24. 科目登録
お久しぶりです……。ゆったり進行なので、少しあらすじをば。
お偉いさん方の策略により王立魔法学園に通うことになったイリアスだが、ちゃっかり自分で手続きしていたレオナルドと共に通うことに。絡まれていたアーロンを助け友人になったり、突然レオナルドが王位継承権を主張したことでダリヤ宮の人員が増えたりと中々忙しい日々を送っていた。
アリスとミアがやってきて遥かに作業スピードは上がった。宮全体を見ても行き届いていなかったところの掃除もできるようになり、どこか空気が爽やかになったように思える。
「行ってらっしゃいませ」
今日も主人を見送った後自分も登校する準備をする。レオナルドはいつもかなり早くに出るため、無関係を装うイリアスが見送ってから登校してもなんら問題は無い。
「では、俺も行ってきます」
「「「行ってらっしゃいませ」」」
しばらくなかった、帰ってくる声にイリアスは仄かに笑った。
※
「おはよう」
レオナルドを見送り、さらに朝の業務も終えた上で登校するイリアスはかなり遅い部類に入る。
そんなイリアスを毎回笑顔で迎えてくれるのは最近できた友達、アーロンである。
「おはよう、イリアス」
挨拶を返されイリアスもにっこりと微笑んだ。
「イリアスは今期の科目登録はどうするの?まだだったよね。いつくらいに決めるのかな」
微妙な時期に訳ありでやってきたイリアスたちではあるが、当然学校の授業は受けねばならない。
そしてここが魔法学園である以上、それに関わる授業をとることになる。
この学園では1年次、2年次以上で取れる科目が異なり、1年次は必須の授業にプラスして、1年の知識でもとることのできるいくつかの基礎授業の中から3つ選んで単位を埋めることになっている。イリアスも教員から雰囲気だけでも見ておくようにと言われ、既にいくつかの授業には参加し、講義を聴いたり、他の生徒が魔法を使うさまを見ている。
ただ一つ、問題が。
(俺、適性検査受けてないんだよね……)
平民以上の国民なら皆6歳で受ける、魔法が使えるか、つまり魔力があるかどうか、どんな魔法が使えるのかの適性検査をぎりぎり受ける資格を得る前に逃げ出して貧民になったため受けていないのだ。
つまり、この学園において唯一、魔法が使えない可能性のある人間である。
軽い筆記試験は転入前に受けたが、学園側の人間も、レオナルドを嵌めようとしてイリアスの転入枠を作ったお偉いさんも当然のごとくイリアスが平民以上の地位に属する国民だと思っている。
この国では魔力を持つ人間が少なく、魔法が使えると言うだけで世間では有能扱いされ、王族につけるような人物には魔法が使えるものが大半で、誰もイリアスが魔法を使えないなんて発想がなかったのだ。
戸籍が残っているかどうかも怪しいイリアスをダリア宮へ受け入れるにあたり、これまでの痕跡やらをうやむやにしてしまったシオンの優秀さの弊害でもある。
「うーん、まだ決められてないんだよね。面白そうなのが多くてさ」
そんなことを言えるはずもなく。
イリアスは適当に困った振りをして話題をやり過ごす。
「確かに、面白いのいっぱいあるよね!僕も家庭教師から基礎は教えてもらってたのに基礎授業楽しいし」
面白そうな授業がたくさんあるのは事実である。
必須の授業に加え選ぶことができるのは魔法生物学、魔法物理学から一つ、魔法史、魔術史から一つ、魔法倫理学、魔法経済学から一つの合計三教科で、イリアスとしてはどれもこれもが初見で、ただの学生として来ていたならば存分に楽しんでいたところだ。
「はあ……」
(適性検査の件、言わないとなあ)
悩んでいる内容などつゆ知らぬアーロンは「うんうん、悩むのもまた楽しいよね」などとかわいらしい顔でニコニコと友人の横顔を見ていた。
※
「あのう、そろそろ転入生も科目登録なんですけど……」
宮に帰ってきたイリアスは早速レオナルドに相談することにした。
「そうだな。俺はとうにしたが…まだやっていないのか?」
「はい。あの、俺、適正あるかわからなくてどうしたらいいか……。もともと入学するつもりもありませんでしたし、何か体質に問題があることにして講義だけとか見学とかでもいいのですけれど」
そう言ったイリアスに対し、レオナルドはしばし思案した後口を開く。
「いや、お前は適性があるはずだ。どの道俺の側仕えを続けるなら魔法学園での授業は役に立つだろうし、せっかくだから受けた方がいい。それに、母親の今後の生活を思うなら、いつまでも貧民の身分でいるよりは魔法学園でのコネを持ってせめて貧民街で暮らす必要が無い程度に保護してもらったり援助してもらったりした方が都合がいいだろう」
そうは言うが、「適正あり」の根拠は何なのか。
「それはそうですけど……。適性が分からないことには授業を受けてもボロが出るでしょうし」
「ああ、だからちゃんとお前には秘密裏に適性検査を受けさせる。ちょうど今辺りに帰ってくるんじゃないか?」
「……?」
誰が?というイリアスの言葉はレオナルドの悪戯気な笑みによって封殺された。
イリアスはその会話をしてから実に1日も経たずしてその笑顔の意味を痛感することになる。




