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Guardian  作者: 天宮 碧
23/35

17. 陰キャってこういう時不便

遅くなってしまいすみません。


ほぼネタ回です。





 どんなことになるやらと思った学園生活は案外充実していた。


 レオナルドも不名誉な噂がある他はただのサボり魔であり、特に目立つことをドンパチやっている訳でもない。

 イリアスにも学園にいる間は関わってくることなく、静かに過ごせている。


 何より嬉しかったのは本が読めることだ。

 イリアスは母から文字の読み書きは習ったものの、しっかり勉強したり生活に必要なもの以外の知識を入れたりすることもなかった。あの古ぼけた離れに置いてある本はやはり古いものが多く、読めなかったり破損していることもあったのだ。

 学園ではさすが最高峰と言われるだけはある質の良い教育と、豊富な蔵書に囲まれており、毎日それなりに楽しく過ごせていた。


 ただ、やはり平民は目立つのか、少し遠巻きにヒソヒソと噂話をされることが多く、何を言われているのかが少し気がかりなことくらいか。


 イリアスは立派な情報弱者に成り下がっていた。


 友人もおらず、訊くことが出来る人もいない。ほとんど授業に参加しないあの馬鹿(レオナルド)など以ての外である。


 学校生活する上で友人というものはイリアスが思っていたより重要なのかもしれない。


(……つくるか。友達)


 そんなわけで、ここに友達作りというミッションが発生した。




 まず接点が必要だ。

 自分でネタを考えて相手に喋りかけるのはあまりにハードルが高い。


 そう考えたイリアスは、ベタな作戦に出た。


 そう、ハンカチ落とし。

 誰でも出来て、かつ感謝から関係を始められる。その後もお礼に何か、と遊びに誘えば接点が増やせる。

 次にも繋がる妙案である。


(この辺りか?)


 後ろに(ターゲット)がいることを確認し、さり気なさを装ってハンカチを落とした。

 彼女の高い任務遂行能力を全力で使ったもので、誰もわざと落としたなどとは思わないであろう完璧な落下(フォーリング)である。

 その状態で少しそのまま歩き、何かを探す仕草をする。

 案の定、気がついた未来の友人は目の前にあるハンカチを拾い上げて走ってきてくれた。


「あの、ハンカチ、落としてますよ」


 最初の友人は女生徒だ。

 女の子は噂話が好きな子が多いから、きっとイリアスの目下の問題についても知っているだろう。

 勝利を確信したイリアスは外向き用の爽やかな笑顔を作る。イメージはレオナルドのオウジサマ(笑)である。


「ありがとう。ちょうど困っていたんだ。あの、今度お礼に……」

「いや!大丈夫です!お役に立てて何よりです!では!!」


 ニコッと笑って少々無理のあるさえぎり方で断ると、上品さを失わないギリギリのフォームで駆けていった。


 女の子、速い。


(やっぱり、避けられているのかな)


 半ば不貞腐れるイリアス。


 石でも蹴り上げたい気分になったが、生憎手頃な小石はなかった。

 流石は王立の金持ち校。掃除が行き届いている。


 はあ、とイリアスは溜息をつくが、落ち込んでいるより案を練る方が建設的だろう。


(よし、次だ次!)





 数時間後。


 下校時間となり後ろ髪引かれながら学園の門を出るイリアスの哀愁漂う背中があった。


(人とまともに関わってこなかったツケがこんなところで……)


 イリアスは用心棒稼業をする中でそこそこ多くの人と関わってきたが、素直でない性格と元々口数が多くない性質とで友人関係というものを築けていたのは極々少数だった。


 後悔先に立たずとはまさにこの事で、この件に関しては人付き合いのお上手そうな彼女の主に揶揄われてもぐうの音も出ない。


 一瞬ちらりとレオナルド(コミュ強)に訊いてきてもらう案が浮かんだが、直ぐに消した。流石に情けなさすぎる。


(今日のところは諦めるか)


 そうだ。別に今日でなくとも良いのだ。

 必ずしも今日でなくば友人を作れないという事もないし、元々気にしていた噂話だって、編入してくる平民がただ物珍しいからだけかもしれない。そのうち落ち着けば、友人を作る意義もないでは無いか。


 まあ確かにわいわいと青春を煌めく学生たちの中にいるとより惨めというか寂しいというかそんな感情がない訳では無いが勉強は幸い不自由していないしそもそも目的は友人作りではなく噂を訊くことだし学園生活にはなんの支障もない(早口)。


 この考えこそが目標達成から己を遠ざけているとも気づかず、思考回路はどんどん愚かな方向へと転がる。


「うん、まあ、今日は頑張った記念だ。よし」


 何も良くは無いのだが。





 そのようにイリアスが無理やり自分を納得させていると。




「―――――やめてください!」


 何やら事件性のある大声が聞こえた。


 下校時間をとうにすぎており、通学路に生徒はいない。


(これ以上変に目立ちたくはないんだけど―――)


 イリアスは声の聞こえる方へ走っていった。


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