は本の挿絵にあった英雄に瓜二つだった。


「……」


 李夏は何も言わない。ただ、真っすぐアレクセイを見つめている。


「……まさか英雄の子孫か!?」

 

 アレクセイは困惑と焦りの混じった表情で李夏の肩を揺らす。


「李夏は俺にとっての英雄だとは思っていたが、本当に英雄だったとはな……俺はなんて失礼なことを……」


「俺にとっての……英雄……」


 李夏はアレクセイの言葉を噛みしめるように俯いた。しかし、李夏の頬はどこか赤くなっていた。


 少し落ち着いてきたアレクセイは李夏から離れて再度ベッドに腰掛けた。


「……お母様、すごいでしょ。僕の誇り」


 李夏は困ったように笑う。その笑みにはどこか含みがあった。


 アレクセイはあまり触れて欲しくない内容であることに気づき、これ以上英雄について話すことをやめた。


「そうだ、明日は城下町を見に行かない?僕もそんなに城下町を回れてないんだ」


 李夏はぱっと明るい顔に戻ると、そう言った。


 アレクセイがその誘いに了承すると、李夏は立ち上がりって部屋の扉を開ける。


「おやすみアレク。いい夢を」


 李夏は明るい笑顔のまま、アレクセイの部屋を出た。


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