第二十七話 入信の儀式
『そろそろ陽が沈むから不本意だけど手短に行こう。』
ゲールはそういうと祭壇から煌めく石を取り出し尾を器用に使って何かのレバーを引いた。
いろいろな場所から音が鳴り何かが起こっているのが分かる。
(これは天井の方ですね。)
ノエルが天井を見上げると天井が開き様々な方向からの陽の光が祭壇の石に集まっていく。
夕日の淡い光と厳かな教会の内装により独特の美しさが演出されていた。
『じゃあ、ノエル今から始めるよ簡単だから緊張する必要はないからね。』
そういうとゲールは器用に尾で重厚な印象を受ける本を持ちノエルに近づいてくる、そして陽の光を受けさらに輝く石がゲールの前を浮遊しふわふわとノエルの前まで飛び空中で静止する。
ゲールがノエルの前に立ち本を読み上げ始める。
『あなたは太陽神の力を受け入れ信徒となり陽を讃えることを誓いますか。』
『誓います。』
ノエルがそういうと石はさらに輝きを増し視界を覆い尽くす、ノエルの意識が光に飲まれる前にかろうじてゲールが『大丈夫、身を任せればいい。』と言ったのが聞こえた。
ノエルは今まで来たことのない場所にいた。
(ここは?)
そう考える暇もなくノエルは無性に空を見上げたくなる、そして空を見上げるとそこには自らを照らす太陽があった、見慣れたたくさんの太陽とは違う一つの太陽。
不思議とそれは眩しくなくむしろ心地よかった、そしてノエルが太陽に向かって手を伸ばした瞬間再びノエルの意識は闇に落ちた。
だが不思議と不安はなかった。
意識が浮上しノエルは目を開けた、太陽は沈み始め夜が訪れようとしている。
しかしこれまでとは違うノエルの手の平には淡い光を放つ、あの場所で見たものに比べれば些細なものだが小さな太陽とでも形容すべき石いや何にも変え難い神の恩寵が握られていた。