番外編 バレンタイン
レオナルド視点で、短めの番外編です。
間に合ってよかったε-(´∀`;)ホッ
本編の季節とはズレるので、学園入学前の冬ということにします!します!!
「イリアス」
急に廊下で呼び止めると、怪訝な顔をして振り返る。
「なんですか?」
パタパタと駆け寄って来る彼の口に、黒いものを放り込む。
途端にイリアスは警戒の色をにじませた。
大方目の前の男がレオナルドではなく扮装した敵かもしれない可能性を考えたのだろう。
口の中のものを吐き出そうとする彼女に自らの頬をつついてみせると、甘さに気が付いたようで、目を少し大きくした。
目を白黒させるするイリアスににやりと笑いかける。
「なんれふか、ほれ」
「チョコレート、という菓子だ。あまり街中では見ないから驚かせてしまったか」
こくんと頷いて口の中で溶けたらしいそれを飲み込む。
「甘くて美味しいですね、これ。溶けちゃいましたけど、食べ方あってますか?」
「元々ホットミルクなどに溶かし入れて飲むのが主流だったんだが、食べ物として販売するようになったらしい。食べ方にルールは無いが、せっかく固めてあるから噛んで食べたらいいんじゃないか?」
ほい、ともうひとつ渡したものを口に含み、今度はゆっくりと噛んでみる。
飴より柔らかく溶けながら広がる甘味に彼はうっとりと目を細め、その様子を見てレオナルドは微笑んだ。
「気に入ったならここにあるもの全部持って行っていい」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
母にも食べさせようといそいそとマントの中にしまい込む。
その様子は小動物が懸命に餌を蓄えているようで、なんとも微笑ましい。
「あ」
イリアスが上げた声に何だと顔を上げたところで、思ったよりも近くに彼がいた。
けぶるような睫毛一本一本や金の瞳の奥にある瞳孔が見えるような距離に、不覚にも胸がざわめく。
「はい」
思わず小さく開いた口に甘味を放り込まれる。
「どうせ俺に全部くれるつもりだったんでしょう。こういうのは一緒に食べる人がいてこそ美味しいのですよ」
「―――そうか。それは知らなかった」
全部、教えてもらうことだらけだ。
今も、昔も。
ふふん、と笑う彼はやはり誰よりも。
「本当だ。美味しいな」
そう言って彼に微笑む。
仮面をつけているような息詰まりは、もう感じない。
甘くて優しい、そんな昼下がりの執務室の出来事である。
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若干修正入れました。




