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11月19日 若鳥の唐揚げ 【1日目】

店にはすでに四人の男が座っている。

小柄でひょろっとした男、

大柄で顔にひげをたっぷり蓄えている年老いた男、

中肉中背で引き締まった体をしているイケメンの男、

眼鏡をかけている男の四人だ。


みんな片手にはビールを持っていて、顔は真っ赤になっている。

その中の大柄な男が小さな店にもかかわらず、

イケメンの男をバンバンと叩きながら、

大声で話している。


「わっはっは!ライルらしいのぉ。魔族と戦うのがそんなにも嫌なのか」

「うるせぇなぁ、シア。お前みたいな戦闘狂じゃないんだよ!」


ライルはシアに指をさして負けじと大声で叫び返す。

その大声に対して、さらに大きな声で笑いながらシアは話す。


「わっはっは!!儂が戦闘狂?バカも休み休み言いやがれ」

「遠慮なく魔族を切っているお前が戦闘狂と言わずして、誰が戦闘狂なんだ?」

「やれやれ……魔族を切っているのは、

 我々を守るためだと、なぜわからないのかのぉ」


首を横に振りながらシアは肩をすくめる。

その様子を横で見ていた眼鏡の男は頷きながら呟いた。


「ふむ。いつもの喧嘩か……」

「ストレングス、お前も喧嘩に参加したいのか!?」

「断る。お前と喧嘩してよかった思い出が一つもないからな。痛いことしかない」

「これだから眼鏡をかけている奴はダメじゃのぉ……」

「脳みそまで筋肉のやつに言われたくないな」

「ほっほっほ。眼鏡が本体の奴にいわれてものぉ」

「なんだと!!!」


眼鏡をかけたストレングスは立ち上がってシアをにらむ。

シアも負けじと席を立ちあがる。

その様子を見ていた小柄の男が立ち上がりながら止めに入る。


「あわわ……ダメですよ、シア、ストレングス。

 この店では暴力沙汰はダメって以前に一度習ったじゃないですか……

 ライルも止めてくださいよ!」

「アルト、別にほっといたらいいんじゃね?いつものことだから大丈夫でしょ。

 それより女将さん、料理まだ~。お腹ペコペコなんだけど……」

「もうすぐできますよ。もうちょっと待ってくださいね」


ライルはバタバタしているアルトを無視して女将に話しかけ、

その女将も長い菜箸を持ちながらのんきに答える。

女将が見ている鍋からはパチパチと油で何かをあげる音が聞こえている。


アルトは二人の方に行き、間に立って二人に入って叫ぶ。

「ストップ!!シア、ストレングス!喧嘩はやめてください!!

 お店に迷惑が掛かりますよ!!!」


シアとストレングスはアルトの方を向く。

急に二人とも肩を組んで笑い始めた。


「わっはっは!!!アルトは相変わらず心配性だなぁ。喧嘩なんてせんぞ」

「くくく……いつものことじゃないか」


二人を見たアルトは顔を真っ赤にして怒り始める。


「もう!二人ともいい加減にしてください!!!」

「すまんのぉ、この通りじゃ」

「確かに度が過ぎたか、悪かった」


シアとストレングスはアルトに謝った。

アルトも謝罪を受け入れたのか、うんと一度頷いて自分の席に戻った。

席に着いたのを見計らって、女将がお皿に料理を盛り付け、一人ずつ渡し始めた。


「本日は若鳥の唐揚げとなります、ご賞味下さいませ」


四人とも初めて見る料理なのか、じっと渡されたお皿に乗っている料理を見つめる。

そして四人とも一斉に手を合わせて言った。


「「「「頂きます!!!!」」」」


フォークで唐揚げを突き刺す。そして一斉に口に放り込んだ。

みんな熱々を口に放り込んだためか、ハフハフと口から熱を必死に逃がす。

そして一斉にビールを握り飲み干した。

ライルはビールのジョッキを机にドンとおいて女将に話しかけた。


「ぷはー!女将さん、これ最高に旨いな!!

 こっちの世界で食べる鳥とは段違いでうまいぞ。

 柔らかいし味もしっかりしていて、ビールとの相性が抜群だな」

「ありがとうございます。どんどん食べてくださいね」


ライルの言葉に女将はニコニコしながら、唐揚げを作っている。

横にいたシアは唐揚げを食べつつも、ライルにトーンを下げて尋ねる。


「さて、ライルよ。ちょっと前の戦場での動きじゃが......

 何か変だった気がしたのだが、儂の気のせいかのぉ」


そう聞かれたライルは飲んでいたビールをピタっと止める。

そしてシアの方を向かずに女将の方に目線を送りながら尋ねた。


「シア、どうしてそう思ったんだ?」

「いや、大したことではない。魔族を切る瞬間にためらいが見えたからのぉ……

 で、実際のところは?」

「……」


ライルは少し黙る。

そして呟くように答えた。

「そうだな。そうかもしれない……この魔族との戦争について悩んでいるだけさ。

 今は一時的に戦争が止まっているけどな」


ライルは持っていたビールを一気に飲み干す。

その様子を見ていたストレングスは自分の眼鏡をクイッとあげて聞く。


「ふむ。場所と相手が違ったら反逆罪になって生きていればいい方か。

 で、どうしてそんな悩みを?」

「いや、大したことじゃない。目の前で戦っている魔族たちには

 恐らく家族がいて……とか色々考えてしまっただけさ」


ライルの話を聞いたストレングスは唐揚げを食べつつも淡々と話しかける。


「前の戦いの最中でお前、親子の魔族をわざと取り逃がしてただろ。

 上官にばれるのも時間の問題だぞ」

「わかっている……でも、おかしいだろ?

 魔族の親子を俺たちが殺して何になるんだ?

 俺たちの戦争に子供なんて全く関係ないじゃないか……」


ライルは絞り出すような声でストレングスに話しかける。

その様子を横でみていたシアはビールをぐっと飲んで二人の話に入る。


「そんなこと、みんなわかってるさ。でもやらないといけない。

 あえて理由を付けるとすれば、これは戦争だから……というだけじゃのぉ」

「シアは親子の魔族を躊躇なく殺せるのか?」


ライルは目を見開いてシアの方を向く。

シアもライルの目をじっと見ながらゆっくりと返事をした。


「あぁ、もちろん。今までもそうしてきたし、これからも躊躇はないのぉ」

「どうしてそれができるんだ?お前が戦闘狂だからか?」

「わっはっは。儂が戦闘狂?さっきから同じ冗談とは、なかなかきついのぉ」


シアは大声で笑う。

そして、ふと自分の持っているビールを見つめてつまらなさそうに話す。


「はるか昔のどこかに置いてきてしまっただけ……

 幾千、幾万との魔族と戦っていくうちに、殺すのに感情を失ってしまっただけじゃ」


シアはビールをぐっと飲んで、ライルの方を再び見て話しかける。


「ライル……この場所で一度しか言わんから覚えておいてほしい。

 お前さんのその感情はとても大切なものじゃ。

 魔族が本当に敵なのか……そんなこと、今はどうでもよい。

 お前さんの目で見たことが真実じゃ」

「シア……」


ライルはシアの方をじっと見た。

シアはプイと目をそらしてビールをあおった。

その様子を横で見ていたアルトが顔を真っ赤にしながら二人に声をかける。


「あわわ……ライルもシアもこんな場で何しんみりしてるんですか!

 もっとお酒飲みましょ!!

 いつまた戦争に駆り出されるかわからないんですから!」


ライルとシアはアルトの方を向いた。


「そうだな。こんなしみったれた話じゃなくてどんどん食べて元気になろうじゃないか。

 女将さん、追加でこの揚げ物頂戴!」

「はいはい、ちょっと待っててくださいね」


女将は油の中で踊っている鶏肉を取り出し、四人に出した。

四人は待ってましたと言わんばかりに受け取り、その鶏肉を口の中に頬張った。

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