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イントロダクション


 忘れないで。思い出してね。

 私のために。あなたのためにも。



『怪盗ドラゥフト現る! 鮮やかなる手口にて、警察を翻弄』


**************************


 子羊のように春はすぎ去り、市場にはイチゴが並びだしたこの頃。時節の常として新聞は退屈へと向かうはずが、今年は様子が違うらしい。


 フレデリック・フィデリティ氏は駅のコンコースにて壁にもたれて、複雑な思いで記事を追っていた。


 複雑。


 その内容は、まずはロンドン警視庁に籍を置く身として、泥棒を野放しにしている現状への情けなさ、そして煽るように騒ぎ立てる新聞への反発、またそれを求める人々へにも程度は緩やかだが同様の感情、最後に怪盗に対して、言葉を尽くして語りきれないほどに不満、といったところ。


 派生していく経過や結果の数多の感情について、ここで書き連ねることは粛することとする。


 しかし、ため息をつきながらページをめくった氏は、そこに綴られた文章に、さらなる混沌への道へと|(いざな)われるのであった。





『華麗なる宝石物語。連載第二回「伯爵家の至宝」~ローダーディル伯爵家~


 数々の気高き宝飾品を所有することで知られる名門ローダーディルだが、まだまだ世に知られていない逸品が存在している。


――略――


 中でも目を惹かれる一品は〈スノウクィーン〉の銘を戴く一揃いのシリーズパールである。


 選りすぐりの粒のみで構成された完璧なる美の集合体。このシリーズと並び立つ品は現在まで、少なくとも表舞台に現れてはいない。


 遡り三百年ほども昔、当時のローダーディル伯ウィリアムは一族の間では〈旅人〉と通称された気質の者にして――略――代々の伯爵にすら、入手元は審らかではないという。


 ただ当時からのしきたりに従い、彼らは〈スノウクィーン〉を花嫁に贈る。言うなればローダーディルの〈クィーン〉の証、伯爵に寄り添うレディを彩る日を待ち、眠り続ける奇跡の結晶。


 彼女が再び輝き出す時を、我々も共に待つとしよう。』



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