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さく、しゃ、様

 「おいおい、話になんねえな!」

 グネグネローラ達を爪で切り捨てながら、地底人は悪態をついた。


 グネグネローラ達は真っ二つになりながらもグネグネしていた。

 神野は、グネグネローラが外に向かった事で、漸く解放された。

 「ローラ!外を見てみろ、地底人が侵略して来ているぞ!」

 忠実に再現する神野。だが、その地底人が暴走している事には気づけないらしく、

 ローラとは違って、動揺の色を滲ませてはいなかった。ただ真っ直ぐに、入り口の方を見つめていた。

 

 ローラは、このまま演技に身を投じるか、それとも、グネグネローラが演じている事を良い事に、この緊急事態への対応を行うか迷っていた。演技に身を投じれば、外の地底人にきっと殺される。


 ローラは、異世界を救う子と銘打たれているものの、戦う術を持ち合わせていない。いつも、気まぐれラッキーで難を逃れている。数十回殺されても、そのラッキーで生き返る訳なのだが、それらはあくまで、作者が描くストーリー、作者の意の範疇の話だからであった。ローラには、こんな暴走モンスターに対応出来るスペックが存在しない。

 

 (「書止誤消」の奥義で、地底人を消す、しかないけど、、

 作者様はバカだから気づかないにしても、言う事聞いてない相手に、効果あるのかな、、)

 

 外では地底人が、グネグネローラの大半を片付けていた。

 「グネグネして、気持ち悪いんだよ!この!この!」グネグネローラ達を蹴飛ばし、地底人は暴れ回る。


 「あの家からぞろぞろ出てくるという事は、あそこに大事なものが隠されてる、って事だな!」

 やけに、地底人は鋭かった。

 瞬時に入り口に到達し、ドア枠に手をかけ、ローラの家の中を覗く地底人。

 

 ローラは、一瞬目が合うと、すぐに目線を逸らした。

 (怖い!怖い怖い!目が真っ黒で、大きい!それにあの爪、長くて太くて怖い!片手に10本位指があって怖い!体がずんぐりむっくり!怖い!頭がつるつる光ってる!)

 

 地底人はローラと神野を見つけ、素早く四つん這いになると、太くて短い手と足の指を床にめり込ませ、臨戦体制をとる。

 そして、言葉を発した。

 「お前、何でグネグネしてないんだ?」


 ローラは覚悟を決めた。

 (奥義!無動人形!)

 

 そして、念じた。

 (なんとか、なって!)


 作者は記した。

 『神野は地底人に向かって言い放った。

 「残念だな、地底人よ。我等の前に姿を現すとは。お前の前にいる少女、このローラは、この世界を救う子だ!貴様等みたいな変態を倒してなぁ!」』

 

 (やめて!やめてー!)ローラの想い虚しく、神野は勢い良く科白を述べる。

 

 「世界?何言ってんだ、あぁコラ!変態だとてめコラぁ!」地底人は怒っている。

 

 地底人の立つ床がばりばりと音を立てた。床に亀裂が生じる。

 

 作者は記した。

 『ローラもそれに続く。

 「このキモい獣め!この世界から消えてしまえ!」』

 (やめて!なんか、純粋に酷い!)

 「こ、の、、」ローラは流石に躊躇した、という訳では無かった。





 

 一瞬の事に、反応はまだ追いついていない、

 一枚の薄い紙に針を刺し通すかの様に、

 地底人の爪に腹を刺し通された、ローラ。

 

 腹に感じる鈍い苦しみと、体の中で駆け上がる緩い液体がやがて口から零れ落ちるのを、ローラは感じた。

 

 地底人は四つん這いのまま、ローラの前に瞬時に到達し、長い爪を助走なくローラの腹に押し当て、刺し通していた。

 

 「何だ、お前も大した事ねぇじゃねえの。」眉らしい部分を下げながら、地底人は呟いた。

 

 ローラは、血で咽せない様に、小刻みに嚥下する。

 

 もう、これでも良いのかな。。仕方無い、よね。。

 ローラはそう思った。

 

 神野の目には、未だ、入り口しか写っていなかった。

  

作者様、ごめんね。

言葉を発さず、口の中で、ローラは言った。

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