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Guardian  作者: 天宮 碧
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幕間 イリアス 2

思ったより長くなりそうなので、次もイリアス過去編です。

変なところで切ってしまいましたが、次の話をできるだけ早く書くのでご寛恕くださいませ……





 それからというもの、イリアスは与えられた離れからあまり動かなくなった。


 幸い、離れには古い本が沢山あり、娯楽には苦労しなかった。

 母の体調がいい時は本の分からないところを聞いたり、たまに発掘する児童向けの絵本を温かな膝の上で読み聞かせてもらったりもした。


 屋敷にいる時は申し訳程度に玩具があって、ままごとなどもしていたが、それと同じくらいか、それ以上に、本を読んでいる時間は楽しかった。


 一度も屋敷の敷地から出たことの無いイリアスにとって、外の世界や空想の物語、知識を記した本はとても興味深く、別々で本を読んでいても、母と共に過ごしながらのその時間は不思議と安心感を覚えた。母に、まあ、リアは賢いわね、と褒められるのが嬉しかった。


 しかし、たまに庭へ出た時に見える、家族の幸せを体現したような父と愛人、その子供が笑い会う姿に感じた思いはどう言えば良いのか分からない、複雑な心境になった。


 お父様からの愛は諦めたはずなのに、愛を一身に受ける弟が羨ましい。小さい弟と仲良くしたい。お父様の愛人はおれたちのことをどう思っているのだろう。弟はおれたちの存在を知っているだろうか。

 ――――――お父様は、まだ、おれたちのことを覚えているだろうか。


 自分の健康を気遣って、お外で遊んできなさい、と言う母の言葉が憂鬱だった。


 母のために換気をする時に聞こえる微かな笑い声に、嫌悪感と申し訳なさを感じていた。



 庭での散歩が憂鬱でなくなったのは5歳の時。


 見知らぬ男の子が庭に迷い込んできたのだ。


 その男の子は大層綺麗な顔をして、清潔な衣服に身を包んでいたため、物語に出てくる王子様のようだと思ったが、話してみればなんのことは無い、悩んだり、たまに格好つけたがったり、自分で考えた設定で真剣にごっこ遊びをする、普通の男の子だった。


 既にイリアスは少し捻じ曲がっていたが、相手があまりにも素直な反応を示すものだから、イリアスも自然と心を開くことが出来た。


 格好つけて味方になる、なんて言ったものの、味方が何をすればいいか分からなくて、友達だし、なんて少し恥ずかしかったけど言ってみた。


 その子は照れくさそうに、でも嬉しそうに口をモニュモニュ動かして、小さな声でありがとう、と言ってくれた。


 ヒーローと呼んでくれた。


 英雄なんかじゃなくて、おれは父も母も不幸にしてしまった存在なのに。


 そう思いながらも、この子にとって英雄になれたのだと考えると、勝手に救われたような気持ちになった。やっぱり恥ずかしくはあったが。


 あれほど嫌だった庭に出るのが楽しみになり、母も嬉しそうだった。


 しかし、やはり幸せは長く続かなかった。




 ある日のこと。


 いつものように、レオが遊びに来てくれた。


「知ってるか?数年前から、毒が貴族の間で流行ってんだと」

「毒なのに?」


 ふとレオが言った。


 2人の会話の話題がコロコロと変わるのはいつもの事だ。

 レオはとりわけ、外のウワサや誰それが捕まったなどというゴシップを捕まえて、箱の中に閉じ込められたイリアスに話してくれる。

 将来はゴシップ好きのオバサンならぬオジサンになるかもしれない。


「そ。なんか、きけんやくぶつ?って言うやつ。ウワサになっててさ。取り締まってるはずなのに、どっからか入手しちゃうらしい。」

「ええ……レオ、気をつけてよ?すぐに面白そう!って言ってとびついちゃいそう。世間知らずの坊ちゃんなんか、カモだよ?」

「誰が7歳の子供に毒を売るんだよ……。第一、おれは法に触れない範囲で好奇心を満たしてる超絶いい子なんだけど?」

「いい子……?誰が?」

「そこに疑問を持つなよ!まったく、俺より年下なのに、ボキャブラリーも反応もおかしいだろ。どこで覚えるんだカモなんて言葉……」


 レオは打てば響くような反応を返してくれるから、からかうのがとても楽しい。


 その日は特に違和感を感じることなく、笑ってまたね、と言った。


 次の日である。


 たまに様子を見に来る、父付きの使用人の様子がどうもおかしかった。


 顔色が明らかに悪いのに、やけに機嫌がよく、目の瞳孔も開いていて、一目で興奮状態にあることがわかった。

 いつもは嫌そうにイリアスたちの世話を軽くするだけなのに、上機嫌で喋りながら仕事をしていた。

 気味悪ぅ……と思いながら去っていく使用人を見ていると、何かを落とした。近づいて拾ってみると、薬包紙に包まれたそれは仄かに甘苦い匂いがする。


「返せッ」


 足早に使用人が戻ってきて、イリアスの手から薬包紙を奪う。先程まで上機嫌だった彼は、目をギラつかせ、明らかな敵意を向けていた。

 イリアスが謝ってすぐに返すと、使用人はフン!とでも言いたげな態度で屋敷へ帰って行った。


 一方、イリアスは己の頭を駆け巡った想像に身震いして立ち尽くした。


(レオは数年前から流行ってるって言った。おれは2年前、あいつのおかしな様子を見ている。あの時はよく分からなくて恐怖だけだと思っていたけど……。あの感情は、)


 リスクへの恐怖と、後ろめたさ。


 そのリスクが薬物を売っている、もしくは買っていることなら?


 父の生業は商売だ。それも貴族と繋がるほど大きな。入手も、販売もしやすい。

 薬類はどのようなものであっても高価だと言う。


 あの使用人は金にがめつく、余程でなければ薬なんて言う()()()()金の使い方をしない。自己顕示欲が強く、嗜好品や宝飾品を見せびらかすことに生きがいを感じているような男だ。


 となると、主人であるあいつに貰った可能性が高い。口止めか何かだと思えば筋は通る。


 証拠は無い。


 あくまでもこれは仮説などという上等なものではなく、いっそ妄想と言えるような想像に過ぎない。

 物語の皮肉屋の登場人物に話せば、「君の想像力は素晴らしいね」などと言われるかもしれない。


 でも、もし本当にそうだったら?


 現状がどうであれ、母の肩書きはあいつの正妻。おれは実子。書類上あいつの扶養家族である以上、犯罪者の妻と娘だ。それも、法学書によると国家犯罪者に相当するらしい。死罪が確定だ。人生が詰む。



 調べねば。


 母と、自分のために。






未だに設定で遊んでいたのだと思われているレオナルド。


※イリアスは当時5、6歳ですが、環境の影響で耳年増です。ついでにアイリスさんはいかがわしがったり暴力表現があったりする本はやんわり止めていますが、知識を得る分には褒めて伸ばす人なので、イリアスはふふんと思いながら持ち前の記憶力でなんでも吸収します。

思考の可愛さはあまりございません。


お察しの方もいらっしゃるかもしれませんが、イリアスの名前はかの英雄譚から取っております。あくまでも作品名であり、主人公の名前は全く違いますので、テストなどで出てきた場合はご注意ください。


以上、とんでもねえ長さの後書きでございました。


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